キズナアイ歌唱特化型AIは一大旋風を巻き起こすか? #kznが担う、VTuberとVOCALOIDをつなぐ役割
新たなエンターテインメントのひとつとして広まるYouTuber。その勢いは三次元に留まらず、二次元アバターを自身のアイコンとして活動を行うバーチャルYouTuber=VTuberの活躍も拡大し続けている。そんなバーチャルYouTuberの草分けとも呼べるのが、現在は無期限スリープ≒活動休止中ともなっているキズナアイの存在だ。2016年に、「世界中の人々と繋がりたい」という目標を持って登場した彼女。多彩なコンテンツを配信しており、その活動はVTuberという存在の認知拡大と共に、非常に多岐に渡っていた。
そんなマルチな活躍の中でも、彼女自身が力を入れていた分野のひとつに音楽がある。様々な楽曲のカバー動画や歌唱配信のみならず、多数のオリジナル楽曲もリリースしており、DÉ DÉ MOUSEや中田ヤスタカ、花譜などの幅広いアーティストとのコラボと、その経歴も華やかだ。稀有なアーティストとしての才能も併せ持ったキズナアイ。活動休止期間の中で彼女に代わり、キズナアイの「歌唱特化型AI」として生まれた存在が、音声合成ソフト・CeVIO AI #kznだ。
現在のネット発カルチャーシーンにおいて、VOCALOIDとVTuberの親和性の高さはいわずもがな。顔を隠して活動する匿名性という共通点や、特にVTuberにおいては新旧問わずVOCALOID楽曲の歌唱動画投稿が欠かせないコンテンツのひとつともなっている。VTuber自身、あるいは彼らのファンにボカロシーンに触れてきた世代が多いことも、この親和性には大いに影響を及ぼしているのだろう。バーチャルな文化に詳しくない人々の中には、この二つをほぼ同一ジャンルとして認知している人もいるだろう。“ネットカルチャー”という括りで一緒に語られることも多々あり、そういった意味ではネット発の文化が広がり始めている中で、VTuberとVOCALOIDという二つのジャンルは混然一体とし始めている部分も否めない。そんな二つの世界がぼやけ始めた境界線の狭間で生まれた#kznは、まさしく両ジャンルの「相の子」であると同時に、活動休止中のキズナアイとファンを繋ぐのみならず、二つのネットカルチャーシーンを繋ぐハブ的役割を担う存在としても、今後認知を広めていくのではないだろうか。
今回の歌唱特化型AI・#kznの基盤でもある音声合成ソフト、CeVIO AI。従来のVOCALOIDを始めとした音声合成ソフトに比べ、操作性も歌唱性能も格段に飛躍を遂げた本ソフトの人気や実力は、すでに「音楽的同位体」シリーズの可不(KAFU)によって強く実感しているリスナーも多いだろう。例に漏れず#kznでもその性能の高さは遺憾なく発揮されており、先日公開された無調声版デモソング「Kizuna AI to AI」でも彼女の魅力を十分に窺い知ることができる。キズナアイの歌声だけが、あたかも一足先に私たちのもとへ戻ってきてくれたかのような、感傷的な感情すら抱かせてしまうような#kznの声に、喜びや感動の声が楽曲公開と共に散見された。今回#kznのデモソングとして起用された楽曲は、sasakure.UKが「キズナアイ本人の声をサンプリングして制作した楽曲」でもある。キズナアイへの純粋な愛から生まれた楽曲が彼女の新たな活動拡大の一端を担うことを思うと、それもまた非常に感慨深い現象だろう。