乃木坂46の成熟が“夏曲”を変えた? 30thシングルが告げる新たなサマーアンセムの誕生

 また、「好きというのはロックだぜ!」にはこれまでの夏曲とは一線を画す特徴がある。それは、夏を想起させる単語が一つも歌詞に使われていないことだ。例えば「ガールズルール」であれば〈海岸線を バスは進む 空は高気圧〉という歌い出しから、全員が同じ夏の情景をイメージするだろう。しかし、「好きというのはロックだぜ!」では〈青春〉や〈キラキラ〉といった言葉は出てくるものの、あくまで抽象的なイメージに留まっている。そして一番は全くロックサウンドではなく、歌詞にも〈ロック〉という言葉は登場しないのにも関わらずのこのタイトルであること。こうした相互関係はいかにも秋元康的な構成と言えるが、楽曲が持つサウンドスケープと夏期(賀喜)休暇のプランを立てるMVの映像も相まって、理屈抜きで夏曲と呼ぶしかないというのが「好きというのはロックだぜ!」のユニークかつ制作側の狙いが透けて見える部分だ。

 さらに30thシングルに収録される5期生曲「バンドエイド剥がすような別れ方」もまた夏曲。表題と同じく、すでにツアーや5期生が単独で出演した『TOKYO IDOL FESTIVAL 2022』のステージでも披露されている。前作「絶望の一秒前」からのパフォーマンスの成長やセンターの菅原咲月を筆頭としたメンバーの表情の豊かさ、井上和と川﨑桜、五百城茉央と冨里奈央のようなシンメトリーのポジション関係……と見どころは多くあるが、疾走感と夏の終わりを感じさせる切ない世界観とメロディラインは、今後5期生にとっても、ファンにとっても愛される楽曲に成長していく予感がする。

乃木坂46『バンドエイド剥がすような別れ方』

 30thシングルのリリース日、8月31日は乃木坂46の聖地・明治神宮野球場でフィナーレを迎える『真夏の全国ツアー2022』のツアーファイナルでもある。齋藤飛鳥にとっての「裸足でSummer」がそうであったように、賀喜と「好きというのはロックだぜ!」も、この夏を越えてグループをさらなる地平へと牽引して行ってくれるはずだ。

※1:乃木坂46 公式Twitterより(https://twitter.com/nogizaka46/status/1549227552082137088)

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