SXSW 2025 ショーケース『TOKYO CALLING × INSPIRED BY TOKYO』初の同時開催で東京のダイバーシティを発信

『TOKYO CALLING × INSPIRED BY TOKYO』レポ

 アメリカ・テキサス州オースティンの大型複合イベント『SXSW 2025』にて、日本のアーティストによるオフィシャルショーケース『TOKYO CALLING × INSPIRED BY TOKYO showcase supported by MUSIC WAY PROJECT』が開催された。

 日本最大級のサーキットフェス『TOKYO CALLING』と次世代アーティストをフューチャーした『INSPIRED BY TOKYO』は昨年、SXSWで独自のショーケースを開催したが、今年は初の同時開催が実現した。各オーガナイザーの間では昨年の時点で同時開催の構想がすでにあったという。(SXSW 2024プロジェクトメンバー座談会記事)SXSWの運営陣もこの意思に賛同し、昨年より会場の規模を広げて2つのステージを有するライブハウス・Mohawkをブッキング。さらには、SXSWのオープニングパーティー直後という好条件のタイムスロットを用意した。これだけでも、本ショーケースに対する期待値の高さが伺えるが、今年はサポーターも拡大。日本の音楽業界の主要5団体である日本レコード協会、日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、日本音楽出版社協会、コンサートプロモーターズ協会により設立された「一般社団法人カルチャーアンドエンタテインメント産業振興会(CEIPA)」とTOYOTA GROUPによる「MUSIC WAY PROJECT」がスポンサーを務め、プレゼンターにはThe Orchard Japan、FRIENDSHIP.、Spincoasterに加えて、新たにTune Core Japanが参加。The OrchardやTune Coreのようなグローバルな音楽企業がコラボレーションすることで、海外の業界関係者へのブランド認知も強化された。

 今年のパフォーマンスで注目したいのは、海外オーディエンスを意識したステージ構成だ。打首獄門同好会は、昨年惜しくも出演キャンセルとなった悔やむ想いを晴らすかのように一曲目の「筋肉マイフレンド」でドスのきいた重低音を放つと、オーディエンスは拳を上げてヘッドバンギングを始めた。打首獄門同好会の英表記は「GOKUMON」。ベースのjunkoによる「GOKU is from Dragon Ball (Goku), MON is from Pokemon. You can easily remember!(覚えやすいでしょ!)」というユーモア溢れるバンド紹介は、笑いが起こるほどキャッチーなイントロだった。演奏中、ステージには英訳歌詞付きの映像が流れ(歌詞は映像の上部に表示されていたのでフロア後方からもよく見えた)猫好きの気持ちを代弁した楽曲「猫の惑星」では、明らかにこのバンドを知らない若い女子グループがスマホを取り出してステージ映像を撮影しながら大盛り上がり。「布団の中から出たくない」や「はたらきたくない」など、全世界共通の“あるある”や日常生活をコミカルに、そしてゴリゴリのロックサウンドにのせて歌う打首獄門同好会の楽曲は、言葉の壁を超えてオーディエンスの心を掴んでいるのが垣間見られた。

 昨年に続き二度目のSXSW出演となるluvisを目当てに会場へ訪れたというファンを多く見かけた。luvisのステージで印象的だったのは、未発表曲「gimme! (jugem)」のレコーディングをその場で実施したこと。サビのパートでオーディエンスの声をその場でレコーディングし、会場に一体感が生まれた。こうしたエクスクルーシブな体験はファンとの強い結びつきを生み、後日リリースとなる楽曲への期待にも繋がった。

 屋内ステージでは『INSPIRED BY TOKYO』がネオン輝く夜景を思わせる洗練された東京をそれぞれのアーティストが演出した。初の海外ライブだと話す北村蕗は、その緊張感が少し伝わりながらもピアノ弾き語り、アンビエント、エレクトロニックが融合された心地良い音色で会場を包み込み、VivaOlaはオルタナティブなR&Bの魅力が詰まったナンバーでメロウなムードを届け、XAMIYAのドリーミーでエレクトロな楽曲とKAMIYAのドーリー系の衣装は東京の“カワイイ文化”を彷彿とさせた。屋外ステージ『TOKYO CALLING』のトリを務めた東京初期衝動のしーなちゃんはフロアへ豪快にダイブしてパンク精神を見せつけ、ニッポン女子のエネルギーを感じさせるライブを披露。良い意味でジャンルに偏りがない日本の音楽。このショーケースで体現するのは、多様性(ダイバーシティ)なのだ。

 各アーティストの持ち時間は約40分。多くの会場で無数のライブが同時に行われるSXSWでは、全ての人が一組のステージを最後まで観るとは限らない。アーティストはステージに立ったその瞬間から記憶に残るパフォ―マンスをすることが大事だ。

 眉村ちあきはサウンドチェック中、自身のルーツでもあるアメリカのアーティスト・Lady Gagaの「Born This Way」の一節を披露し、その圧倒的な歌唱力を見せつけたことでオーディエンスを引き付けた。続くEnfantsは、アメリカのバンド・Rage Against The Machineの「Killing In The Name」をサウンドチェック中にプレイしてロックファンの注目を集めた。ライブの転換中に会場を離れるオーディエンスは多いが、サウンドチェックの時間を工夫することで「次はここでどんな音楽が聴けるのか」という聴き手の高揚感にも繋がるのだ。

 本ショーケースについて、SXSWの音楽部門の総責任者を務めるジェームズ・マイナー氏(VP of Music Festival at SXSW)はこう話す。“日本の音楽シーンは成長していて、多様性にも富んでいますよね。アメリカのオーディエンスと日本のオーディエンスは異なります。何度もSXSWに出演するアーティストたちは年々その違いを理解して、自信を高めているのが見受けられます。”

 イギリスは『UK HOUSE』、台湾は『Taiwan Beats』など、SXSWで開かれる各国のショーケースが国名を冠する中で本ショーケースが『TOKYO』と名乗る理由とは――。“TOKYO”というワードは海外で、洗練された都市の象徴として響く。世界各国の人がそれぞれの人生の中で出会ってきた日本人の印象、東京を舞台にした映画、さらには2021年の東京オリンピックなどを通じてそのイメージが強まりつつあると、アメリカ在住の筆者も感じる。こうした背景のもと『TOKYO CALLING × INSPIRED BY TOKYO』は、毎年SXSWで開催されることで、日本の音楽を世界に発信する窓口としての役割を果たしている。

・TOKYO CALLING × INSPIRED BY TOKYO showcase HP
https://tokyo-calling.jp/showcase/

・SXSW HP
https://www.sxsw.com/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる