大泉洋、『水曜どうでしょう』やTEAM★NACSで培われた声や歌の魅力 昭和時代のスター歌手を彷彿とさせるムードも

ホイットニー・ヒューストン、平井堅、演歌まで聴く大泉

 実はブレーク前から歌手経験が非常に豊富な大泉洋。それらが現在の「ヤクルト400w」のCMで一青窈の「ハナミズキ」のカバーや、2014年『新堂本兄弟』(フジテレビ系)出演時のMr.Children「365日」の堂本剛(KinKi Kids)とのデュエット、映画『グッモーエビアン!』(2012年)での歌唱シーンなどへつながっているように思う。

 大泉の歌はなぜ良いのか。その要因のひとつは、いろいろな声を器用に使いわけられるところではないか。声優として出演した映画『千と千尋の神隠し』(2001年)では番台蛙に扮しているが、大泉だと言われなければきっと気づかないほど、元の声との変わりようをみせている。またバラエティ番組『水曜どうでしょう』シリーズ(HTB)では、藤村忠寿チーフディレクターらに対して、妙に貫禄をつけた声色で言い合いなどを繰り広げたり、ぼやいたりして爆笑を誘ってきた。また、料理人の土井善晴、演歌歌手の森進一、『ドラバラ』でも披露していたマイケル・ジャクソン(役名は真池龍)など、ものまねのレパートリーも数多い。そうやって場面、設定、キャラクターに合わせて変幻自在に声を操れる点が、歌にも良い影響を与えているように思える。

 もうひとつは、良い意味で雑多に音楽を聴いているところだろう。大泉自身、書籍『鈴井貴之編集長 大泉洋』のなかで「音楽はほんとに聴かない、恥ずかしいくらい」と明かしているが、一方で渡辺美里の「My Revolution」(1986年)を聴くと兄が東京の大学へ旅立ったころを思い出して切なく感じたり、大沢誉志幸の「そして僕は途方に暮れる」(1984年)を耳にすると小学校を転校した当時の不安な気持ちがよみがえったりすると口述。またエッセイ『大泉エッセイ 僕が綴った16年』(2015年/角川文庫)では、飛行機での移動の際、景色を見ながらオーディオのチャンネルで洋楽を聴くのが好きだと語っている。大学1年生のときに遠距離だった恋人と別れたあとの北海道までの空路、映画『ボディガード』(1992年)の主題歌でおなじみのホイットニー・ヒューストン「I Will Always Love You」を聴きながら泣いたのだという。ほかにも仕事での移動時に平井堅の「KISS OF LIFE」(2001年)、森昌子の「越冬つばめ」(1983年)、北島三郎の「風雪ながれ旅」(1980年)などで気分を浸らせるなど、とにかく聴く曲のジャンルが幅広い。

カラオケで歌うのは郷ひろみの曲

 大泉の音楽鑑賞の特徴は、思い出や自分が盛り上がるシチュエーションを脳内に描き出しているところ。前述したスターダスト☆レビューの根本の「こんな思いを伝えたいって歌がちゃんと伝わってくる」というコメントの根っこには、大泉自身が歌の世界に入り込みやすい性質があるのではないか(『鈴井貴之編集長 大泉洋』より)。画を思い浮かべて気持ちもどんどん乗せて歌うので、聴き手も感情が揺さぶられるのかもしれない。

 ちなみに、カラオケでは郷ひろみのような歌い上げる系が大好きだそうで、「言えないよ」(1994年)をよく歌っていたという(『鈴井貴之編集長 大泉洋』より)。たしかに同曲は、聴いていても自然と感情が高ぶる。いかにも大泉らしいチョイスだ。2022年9月1日放送『SONGS』(NHK総合)でも郷ひろみと共演して、ファンとしての気持ちを伝えていた。

 そのように様々なシチュエーションを思い描きながら音楽と接している点が、大泉の歌声の魅力に結びついているように思える。

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