TETORA 上野羽有音×炙りなタウン ゆきなり、カッコいいバンド像の追求 “負けられない相手”としての信頼関係

TETORAと炙りなタウン。盟友としてライブハウスシーンで鎬を削り合う両者が、4月12日よりスプリットツアー『クレイジー&リアル ツアー』を開催し、全国をまわる。3月にはその前哨戦と言っていい女性限定でのツーマンライブが高田馬場CLUB PHASEで開催された。今回はそんな両バンドを代表して、TETORA 上野羽有音(Vo/Gt)、炙りなタウン ゆきなり(Gt/Vo)による対談が実現。絶えず「カッコいい」を第一に追求する同世代の2人の関係性や、出会いのきっかけ、ライブとの向き合い方、スプリットツアーへの意気込みに至るまで、たっぷり語り合ってもらった。(編集部)
互いのホームで対バンした出会いたての頃
――高田馬場CLUB PHASEでのツーマンライブ当日にお時間をいただいています。数時間後にはライブが始まりますね。
上野羽有音(以下、上野):(ファイティングポーズをとりながら)絶対負けねえ!
ゆきなり:(同じくポーズをとりながら)絶対負けねえ!
――確か、お二人は歳が近いんですよね。
上野:そうですね。寅年同士。学年は1つ違うけど、生まれた年は一緒なんです。
――ライブ前ということでバチバチしていますが、普段は仲良しだと聞いていますよ。今も、2人掛けのソファに並んで座ってもらっています。
上野:結婚発表の記者会見みたいでニヤニヤしちゃう(笑)。
ゆきなり:あははは!

――TETORAと炙りなタウンはよく対バンしていますよね。そもそも2組はいつ頃出会ったんでしょうか?
上野、ゆきなり:(目を合わせながら笑顔)
――いつまで2人でニヤニヤしているんですか(笑)。
ゆきなり:いや……さっきちょうど、「今日、何聞かれるんやろ?」という話をしてたんですよ。
上野:「出会った頃の話とか?」って。だから、やっぱり聞かれるんだなと思ってニヤニヤしちゃいました。すみません(笑)。初めて対バンしたのは、ガラガラのブロンズ(心斎橋BRONZE)やったよね?
ゆきなり:そうそう。TETORAのホームのブロンズ。
上野:ゆきなりが19歳、私が20歳の頃だった気がします。
ゆきなり:わしはTETORAの存在や曲をもともと知っていたんですよ。MVを観たり、周りのバンドから話を聞いたりしていて。だから対バンできるのをすごく楽しみにしてたし、女の子同士ということで「絶対負けねえぞ!」という気持ちでその日は挑みました。そのあと実際にライブを観たら「あっ、カッコいいやん……」って。

上野:私はその時、炙りなタウンのことをあんまり知らなかったんですけど、SNSか何かでアー写を見て、「変なバンドやな」「面白い系のバンドなんかな?」と思って。
ゆきなり:炙りなタウンの初めての自主企画が『かかあ天下』というタイトルだったんですけど、その時のノリで、『ちびまる子ちゃん』のお母さんみたいな格好でアー写を撮ったんです。コミックバンドみたいな感じで。
上野:アー写の印象が強すぎて、ライブのこと、ほとんど覚えてない(笑)。
ゆきなり:ちょっとふざけすぎましたね(笑)。だけど、そのあとママツー(岡山CRAZYMAMA 2ndRoom)に来てくれたよね。
上野:TETORAの初めてのツアーで、炙りなタウンのホームのママツーに行きました。それが2回目の対バンでしたね。炙りなタウンは、「カッコいい」が最初にグンっとくるようなライブをするなと思ってます。バンドを褒める時に「演奏が上手い、しかもカッコいい」「かわいい、しかもカッコいい」という言い方をする人がいるけど、炙りなタウンは「カッコいい」という印象が真っ先に入ってくるバンドやと思う。
ゆきなり:ウェーイ! ありがとうございます。

