ROTTENGRAFFTY、怒涛のツアーは「幸福感に救われた」 25年間の熱と決意を詰め込んだ『わびさび』ロングインタビュー

ROTTENGRAFFTYが、バンドの新たな境地を示すアルバム『わびさび』を完成させた。全国42都市を巡った25周年ツアーを経て、ライブで培った熱量をパッケージした本作は、新曲を中心にした『わび』、豪華フィーチャリング陣と共に過去曲を再構築した『さび』という、バンドの歴史と革新が交差する意欲作だ。インタビューでは、N∀OKIとNOBUYAへ怒涛のツアーを終えた心境やアルバム誕生の背景や制作のこだわり、新体制での挑戦について深掘りしていく。(編集部)
ROTTENGRAFFTYが“京都パルスプラザ”でライブをやる意義

――まずは結成25周年、おめでとうございます!
N∀OKI:ね、ほんまに奇跡としか言いようがない。僕らもまさか25年やるとも思っていなかったし、ようここまで続けられたなって。
――その中でも、2024年は全国42都市をまわるアニバーサリーツアー『ROTTENGRAFFTY 25th Anniversary "Blown in the Reborn Tour"』を開催されて、お忙しかったと思います。どんな1年でしたか?
N∀OKI:音楽人生の中で、一番ライブをした年でしたね。3日に1回はライブをしていたので。MASAHIKO(Gt)がメンバーになったこともあって、結成当初のようなフレッシュなところもあったし。あっちゅう間で楽しかったです。

――そもそも、なぜ怒濤の勢いでライブをやることになったんでしょうか。
NOBUYA:KAZUOMI(Gt/Prog)が現場を離れることになり、まずはサポートギターとしてMASAHIKOが入ったんですけど。MASAHIKOがメンバーになった新しい形のROTTENGRAFFTYを、SNSとかの情報だけではなく全国の人に実際に見せていく必要があると思ったので、ライブの本数を増やしました。
――N∀OKIさんは「楽しかった」とおっしゃっていましたが、NOBUYAさんはいかがでしたか?
NOBUYA:いやー、めちゃくちゃしんどかったです、俺は(苦笑)。打ち上げすら行っていなかったので。今年50歳になるし、過去の曲とか、キーもだいぶ無理して歌っていたので。
――そうは聴こえませんでしたよ。
NOBUYA:しんどかったんですけど、新しいROTTENGRAFFTYを観に来てくれる人が全国各地に想像以上にいたので、その幸福感に救われたところはありました。各地のお客さんも含めて、ライブハウスの方々、イベンターやスタッフ、周りに支えられた感じがします。

――N∀OKIさんは、体力的な面も含めて乗り切れた秘訣ってあるんですか?
N∀OKI:秘訣というか……目の前にライブがあるし、“やるしかない”っていう感じがあって。手ぇ抜いたらバレてまうし。で、思いっきり振りきったあとは充実感もあるし、それを積み重ねていったっていう。昔、世話になった小さいライブハウスとか、懐かしい場所にも行きましたしね。そういうライブハウスの方々に喜んでいただいたのも、力になったと思います。
――映像作品『ROTTENGRAFFTY 25th Anniversary 響都グラフティー』に付属されるドキュメンタリーを観ても感じましたが、本当に一カ所一カ所、山を越えるように全力でライブをされていて。最後にたどり着いたのが地元・京都のパルスプラザでのロットン史上最大規模のワンマン。その一番大きな山とも言えるステージから見た光景はいかがでしたか?
N∀OKI:完売ではなかったんですよ。それがすべてとは思っていないけど。でも、お客さんから「お前らが好っきやねん!」「これを見逃したらあかん」っていう熱がひしひしと……ほんまにROTTENGRAFFTYが好きな気持ちだけで来てくれた人たちだと思えた。終始盛り上がっているし、終始ダイブしているし、終始歌ってるし、終始嬉しそうやし。そこを目指してツアーもやっていたので、幸せを噛みしめられた1日でした。今でも鮮明に覚えていますし、「ありがとう」の気持ちが大きいですね。
NOBUYA:半ばハッタリでやったところもあるんです。日本武道館よりもキャパ大きいし。実はいろんな人に止められたんですよ。たとえば武道館なら、若い人も、おじいちゃんおばあちゃんも知ってるじゃないですか。でも、京都パルスプラザって、京都に住んでいる人でさえあんまり知らない場所で。「そういうところでやる意味あるんか?」って。
――でもロットンにとっては、毎年冬に主催しているフェス『響都超特急(旧・ポルノ超特急)』の会場なので、思い入れも深い。
NOBUYA:そうなんです。ただ、ぶっちゃけ武道館もそうですけど、1DAYだけやと赤字やないですか。それでもやる意義があるから、みんな武道館でライブをするんだと思うんですけど。っていうところも含めてめちゃくちゃ止められたんですけど、僕的には前の事務所の社長の松原(裕)って奴との約束だったので。お金じゃないところで戦ってきたし。そういう気持ちに共感して来てくれた人も多かったんで、SEが鳴って出ていった瞬間に、やってよかったなって。その後の演奏とか関係なく、出ていった瞬間が、一番感動しましたね。

現体制ならではのDISC1『わび』
――そういう熱さも含めて、究極のロットンが『響都グラフティー』で輝いていたと思います。そして早くも3月19日には2枚組のアルバムが出るという。このスケジュール感にも驚かされたんですが、リリースはいつ頃から決まっていたんですか?
N∀OKI:2024年には決まっていましたね。コロナ禍に書いていた曲も入っているんです。デモを録ったら逐一NOBUYAにも送って、「次こうしようか」ってプランも話してきたし。ただ、そうやってアルバムを作ろうとしていたんですけど、信頼している方に「普通にやったらおもろない」みたいなアドバイスをいただいて、大方向転換で2枚組になり、そのうちの1枚がフィーチャリングボーカル入りのアルバムになったんですよね。

――方向転換はバタバタだったと思いますけど、確かにフィーチャリングボーカルを迎えたDISC2『さび』は、MASAHIKOさんが入ってからの新体制で、過去の曲を仲間たちとアップデートしたというところに物語も感じます。結果的にいい方向性でしたよね。
N∀OKI:そうですね、今までなかった感じにも仕上がっているし。僕らって、アルバム単位よりミニアルバム単位のほうがいいんですよね。
――過去にミニアルバムをたくさんリリースしていますもんね。
N∀OKI:はい。僕ら自体が濃いんで。だから、今回も届きやすい形になったと思います。
――DISC1『わび』は新曲が中心ですが、N∀OKIさんがおっしゃったように、前作『HELLO』(2022年10月)以降、数年間にわたって書いたものが収録されている感じでしょうか。
N∀OKI:そうですね。ただ、新たに書き下ろしたものもありますし、『響都超特急2023』のあと、MASAHIKOが正式メンバーになったタイミングで“何かを残したい”ってなって、年末にMASAHIKO宅に行って1泊2日で作った「Activism」があったりとか。且つ、NOBUYAの作詞曲(「夢幻獄」)もあって。
――『わび』も、今の体制ならではの全7曲になっていると思います。では、1曲ずつ触れていきたいのですが、まず「六-Attack-奏」はSE的なインストですね。
N∀OKI:1曲目に長すぎるんが入るのがちょっとなあ、ってなったので28秒ぐらいにして。いろいろ仕込んだ怪しい感じから、アルバム始まるよっていう。こういうの、ありそうでなかったので。
――この雰囲気で雅やかにいくのかと思いきや、2曲目の「暁アイデンティティ(New Mix)」で早くも爆発するという。
N∀OKI:名古屋のフェスに出たときに、待ち時間がたくさんあったんですよ。そうしたらNOBUYAに「めっちゃ短い曲作ってくれないかな」って言われたんです。頭の中にそういう曲のイメージがあったので、会場でMASAHIKOにギターを借りて、HIROSHI(Dr)に「手で叩いてくれ」って頼んで、メモみたいに録音したんです。その2日後にはポンポンとデモを仕上げてNOBUYAに送ったんですよね。「お前が欲しいのこれやろ」って。そうしたら、「これこれ、バッチリ!」って言ってもらえて。以心伝心でしたね。
――まさに長く続けているバンドならではの以心伝心とスピード感ですね。NOBUYAさんが、そういう楽曲をリクエストした理由は?
NOBUYA:ライブのセットリストを作っている時に、1分半、2分弱とか余ったりすることがあるんですよ。だから、1分ジャストの曲があったらいいなあって思っていて。想定していなかったけど、時間が余った時にもできるじゃないですか。聴いたら、まさに曲の感じも思ってたんとドンピシャだったんですよね。N∀OKI最高! って感じでした。
N∀OKI:(笑)。

――長くやっている中でメンバーをリスペクトしている様子も最高です(笑)。しかも、短い中にヘヴィなところとポップなところと、且つオーディエンスが参加できるところがあって。まさにライブのキラーチューンに必要なものがギュッと詰まっていますよね。
N∀OKI:懐かしい感じ、ザ・スターリンみたいな曲にしたいイメージもあったんです。で、サビで開けて、最後はウォウウォウやろっていう(笑)。分数を決めてから作っていくのは楽しかったですね。
――今“懐かしい”ってキーワードも出てきましたが、古き良きというか、あの頃のかっこいいパンク、ロックがアップデートされている感じが、今作はこれまで以上にあったんですよね。
N∀OKI:「・・・・・マニュアル07」に関しては意識したかもしれない、合唱できる感じとか。それ以外は……でも、スタイリッシュなメロディもいいですけど、クサいメロディもいいというか。ダサいもんって心の中に残ったりするし。あと、ダサさが時を経たらかっこええやんってなる場合もあるから。それにただの懐古趣味ではなく、新しいものを取り入れて混ぜこぜにしてる人たちって、気付いたらあんまいいひんですよね。ただ、俺らはずっとやってきたことなので。これがロットンのひとつの色ですし。だから、意識しつつ、意識しすぎずっていうバランスでやった感じです。