lyrical schoolがアイドルシーンに与えた衝撃 男性メンバー含む新体制での活動に寄せられる期待

lyrical school / そりゃ夏だ! (MV)

 しかしその後、リリースやライブを重ねていくうちに少しずつ様子が変わってくる。経験値を積み上げていくことでメンバーのラップスキルがすくすくと向上していったことはもちろん、2015年に「幼少期からヒップホップを愛聴してきた」というhimeが加わったことも追い風となって、メンバーたち自身のヒップホップへの理解度が高まっていったからだ。

 決定的だったのは2017年、tengal6時代から在籍していたオリジナルメンバーが全員卒業し、残ったminanとhimeに3名の新メンバーを加えた5人組グループとして新たに活動を開始したことだろう。リリスクはこの時期を境にアイドル然とした振付をほぼ排除するようになり、“普通”のラップグループのように自由なパフォーマンススタイルでライブを行うようになっていく。アイドルというフォーマットに頼らずとも十二分にファンを楽しませることができる彼女たちの実力の高さを端的に証明した。

 そして翌2018年、リリスクとしてのひとつの到達点と言っても過言ではない傑作アルバム『WORLD'S END』がリリースされる。

lyrical school「つれてってよ」

 ここで聴ける彼女たちのラップは、もはや”拙さ“とは無縁。それでいて無垢な少女性やかわいらしさはしっかり内包されているという、実に絶妙なバランスで成立している。3連符をはじめとした複雑なリズムもなんなく乗りこなし、それぞれの個性的なフロウとメロディが交差しあう、まったく新しいガールズラップのフォーマットが確立しているさまを見て取ることができる。

 本人たちは一貫して「ヒップホップアイドルグループです」という自称を徹底していたが、この時期前後くらいから一定数のリスナーにとって「リリスクがアイドルであるかどうか」がさほど問題ではなくなってきたのではないだろうか。もちろん「アイドルだからこそ、この音楽をやっている事実が面白い」という見方が大勢を占めていただろうとは思うが、シンプルに「5MCという珍しい編成のガールズラップグループ」として楽しんでいたラップミュージック愛好家もそれなりにいたのではないかと想像している。少なくとも、『WORLD'S END』はそういう聴き方に十分耐える音源になっていた。

 その後もリリスクは着実にキャリアを重ね、『BE KIND REWIND』(2019年)、『Wonderland』(2021年)といった充実作を次々にリリース。ますます表現の幅を広げていき、アイドルシーンとヒップホップシーンを軽やかに行き来する比類なきグループとしての地位を盤石にしていったーーかに思われたが、2022年4月に突如として5人体制での活動に終止符を打つことが発表され、7月にminanを除く全メンバーが卒業。2017年より約5年間続いた5人体制としては、アルバム『L.S.』が最後の作品となった。

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