IVE、NewJeansら全員10代でデビューする例も K-POPアイドルにおける“低年齢化”のメリットと問題点

K-POP“低年齢化”のメリットと問題点

 一方、低年齢でのデビューは、アイドル自身にとっては夢が叶うと同時に若くして労働に就くということでもある。いち青少年として権利のあるはずの教育を受ける時間や、スケジュール管理の厳しさは最も大きな問題のひとつかもしれない。また、韓国の音楽番組では深夜から早朝にかけての収録が常態化しているという問題があり、深夜から翌日午後まで働き続けるのが一般的になっているカムバック期間のスケジュールが、成長期の身体やメンタルに及ぼす影響もあるかもしれない。この点においては、「アイドル業界」や「アイドル文化」というストレスフルな環境そのものの問題もあるだろう。近年では、未成年アイドルと成人ファンの関係という問題も提起されるようになった。どれだけ「若年層向け」を謳ったとしても、現代の韓国でのアイドルファン活動は、より本気で「推す」ためには金銭的に負担がかかるものになっているため、金銭面で支えるのは実際にはアイドルよりも年上の大人のファン、という事態になりつつある。

 また別の問題として、特殊な例を除けば“20歳前後がアイドルデビューにはギリギリの年齢”という社会的な固定観念もできつつある。一度デビューして成功できなかった場合、諦めきれずに何度も再デビューしたりサバイバル番組に出るようになるというのは、デビュー年齢が若くなっているからこそ珍しくなくなっていることで、これに関してはメリットとデメリットの両方があるかもしれない。

 韓国のアイドルが「若者向け」である以上、K-POPの世界的人気とビジネス拡大、そしてアイドル文化が成熟していくにつれてアイドル志望の若者が増えていき、それに伴い近い「才能」があるならより若いメンバーを、というのは自然な流れとも言える。一方で、未成年の権利が侵害されることもあるアイドルや練習生の環境については「好きでなったんだから」「お金を稼いでいるんだから」というような理屈から後回しにされがちでもある。韓国でも2014年に「大衆文化芸術産業発展法」が整備され、芸能人や練習生が未成年である場合を対象に、個人の自由選択権、睡眠権、学習権などが保障されるようになった。しかし処罰規定が設けられておらず、安全権及び人格権に対する保護条項が欠落しているとの指摘もある(※4)。

 2019年に文化体育観光部が発行した「芸能マネジメント産業実態調査および環境改善方案研究」(文化芸術家の中で満19歳未満の青少年/未成年芸能人を対象にアンケート調査を行ったもの)の中で、未成年の所属芸能人との契約において特別に設けられている条項は学習権の保障が56.4%、長期欠席に対する同意が49.2%、撮影時間の制限が49.5%で、食事管理、携帯電話使用禁止などの条項も含まれている(※5)。これらのことから、未成年芸能人の教育権は制度としては保障されているものの、結果的には事務所との協議の結果、未成年本人の「自発的意志」によってそれが放棄されていることもあるだろう。高度なパフォーマンスのトレーニング方法や育成方法が主に注目を集めるK-POP業界だが、それらを支える背景として、このような問題は昔から大きな変化がない現実もあることは忘れてはいけない。

※1:https://news.mt.co.kr/mtview.php?no=2017102921317264809
※2:https://digitalchosun.dizzo.com/site/data/html_dir/2019/12/30/2019123080120.html
※3:https://www.ize.co.kr/news/articleViewAmp.html?idxno=24149
※4、5:https://idology.kr/15706

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