乃木坂46 佐藤楓が座長務めたアンダーライブはターニングポイントに 役割を意識することで生まれた飛躍の瞬間

乃木坂 佐藤楓が座長のアンダーライブレポ

 役割が人を育てる。今回の『乃木坂46 29thSGアンダーライブ』最終公演を観て、頭に思い浮かべたのがこの言葉だった。

 3月24日の『乃木坂46 北野日奈子 卒業コンサート』に続き、25~27日の3日間にわたりぴあアリーナMMで開催された『乃木坂46 29thSGアンダーライブ』は、そのタイトルからもわかるように3月23日発売の乃木坂46 29thシングル『Actually…』のアンダーメンバー16人によって行われた、約半年ぶりのアンダーライブだ。前回の『乃木坂46 28thSG アンダーライブ』は初めて4期生を迎え、立川ステージガーデンという約2500席のホール会場で原点回帰ともいえるパフォーマンスを繰り広げたが、今回は1万人規模のアリーナ会場。しかも、前日には北野日奈子の卒業コンサートというエモーショナルなステージが展開されたあとだけに、一体どんなステージを見せてくれるのかと、実は少し心配していた。

 しかし、そんな心配はまったく無用だった。そこにあったのは1、2期生が作り上げてきたアンダーライブ・イズムを見事な形で受け継いだ、心の距離の近さと熱量の高さがダイレクトに伝わる「これぞアンダーライブ」と断言できるライブだったのだから。

 今回のアンダーライブを牽引するのは、29thシングルのアンダー楽曲「届かなくたって…」でセンターを務める3期生の佐藤楓。ライブのオープニングを飾る「狼に口笛を」から佐藤楓は「皆さん、私たちについてこれますか? アンダーライブ最終日、行くぞ!」など、随所で的確な煽りを入れていく。センターに立ち堂々とパフォーマンスするその姿、表情からは「このメンバーを引っ張っていくんだ!」という強い意志が伝わる。その後も「自惚れビーチ」では弓木奈於がキュートな笑顔を振り撒き、「My rule」では金川紗耶がしなやかなダンスを披露するなど、これがアンダーライブ参加二度目とは思えないほどに4期生がその存在感の強さをアピールし続ける。前回からの半年の間に5期生が加わったこともあり、また多くの先輩メンバーが相次いで卒業していったことを受け、精神的にもより逞しくなったことが窺える。

 MCでも、矢久保美緒が中心となってトークを進行。ところどころたどたどしさは見受けられたが、彼女らしい軽妙な語り口で進むMCにほっこりしたというファンも少なくないはずだ。

 その後、アンダーライブではおなじみの“全員センター企画”の延長線上にある企画“思い出セレクション”に突入。アンダーメンバー16人が思い出の楽曲、思い入れの強い楽曲を選び、それぞれセンターに立って6人前後でパフォーマンスしていくのだが、曲によっては該当楽曲の衣装を着用する演出も用意され、意外なメンバーの意外なセレクトや、「このメンバーならこの曲だよな」と納得の選曲が矢継ぎ早に披露されていく。シングル表題曲、アンダー曲、カップリング曲などが入り混じったセットリストを通し、当時の衣装を身にまとってセンターで歌う3期生、4期生たちにとってこの企画はプレッシャーもあったかもしれないが、同時に大きな自信にもつながったのではないだろうか。そんなチャンスを与えてくれるのも、アンダーライブならではと言える。

 このパートで個人的に印象的だったのが、中村麗乃セレクトの「何度目の青空か?」と林瑠奈セレクトの「君の名は希望」だった。前者では昨年からステージ上での存在感を格段と強めている中村が、オリジナルセンターの生田絵梨花にも引けを取らない歌唱で観る者を魅了。また後者では、Aメロで林がソロで堂々と歌い切っただけでなく、サビではステージ上の6人(林、金川、佐藤楓、松尾美佑、吉田綾乃クリスティー、和田まあや)が美しいハーモニーを響かせていく。ほんの些細なことかもしれないが、こういった点から乃木坂46イズムがしっかり引き継がれていると実感させられ、筆者は胸が熱くなったことを特筆しておく。

 “思い出セレクション”以降は、従来のアンダーライブらしい熱量の高いステージを展開。卒業生が務めたセンターパートを3、4期生中心で披露していく構成ながらも、1期生の和田が「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」でセンターに立つあたりには、初期からのファンにはたまらないものがあったのではないだろうか。また、過去のアンダーライブを彩ってきた名曲たちに混ざって、阪口珠美センターの「口ほどにもないKISS」や山崎怜奈センターの「錆びたコンパス」といった比較的最近の楽曲が、すでにキラーチューンとして機能しているあたりにも、乃木坂46が今もまだ現在進行形で進化し続けていることが窺えた。

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