大泉洋、『水曜どうでしょう』やTEAM★NACSで培われた声や歌の魅力 昭和時代のスター歌手を彷彿とさせるムードも

 2023年3月24日より公開される映画『シング・フォー・ミー、ライル』。同作の日本語吹替版で、言葉ではなく歌だけで気持ちを伝える主人公のワニ、ライルの声を演じているのが俳優・大泉洋だ。2月13日には彼が劇中で歌っている曲「Top Of The World」のミュージッククリップが公開され、コメント欄には「大泉さんってこんなにきれいな歌声を出せる人だったんだ」と驚く人から、「大泉さんの声、本当に好き。癒される」と以前からその歌声に親しんでいる人まで、さまざまな感想が寄せられている。

 大泉の歌唱といえば、2022年12月31日放送『第73回NHK紅白歌合戦』も印象的だった。ディズニースペシャルメドレーの企画のなかで、一緒に司会をつとめた橋本環奈と「星に願いを」をデュエット。温かみがあってやさしく、それでいて華やかな歌声は企画内容にぴったり。また、どこか昭和の時代のスター歌手のようなムードを感じさせるのも大泉らしさと言えるだろう。

 大泉が出演したテレビドラマ『東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~』(2006年/フジテレビ系)の演出家・西谷弘は、雑誌『SWITCH Vol.38 No.9』(2020年/SWITCH PUBLISHING)のなかで「声質は高いけど深い」と、演技のときに発せられる声の魅力について口にしている。西谷のコメントはまさにその通りで、大泉の歌声も、ベースとしては高めで軽快なのにトーンは落ち着いていて、なだらかに耳のなかへと溶けこんでくる。だから噛みしめがいがあり、余韻にも残る。

スターダスト☆レビューとのコラボで『ミュージックステーション』出演

 俳優として、誰もが認めるトップスターとなった大泉。しかし「歌手」としての一面も持っており、実は堂々たるオリコンのトップテンアーティストだったのだ。

 大泉は2004年、大泉洋 with STARDUST REVUE名義でコラボレーションシングル『本日のスープ』をリリース。『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)にも出演している。表題曲は、大泉がパーソナリティを担当していた北海道のラジオ番組『R advance RAD'S』(AIR-G' FM北海道)の企画から生まれたもの。リスナーから北海道をテーマにしたキーワードを募集し、それをまとめて歌詞を作ろうとしたところ山のように応募があった。大泉はスターダスト☆レビューの根本要からそれをまとめるようにお願いされ、さらに「どうせなら君も歌いなさい」と歌うことも決定した。

 根本は、書籍『鈴井貴之編集長 大泉洋』(2005年/新潮社)のなかで、「こんな思いを伝えたいって歌がちゃんと伝わってくる。一番大事なのは彼が自分で詞をまとめて、彼なりの歌い方を聴かせてくれるってこと。だからとても安心して聴けるんですよね。芝居にしても歌にしても、彼のスタンスは同じなんだと思います」と、シンガー 大泉洋について評している。

 また大泉は、所属する劇団・TEAM NACSとその関連の活動を通してもたびたび歌ってきた。短編集『FOUR~求め続けた奴等の革命』(2000年)のなかの作・演出作「ナックス・ハリケーン」では、劇中歌「ナックスハリケーン」を作詞作曲。自分を含むTEAM NACSのメンバーがアイドルになったという設定で歌も披露し、2004年にはTEAM★NACS名義でCD『ナックスハリケーン/捻挫した君』を発表。ほかにも、『おにぎりあたためますか』(HTB・テレビ朝日系)のエンディング曲「起きないあいつ」をFAN TAN feat. The Uncoloured名義でシングルリリースしてオリコン週間7位に。『ドラバラ鈴井の巣』(HTB)関連では、主題歌や挿入歌をあつめたアルバム『「ドラバラ鈴井の巣」コンプリートアルバム』(2005年)に歌手として参加している。

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