細野晴臣が語った高橋幸宏の才能と審美眼 追悼特集の6曲にも表れた両者の音楽的な交わり

 もちろんYMOの作品もオンエアされた。細野が選曲したのは、「CAMOUFLAGE/カムフラージュ」。細野自身も「(同曲が収録された『BGM』は)僕たちがいちばん思い入れのあるアルバム。幸宏の最高傑作だと思います」と語ったこの曲は、高橋が作曲、高橋とピーター・バラカンが作詞を手がけたダークかつエッジーな楽曲。耽美の匂いをたたえた歌声、アバンギャルドなサウンドメイクが共存した名曲である。

 最後の2曲は、「ポップセンスの輝きを聴くことができます」(細野)という言葉とともに紹介されたソロ曲「PRESENT」(アルバム『Saravah!』)、そして、「人が星になるという歌を」という言葉とともに、SKETCH SHOWのアルバム『LOOPHOLE』(2003年)から「STELLA」。高橋幸宏のソフィスティケートされた音楽性、詩情と美意識に貫かれたボーカルの佇まいを改めて堪能できる、心のこもったセレクトだった。

 番組中で細野は、「幸宏は世界一スマートなミュージシャンでした」「審美眼というのかな。たぶん僕の才能も、ずっとその厳しい目で見てたんだと思うんですけど。でもやっと、認めてもらえたような気がします」と語った。細野がYMOを構想したとき、最初に声をかけたのは高橋。SKETCH SHOWがはじまったきっかけも、2000年の夏、高橋が細野のラジオ番組で「そろそろなにかやりましょう」と話したことが起点となった(※1)。その関係性は二人にしかわからないことだが、今回の細野のコメントからは、両者が緊張感と親密性のバランスのなかで、数多くの素晴らしい音楽を生み出してきたことが窺えた。

 2月16日には、特別番組『NHK MUSIC SPECIAL 高橋幸宏 創造の軌跡』(NHK総合)の放送も決定。今後も高橋の音楽的功績をテーマにした特集が多くのメディアから発信されることだろう。すべての音楽ファンに“ユキヒロ”の楽曲や演奏、そして、一流の審美眼に裏打ちされた存在そのものを体験してほしいと思う。

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※1:門間雄介著『細野晴臣と彼らの時代』(文藝春秋)より

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