乃木坂46 和田まあや、愛と幸せを手渡し続けた11年間 “アンダーライブという青春”を全力で駆け抜けたラストステージ

乃木坂46和田まあや、最後のアンダーライブ

 本編ラストナンバーの前には、和田による長尺のMCも用意。彼女は事前に話すことを考えずこのMCに臨んだそうだが、この日語られたのは過去11年間明かされることのなかった事実だった。「大袈裟かもしれないですけど、今を生きているって素晴らしことだなと思っていて」と前置きし始まったその内容は、「生まれてすぐに大病を患い、助かる可能性が低かった」というもので、家族のサポートを受けながら病気と向き合い続け、奇跡的な回復を見せたのだという。20歳まで病院に通い続けていたという事実も驚きだが、それ以上に彼女が活動初期から「ハッピー!」とよく口にしてきたのは、こうしたバックボーンも大きく影響していたのだと改めて気づかされた。そういった苦労を微塵も見せずに、常にポジティブでマイペースな活動を11年も続けてきたこと、いや、乃木坂46というグループに11年も在籍したことに対して感謝の気持ちを伝えたいと思ったのは、きっと筆者だけではなかったはずだ。

 「たくさんつらいこともありましたけど、振り返ってみたらすごく素敵な青春だったなと。13歳から24歳になって、この11年間をたくさん乃木坂46に捧げてきました。(それは)全然間違ってなかったし、みんなを信じて、自分を信じてやってきてよかったなと。こんな景色が見れていることに、自分でもびっくりです」と素直な気持ちを口にする和田。続けて彼女は、「きっとみんなもつらいこととか投げ出したいこともあると思うんですけど、私は逃げ出さず頑張ってきてよかったなと。みんなもきっと『明日お仕事だな』とかつらいことがいっぱいあると思うんですけど、『今日楽しかったな』『わあ、生きてる。幸せ!』って声に出してみたら、きっとその日はいい日になると思うので。明日からみんなハッピーにそれぞれ歩んでくれるといいなと思っています」とファンにメッセージを送り、オープニングで歌唱した「Under's Love」をフルコーラスで披露し、ライブ本編を締めくくった。

 ここまでで十分、アンダーライブらしい熱量が高くてエモーショナルな時間を過ごすことができたが、この日は和田にとって最後のアンダーライブ。アンコールでは卒業セレモニー的な場が用意され、ライブTシャツに着替えたメンバーとともに、オレンジ&黄色のメンバーカラーをあしらったドレスを着た和田がステージに再登場する。そんな特別な装いで披露されたのが、和田が初選抜入りを果たした8thシングル曲「気づいたら片想い」だった。客席が黄色とオレンジのペンライトに染め上げられる中、ステージ上では涙を堪えながらパフォーマンスするメンバーの姿も見受けられる。しっとりとした空気で会場を包み込むと、続いて和田の「最後に残り数分間、最高に楽しみましょう!」を合図に「狼に口笛を」へ突入。どこか悲しげな雰囲気が漂っていた前曲から一変、会場はポジティブな空気で充満されていく。

 さらに、アンダーメンバーにとっては原点の1曲ともいえる「左胸の勇気」では、曲中に和田へのサプライズを用意。吉田が仕切る中、メンバーが黄色いチューリップを和田にプレゼントしながら、思い思いの言葉を告げていく。

 今回のアンダーライブのMCでは、特に林の成長ぶりが印象的だったが、このパートでの吉田の活躍も目を見張るものがあり、「まあちゃん(和田)は今日でライブが終わりになっちゃうけど、また乃木坂のライブを観に来たときに、今ここにいるメンバーが頑張ってるな、まだまだ大丈夫だなと思ってもらえるように、みんなで一生懸命頑張ります」という頼もしい言葉も聞くことができた。これも「自分たちがこれからアンダーライブを、乃木坂46を引っ張っていくんだ」という強い意志の表れなのだろう。

 その一方で、メンバーから和田へ贈る言葉から、いかに和田がメンバー一人ひとりのことをちゃんと見守ってきたかも知ることができた。そうした和田の姿勢やちょっとした一言に救われたと語るメンバーも多く、向井はそんな和田に対して「私はまあちゃんがいなかったら、もうここにいないかもしれないっていうぐらい、たくさん助けられました。たぶん、今ここにいるほかのメンバーにも、そういう子はたくさんいると思います」と感謝を伝える。そして、「私たち11人は、まあちゃんを送り出すことができる選ばれたメンバーだと思うと、すごく誇りに思います」と涙ながらに語ると、和田も「葉月はリハーサルを抜け出しちゃうぐらい、すごくつらかったんだよね。こんな小さな体にいろんなことを溜め込んで、ひとりで泣いているときもあったりして。でも、この(アンダーライブの)期間をすごく楽しんでくれていて、率先してみんなを引っ張ってくれている葉月を見て、素敵なグループになっていくんだろうなと思いました」とエールを送り、最後は「こうして応援してくれる人がいるって人生、私はこんな幸せなことはないなと思います。こんなにもたくさんの人に支えられて、これから先怖いものはないなと思うぐらい、出会えたことがすごく幸せです。私を見つけてくれてありがとうございます」と観客に告げた。

 正真正銘のラストナンバーに選ばれたのは、乃木坂46のライブの締めくくりには欠かせない「乃木坂の詩」。エンディングでは観客が「Thank you♡まあや」と記されたシートを掲げるサプライズもあり、和田は「幸せすぎてどうしよう。嬉しすぎて、なんて言っていいかわからないです」と号泣。その後も鳴り止まない拍手に応え、ダブルアンコールで「他人のそら似」を披露するなどして、2時間半におよぶ「和田まあや、最後のアンダーライブ」は終了した。

 和田の人柄の良さと周りからの愛されぶりが随所から伝わる、愛に満ちた今回のアンダーライブ。そのポジティブなメッセージを受け取った後輩たちが、アンダーライブをここから先、どのように前進させていくのかも気になるところ。東京公演初日のMCでは、和田が「私は前回のアンダーライブで『アンダーライブで東京ドームに立てるんじゃないか』と言ったけど、私がいる間には実現できなかった。でも、後輩たちがその夢を叶えてくれるはず」と告げる一幕もあったが、その思いを抱えて3・4期生たちは進化したパフォーマンスを見せてくれるはずだ。『30thSG アンダーライブ』はそう確信させるに十分な内容だったのだから。

■セットリスト
乃木坂46『30thSG アンダーライブ』
2022年10月5日(水)大阪・オリックス劇場
00. Overture
01. Under's Love
02. 不等号
03. 自由の彼方
04. あの日 僕は咄嗟に嘘をついた
05. ポピパッパパー
06. Against
07. ~Do my best~じゃ意味はない
08. ワタボコリ
09. 音が出ないギター
10. 無表情(RAP Ver.)
11. 口約束
12. 低体温のキス
13. 欲望のリインカーネーション
14. 私のために 誰かのために
15. 生まれたままで
16. 口ほどにもないKISS
17. 錆びたコンパス
18. Wilderness world
19. ありがちな恋愛
20. 世界で一番 孤独なLover
21. 制服のマネキン
22. 日常
23. Under's Love
<アンコール>
24. 気づいたら片想い
25. 狼に口笛を
26. 左胸の勇気
27. 乃木坂の詩
<ダブルアンコール>
28. 他人のそら似

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