東京事変のメンバーが過ごしてきた“再生”までの時間 個々の活動と照らして見える「プロ集団」としての姿

 2020年元旦に8年ぶりの「再生」を表明した東京事変が、4月8日に新作EP『ニュース』を発表した。5人のメンバーそれぞれが作曲した5曲を収録した本作は、ライナーノーツで椎名林檎が「各々が解散から今日までの時間を目一杯生きてきたからこそ、いまこうして再会している5人の関係が密なんだろうなと感じます」と語っているように、それぞれの時間を過ごしてきたメンバーの経験が再び重なり合ったからこその強度を感じさせる。

東京事変『ニュース』

 そもそも東京事変には「実力がありながらも陽の目を見ていなかった才能をフックアップするプロジェクト」という側面があり、つまりはもともと「個」を重視したバンドプロジェクトであった。そして、この感覚はむしろ彼女たちが活動を終了した2012年以降本格的に広まり、かつてのバンド幻想が徐々に崩れ、特に海外においてシンガーソングライターやラッパーの時代へと移って行ったというのは、これまで何度となく語られている通り。ソロアーティストの作品にはフックアップの意味合いを含んだ「フィーチャリング」がつきものでもある。

 バンドに関しては、5人なら5人のメンバーが共通のルーツを持つというよりも、それぞれが異なるルーツやキャラクターを持ちながら、その交配が結果的に面白いものを生むというユニット的な色合いの強いバンドが増え、やはり、東京事変は時代の先を行っていたように感じる。そこで、本稿では東京事変が活動を終了した2012年以降、メンバーそれぞれが過ごしてきた「今日までの時間」振り返ることで、改めて5人の現在地を確認してみたい。

 『ニュース』の1曲目「選ばれざる国民」を作曲した浮雲こと長岡亮介は、「フックアップ」という意味で象徴的な存在だと言えるだろう。大橋トリオや野田洋次郎のソロプロジェクト・illionのサポート、オリジナル・ラブの田島貴男との共演、THE BAWDIESのプロデュースなど、多彩な活動を展開してきたが、やはり大きいのが星野源の作品/ライブへの参加。なお、星野の作品に参加するきっかけとなったのは、亀田誠治プロデュースの「ギャグ」である。

星野源 – ギャグ(Official Video)

 また、自らのバンドであるペトロールズは2015年に結成10周年にして初のフルアルバム『Renaissance』を発表し、近年は積極的なライブ活動も行っていて、昨年には2ndアルバムセカンド『GGKKNRSSSTW』を発表。ジャズやファンクを土台に、音数を絞りつつデジタルと生演奏を組み合わせ、大胆なリズムや展開も盛り込んだフューチャーソウル風の「選ばれざる国民」は、ペトロールズや星野源からのフィードバックも感じさせつつ、やはり東京事変ならではの仕上がりに。「6人目の東京事変」とも言われ、近年はOfficial髭男dismやindigo la Endにも関わっているエンジニア・井上雨迩(うに)の手腕も大きいと言える。

「選ばれざる国民」

 2曲目の「うるうるうるう」を手掛けた伊澤一葉は、自身のバンド・あっぱでの活動のほか、2013年にはthe HIATUSに正式メンバーとして加入し、aiko、大橋トリオ、片平里菜、吉澤嘉代子などの作品/ライブに参加。なか中でもトピックと言えるのが、米津玄師の大ヒット曲「Lemon」への参加で、伊澤のリリカルなピアノが楽曲の魅力をさらに引き立てている。1月に発表した初のソロ作『5に至り咲きました』でも幅広い音楽性を披露し、国立音楽大学作曲科出身のソングライティング能力にさらに磨きをかけていたが、「うるうるうるう」ではブラジル音楽の要素を組み込みつつ、見事なポップソングに仕上げてみせた。

「うるうるうるう」



インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる