lyrical schoolがアイドルシーンに与えた衝撃 男性メンバー含む新体制での活動に寄せられる期待

lyrical school / LAST SCENE (Full Length Music Video)

 そして冒頭にも記した通り、今年2月12日に開催されたワンマンライブにて新メンバー7名のお披露目が行われ、新生リリスクとしての活動がスタートした。DJ兼任メンバー1名を含む男女混成8MC体制という、前代未聞のフォーマットを持つグループが誕生したことになる。また、同ライブでも披露された新体制初の新曲「NEW WORLD」が2月13日に配信リリースされた。

lyrical school / NEW WORLD (Full Length Music Video)

 攻撃的に歪んだシンセリードを軸とするキラキラしたデジタルサウンド、開放的なメロディライン、そしてひたすらポジティブなメッセージが印象的な1曲だ。男女混成グループならではのレンジの広いラップとボーカルがシームレスに絡み合うさまは、まったく新しいリリスクの音像としてフレッシュに響くことだろう。一聴しただけで「これまでとは決定的に違う」と誰もが感じられるサウンドに仕上がっている。

 ただ、ここまで大幅にメンバーが入れ替わり、なおかつ“女性アイドルグループ”というカテゴリからも外れるような大改革がなされたことで、「果たしてそれはリリスクなのか?」という哲学的な命題に頭を悩ませる者が少なからず存在することは想像に難くない。一般的に考えればグループ名を変更するか、まったくの別グループとして新規に始動する形を取っても不思議はないレベルの変革度合いだからだ。彼らを“アイドル”とカテゴライズすべきかどうかで困惑しているファンも多いかもしれない。

 ひとつハッキリと言い切れるのは、「過去のリリスク楽曲が今後もステージで歌われ続けていくと考えていい」ということだ。通常、活動を終えたグループの持ち曲は演奏されずに埋もれていってしまうケースがほとんどで、それは大げさに言えば“業界の損失”にほかならない。しかしリリスクは、「もはや別グループでは?」と思えるほど形を大幅に変えたものの、グループ名すら変えずに活動を続ける道を選んだ。

 2012年のtengal6からlyrical schoolへのグループ名変更は言ってみれば“名前が変わっただけ”であり、グループが持つ意味合いそのものは不変だったわけだが、それに対して今回はグループ名こそ変わっていないものの、前述した通り存在としての意味合いがまったく変わってしまった。本人たちの意思がどうあれ、少なくとも周りから見れば“別カテゴリのグループ”だ。したがって、もし仮にここでグループ名が変わってしまえば、名前も意味合いも違う、名実ともにまったく別の存在ということになる。そうなると、おそらく彼らは過去のリリスク楽曲をパフォーマンスしづらくなってしまうだろう。「なぜその楽曲を歌うのか」という理由が必要になってくるからだ。その意味で、tengal6からの改名時とはまったく意味合いが異なる。

 その点、グループ名が変わらないのであればリリスク楽曲をパフォーマンスすることに特別な理由は必要ない。重要なのは「リリスク楽曲には埋もれさせるには惜しい優れたものがあまりにも多い」ということと、「当面それが埋もれていくことは(おそらく)ない」という事実だ。その意味で、リリスクにとっての歴史的転換点において「同じグループ名を名乗り続ける」ことを決断した彼らの選択は、のちのち大きな意味を持ってくるのではないだろうか。

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