椎名林檎、孤高の才能ながらもコラボを絶やさない理由 トータス松本、宮本浩次……ピュアな音楽愛から生まれる新しい刺激

 さらに、その1年前には「椎名林檎とトータス松本」名義で「目抜き通り」を発表したことも記憶に新しい。これも“押し押し”型のコラボレーションで、ふたりのネオンのような眩しさが炸裂。また、名のある華やかなアーティストであれ、椎名林檎はバチバチに挑むような姿勢を見せるのではなく、しなやかに向き合っているところが印象的。お互い“個”として独立しながらも、相手へのリスペクトを忘れていないのだと思う。今の時代の女性、いや、ひとりの人としての在り方や、あらゆる枠組みを越えたタッグの組み方としての理想を体現しているように映る。

椎名林檎とトータス松本 - 目抜き通り

 また、椎名林檎は活動初期から、松任谷由実やスピッツ、BUCK-TICKといった、ジャンルを超えたアーティストのトリビュート作品に参加。カバー楽曲も、シンディ・ローパーから美空ひばり、バート・バカラックから安全地帯まで披露してきた。これも、自分自身の揺るぎないものを持ち、その琴線に触れるか否かだけを基準として、あらゆる音楽を愛してきた彼女だからこそできることだろう。さらに、ともさかりえ「カプチーノ」(1999年)、PUFFY「日和姫」(2009年)、SMAP「華麗なる逆襲」(2015年)など、楽曲提供が多いのも、彼女が音楽に愛され、音楽を愛する人に愛されている証明だと思う。そう、愛しているから愛されるのだ――シンプルだけれど、これぞ誰かとの関係性の入り口なのだから。

PUFFY 『日和姫』

 孤高と呼びたくなるほど唯一無二の才能を持ちながらも、(もちろん繊細にセンサーを働かせているだろうけれど)音楽と人に向けて、閉ざすことなくドアを開け放ってきた彼女。だからこそ、その時代に高らかに響く楽曲を生み出せているのだと思う。こういったアーティストとのコラボレーションのみならず、劇伴やタイアップ、プロデュースなどで、様々なプロジェクトや作品に関わり続ける姿勢には、10代の頃にバンドに憧れていた世代感や、もっと言えば“人と一緒にモノ作りをするのが好き”という発想のピュアな着火点が関わっているのかもしれない。ひとつ確かなのは、このスタイルを続けると、枯渇せずに進化できるということ。これからも、椎名林檎のコラボレーションも含めた活動から、目が離せない。

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