乃木坂46 寺田蘭世、清々しい笑顔で迎えたラスト公演 “原点回帰”的なアンダーライブがグループにもたらす意味

乃木坂46寺田蘭世、笑顔で迎えたラスト

 『乃木坂46 28thSG アンダーライブ』が10月26〜28日の3日間、立川ステージガーデンにて開催された。2014年よりスタートした乃木坂46のアンダーライブ、今回は9月リリースの28thシングル『君に叱られた』収録のアンダー楽曲「マシンガンレイン」歌唱メンバーのうち、学業のため休演の黒見明香を除く17名が参加。4期生が初めて加わったアンダーライブという事実も大きいが、なによりこの3公演が2期生・寺田蘭世にとって乃木坂46でのラストライブというトピックも用意され、ファンにとって注目の3日間となった。本稿では最終日の28日公演について記す。

 近年のアンダーライブはアリーナ規模で開催されることも少なくないが、今回の立川ステージガーデンは約2500席のホール会場であり、客席からステージまでの距離の近さも初期のアンダーライブを彷彿とさせるものがある。結成10周年を迎え、かつ次世代を担う3期生、4期生がメンバーの大半を占める現在の乃木坂46において、それはまるで原点回帰のようにも映った。実際、同じことは会場の規模感のみならず、ステージ演出やメンバーがライブに臨む姿勢からもダイレクトに伝わり、アンダーライブが真の意味で新章に突入したことが窺える。

 吉田綾乃クリスティーによる影アナを経て、会場内に「OVERTURE」が大音量で流れ始める。客席から見えるステージは比較的シンプルな作りで、メンバーの表情を映し出す大型LEDモニターなどは見当たらない。このあたりも初期のアンダーライブを彷彿とさせるものがある。「OVERTURE」終盤にステージ側から強い光量の照明が当てられ、メンバーのシルエットが浮かび上がると「マシンガンレイン」からライブはスタート。センターの寺田を中心に、赤基調の衣装を着たメンバーはしなやかかつ一体感の強いパフォーマンスで観る者を魅了していく。続く「滑走路」でもシンプルにパフォーマンスを見せていく形で押し通し、ステージ上で歌い踊るメンバーこそすべてと言わんばかりの構成は、まさに初期のスタイルに立ち返ったかのような形だと言えるものだった。

 寺田の呼びかけで会場中がハンドクラップに包まれると、そのままダンサブルな「欲望のリインカーネーション」へと突入し、妖艶なダンスでオーディエンスを惹きつける。また、「ここにいる理由」では弓木奈於、「13日の金曜日」では吉田と、1期生が中心だった頃の楽曲を3期生や4期生がセンターを務めて歴史を継承していく。そんな中、今回唯一の1期生である和田まあやは「傾斜する」で中心に立ち、堂々としたパフォーマンスでグループを牽引する者としての役割を全うした。

 最初のMCは、向井葉月を中心に進行。この日が最後のステージとなる寺田は「千秋楽きちゃったなという感じがして。今は寂しいというより楽しい気持ちでいっぱいです。本当に悔いがないからか、すごく清々しい気持ちで楽しんでいます」と笑顔で伝え、向井のMCについては「今までのMCで一番上手」と太鼓判を押す場面もあった。また、寺田との思い出を語る場面では阪口珠美が「初めて先輩と連絡先を交換したのが蘭世さん。私がちょっとしたミスをすると、それを長くネタにされました(笑)」と口にして、会場の笑いを誘った。一方、伊藤理々杏や松尾美佑は初めて先輩から何かをプレゼントされたのが寺田からで、お下がりの洋服を貰ったことが本当にうれしかったと明かした。

 以降はユニット曲を中心としたブロックへと移る。ここでは3期生はもちろんのこと、アンダーライブ初参加の4期生による活躍が目立つことに。「意外BREAK」では寺田を中心にしながらも北川悠理、佐藤楓、吉田が、「Another Ghost」では和田に加え金川紗耶、阪口、松尾といった3、4期生が気迫に満ちたダンスを見せていく。中でも4期生の姿からは先輩たちに追いつこうとするがむしゃらさが伝わり、その姿は初期アンダーライブでの1、2期生と重なるものがあった。一方で、3期生はすでにアンダーライブになくてはならないグループの軸になりつつあることも伝わり、1、2期生に負けずと劣らない安定感を提示した。

 このユニットブロックで特に印象に残ったのが、「海流の島よ」と「遠回りの愛情」だろうか。前者では向井のギター弾き語りに佐藤璃果と矢久保美緒が加わり初々しい歌声を響かせ、後者では伊藤、柴田柚菜、中村麗乃、林瑠奈、弓木が力強くも切ないボーカルを会場中に充満させる。3、4期生はパフォーマンスで魅せるだけではなく、歌の面でも存在感を提示し始めている点において“乃木坂46イズム”や“アンダーライブイズム”をしっかり継承していることが伝わった。

 クールな歌とダンスを軸にした「Another Ghost」、タップダンスやボディストンプをフィーチャーしたパフォーマンスからの流れで情熱的な「その女」を披露したあとは、柴田をセンターに据えた「涙がまだ悲しみだった頃」、和田や寺田、山崎怜奈といった1、2期生による「Rewindあの日」、3期生による「のような存在」、佐藤璃果を中心に4期生のみで披露された「不等号」など、今回ならではの組み合わせも楽しむことができた。単なるメンバーシャッフルだけではなく、期別でのユニットを組むことができるようになったのも、結成10周年を迎えた今の乃木坂46ならではと言える。

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