「同じスタンスで活動している、数少ない同性のバンド」(上野)
――そこから対バンの機会が増えていき、お二人の仲も深まっていったと。
上野:そうですね。あと、「渋川」のMVに出させてもらった時の印象が強いかも。あれをきっかけに仲良くなった気がする。
ゆきなり:確かに。
上野:その時はまだ「めっちゃ仲良し」と言えるほどの関係にはなれてなかったんですよ。だけどMVに出ることになって。「ババアになってもらっていいですか?」と言われて(笑)。
――「渋川」には〈あの日私を騙したこじきのばあさんは/今でも元気でやっていますか〉という歌詞があって、MVでは上野さんが“こじきのばあさん”役を務めていました。
ゆきなり:おばあさんの格好をしてもらって、ペンで顔に皺とかをめっちゃ描いて、杖をぶん回してもらって。あの頃はまだ仲良くなる前だったから、ちゃんと敬語使ってた(笑)。
上野:「ババアになってもらっていいですか?」も敬語やもんな(笑)。
ゆきなり:それ以降は対バンはもちろん、2人で遊ぶようになりましたね。観覧車に乗ったり。
上野: 大阪を案内したんですよ。そしたら期間限定で、はんてんを羽織りながら熱燗とおでんを楽しめる観覧車があって。2周しました!
ゆきなり:楽しかったな。
上野:ゆきなりとは、無理せず一緒にいられるんですよ。最近は減ったけど、前は定期的に「悩みがあるんじゃ」って話をしてくれてたよね。
ゆきなり:そう。わしは「どうしよう」と思うことがあったら、はゆねえに連絡したり相談したりすることが多くて。
上野:打ち上げの後半くらいに、私にだけこそっと言ってくれるんです。
――どんな相談をするんですか?
上野:えっ、言える範囲でやろ? 例えば〇〇とか、〇〇とか……。
ゆきなり:それは言ったらアカン(笑)!

上野:あとは、「ライブの“停滞期”に入っちゃって」と相談されたことがあります。いいライブができて「わかった!」と思っても、すぐに停滞期に入っちゃう、みたいな。「みんなと比べて、わしは停滞期が長いんじゃ。どうしたらいいかの?」と言ってました。
ゆきなり:そんな感じでバンドの話もするし、めっちゃ昔ですけど、恋愛の話をしたこともあります。「この人どう思う?」「別れた方がいいかな?」とか。
――結構深いところまで打ち明けているんですね。
ゆきなり:そうですね。「わしは、こういう時にこんなふうになる」「はゆねえだったら、どうやって次に進める?」という感じで相談してました。
上野:ゆきなりの悩みを聞いて、自分なりに答えることによって、私も考えがまとまるというか。「ゆきなりはこう思ってるんや」って知るのと同時に「自分はこう思ってるのかな」って気づくから、いい話し合いができてるのかなと思います(笑)。
ゆきなり:話し合いって(笑)。20代前半の頃だったかな? 「カッコいいおばあちゃんになろうね!」って約束したよね。
上野:うん。お互い「カッコいい」を磨きながらずっとバンドをやってるから、それを続けていきたいよね、という話をしました。
ゆきなり:「カッコいい」を追求してたら、いつの間にかおばあちゃんになってた……というのが理想。そういう意味で「カッコいいおばあちゃんになろう」と約束したんです。
上野: パッと散っちゃうバンドもカッコいいけど、「あっ、気づいたら30周年や」と思えるバンドもカッコいい。おばあちゃんになるまでバンドやれてたら素敵やしな。
ゆきなり:最高やな。

――そういう約束をできるのは、バンドのスタンスや目指しているものがきっと近いんだろうなと、お互いに思えているからだろうし。
ゆきなり:そうですね。炙りなタウンにとってのTETORAは、「絶対負けたくない!」って思わせてくれる相手。お姉ちゃんであり仲間でありライバルとも言えるけど、そういう存在の女の子バンドってなかなかいないんですよ。TETORAは勝ち負けにこだわっているバンドですけど、わしらはいつも「TETORAには絶対負けたくない!」って言いながら対バンしてるし、TETORAもそれに応えてくれる。付き合いが長いからか、「最初からそうだった」「今もずっとそう」という信頼もあるんですよね。ライブハウスでの勝ち負けにこだわってる姿、尊敬してるしカッコいいなと思ってます。
上野:炙りなタウンとライブハウスで勝ち負けにこだわりながら対バンできるのは、すごくドキドキするし楽しいです。TETORAは「同性に好かれる音楽じゃなくて、同性からカッコいいと思われるライブをやりたい」と思っているんですけど、“好かれる”ことと“カッコいいと思われる”ことってちょっと違う気がするんですよ。
――人からどう見られるかを気にして自分を変えるのではなく、自分がいいと思う姿を突き詰めて、人の心を動かすということですよね。
上野:そうですね。きっと炙りなタウンもそういうライブをやりたいと思っているし、実際にそういうライブをやっている。そういう意味で、TETORAと同じスタンスで活動している、数少ない同性のバンドやなっていう感覚はめっちゃありますね。