乃木坂46 和田まあや、愛と幸せを手渡し続けた11年間 “アンダーライブという青春”を全力で駆け抜けたラストステージ
和田まあやにとってのアンダーライブとは、最年少メンバーとして乃木坂46に加入してから11年間の成長が凝縮された場所であり、後輩たちへバトンをつなぐための重要な場所だった……と言ってしまえば簡単なことだが、特に彼女はこの1年で実際にそれらすべてのことを証明し、やり遂げたのではないだろうか。東京、大阪で計6公演にわたり開催された『乃木坂46 30thSG アンダーライブ』を観るかぎり、そう思えてならない。
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筆者は今回のアンダーライブのうち東京公演2回、大阪公演1回を観たが、4期生が初参加した昨年10月の『28thSG アンダーライブ』と、今年3月の『29thSG アンダーライブ』が初期の熱量を取り戻した原点回帰の公演だったとしたら、今回の『30thSG アンダーライブ』は直近2回の初期衝動はそのままに、約8年間にわたり展開されたアンダーライブでの経験をギュッと濃縮させた内容を3・4期生たちに伝承していき、しかもそれを伝えるのが数少ない1期生の和田だということーーそんな裏テーマが用意されていたのではないかと感じるほど、「そうそう、これが観たかったんだ!」と言える内容が現メンバーで表現された激アツなものだった。
とにかく、随所に見応えのある演出が用意された『30thSG アンダーライブ』。ここでは和田まあや最後の参加ライブとなる10月5日に大阪・オリックス劇場で開催された最終公演について記す。
まず、オープニング「Under's Love」の紗幕を使った映像演出およびパフォーマンスのクオリティの高さに驚かされる。暗転や紗幕のホワイトアウトなどを多用することで、誰もいなかったステージにメンバーがひとり、またひとりと増えていく構成と、撮り下ろしのメンバー映像と紗幕の向こうでパフォーマンスするメンバーが融合する視覚効果などは、アリーナ会場ではなく2000人規模のホール会場ならではの演出と言えるだろう。
そこから紗幕が外されると、「不等号」「自由の彼方」「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」とアンダーライブらしい情熱的な楽曲が連発される。ここでは「不等号」で阪口珠美、「自由の彼方」で向井葉月がそれぞれセンターを務め、個々の存在感の強さをアピール。センターの彼女たちはもちろんのこと、どのメンバーもダンスにおける緩急の付け方、歌詞や曲調に合わせた表情の作り方などに成長が感じられ、中でもアンダーライブ参加から1年に満たない4期生の急成長ぶりには驚かされるものがあった。
続くブロックは、観客にペンライト消灯を促してからスタート。ここでは限られた照明の中で美しいシルエットを見せる、メンバーのソロダンスをフィーチャーしたダンストラックを経て、松尾美佑をセンターに据えレーザーを用いた演出がレイヴ感を強調する「ポピパッパパー」、プロジェクションマッピングを多用した和田センターの「Against」、佐藤璃果が光の束を掴む視覚演出とともにエレクトロ調にリミックスされたトラックが印象的な「~Do my best~じゃ意味はない」と、序盤とは異なる挑戦的なパフォーマンスが続く。計算し尽くされた照明と映像の演出も、スクリーンを用いることなくギリギリ肉眼で観覧できるキャパシティのホール会場だからこそ実現できたのではないだろうか。
ユニットブロックでも、3・4期生が新たな可能性を感じさせるパフォーマンスを次々に展開していく。1年前の『28thSG アンダーライブ』でも同じ組み合わせでステージに立った向井、佐藤、矢久保美緒の3人は、アコースティックギター(向井)、タンバリン(佐藤)、ハーモニカ(矢久保)の生演奏で「ワタボコリ」を披露。その堂々とした姿からは、「私たちがアンダーライブを作っていくんだ」という強い意志を感じ取ることができた。また、「音が出ないギター」ではセンターの黒見明香が和田&松尾とともに、クールでパワフルな歌とパフォーマンスで観客を魅了。続く「無表情」では、北川悠理&林瑠奈が曲前と曲中にオリジナルラップを導入し、2人の新たな可能性を提示してみせる。そして、「口約束」では阪口、吉田綾乃クリスティーの2人に、大阪公演休演の中村麗乃に代わり向井という3人が優しい歌声を響かせる中、佐藤、松尾、矢久保がダンサーとして華を添える。従来のアンダーライブのフォーマットを踏襲しながらも、和田以外のメンバーがすべて3・4期生、かつ半数が4期生という現アンダーメンバーの魅力がしっかり伝わる内容は、非常に新鮮に映ったことだろう。
ライブ中盤には、今回のアンダーライブのハイライトといえるコーナー「乃木坂46 PLAYBACK FACTORY」を用意。数ある乃木坂46の楽曲から公演ごとに2人のメンバーがお気に入りの楽曲をセレクトし、同曲を選んだメンバーがセンターを担当するというもので、この日は最終日のみ参加となった伊藤理々杏が選出した「低体温のキス」、和田セレクトの「欲望のリインカーネーション」がそれぞれ披露された。誰がどの曲を選ぶかにも注目が集まるところだが、それらをセンターで歌唱する3・4期生の生き生きとした表情や立ち振る舞いは、ファンだった頃の彼女たちの姿と重なるものがあり、感慨深さを覚えながら楽しむことができた。
ここまで、未来へ向けた新たな可能性を散りばめつつ、これまで実践してきた数々の挑戦を総括するような演出を見せてきた『30thSG アンダーライブ』。「私のために 誰かのために」から始まる後半戦では、ストロングスタイルのアンダーライブが提示されていく。林を中心に、向井や吉田、佐藤といったメンバーでじっくり歌を聴かせるこの曲では、林の印象的なフェイクが耳に残ったというファンも多いのではないだろうか(そして、東京公演では優しくも力強い中村のボーカルも同様だった)。続く「生まれたままで」でギアチェンジすると、以降は「口ほどにもないKISS」「錆びたコンパス」と“今の乃木坂46”を象徴するようなアンダー楽曲を連発。MCを排除したノンストップスタイルで、曲を重ねるごとに会場がヒートアップしていくのがダイレクトに伝わる。そのクライマックスとなったのが、和田がセンターを務めた「制服のマネキン」と、最終日のみの披露となった伊藤センターの「日常」だ。特に後者はオリジナルセンターの北野日奈子の卒業後初披露とあり、北野の意志を継ごうと鬼気迫る表情でパフォーマンスに臨んだ伊藤の気概を感じ取ることもできた。