DISH//が過去曲を改めて4人の演奏で届ける“再青”プロジェクト 表現力の進化も感じるアルバム『再』を聴いて

DISH//『再』を聴いて

「僕たちは10年間失敗しまくってきました。でも振り返ってみたらそれは失敗じゃなくて、成功の連続だった。失敗なんて存在しない。俺たちが証明だ!」

 ここに引用したのは昨年12月に行われた『DISH// 10th Anniversary Live』での北村匠海(Vo/Gt)の発言で、彼らの中にある“過去があるから今がある”という心を具現化したのが結成10周年を記念してローンチした“再青”プロジェクトだ。

 過去にリリースした曲を今の4人の演奏でリテイク。今年1月から月2曲ずつリテイク曲を配信してきたが、配信済みの8曲に2曲を追加し、『再』というアルバムとしてリリースした。例えば、1曲目の「皿に走れ!!!! (in 2022)」は、2015年リリースの1stアルバム『MAIN DISH』収録曲をリテイクしたもの。オリジナルよりキーが半音高く、音の響きが希望を感じさせるオープニングで、疾走感溢れるバンドの演奏が痛快。〈We don’t stop!!〉という力強い宣言からアルバムが始まるのも頼もしく感じられた。

 ところで、DISH//は今でこそ北村、矢部昌暉(Cho/Gt)、橘柊生(DJ/Key)、泉大智(Dr)の4人組バンドとして知られているが、デビュー当初は楽器を持ちながら歌って踊るスタイルがメインだったし、初期曲はこの4人が演奏しているわけではない。だからこそ今改めて自分達の演奏で届けようというのが“再青”プロジェクトであり、リリース当時はメンバー全員が演奏できなかったメジャーデビュー曲「I Can Hear (in 2022)」が4人の手で鳴らされているのが感動的だ。オリジナル版で印象的だった電子音を抑え、バンドの肉体性で勝負するアレンジに生まれた変わった「I Can Hear (in 2022)」は、ボーカル&鍵盤の繊細なタッチや音色で憂いを表現するAメロと、ギター&ドラムのパワフルなプレイ(終盤のギターの畳み掛けが最高)が光るBメロ~サビとのコントラストが非常に鮮やかだ。バンドを続けるなかで得た技術や経験が表現力に直結しているように感じられる。

 演奏面に限らず、作詞作曲も含めクリエイションにより深く関わるようになるなど、バンドとして成長期を迎えている今のDISH//が演奏すれば、2017年初出の「猫 (in 2022)」、2018年初出の「勝手にMY SOUL (in 2022)」といった比較的最近の曲からもオリジナルとの違いはしっかり感じられる。DISH//10年の歩みが伝わってくるため、ファンにとってはグッとくるポイントの多いアルバムだが、一方、ライブ定番曲や隠れた名曲が網羅されているため、ファン以外の人が最初に手に取るDISH//のアルバムとしてもおすすめの作品だということも特筆しておきたい。

 例えば「東京VIBRATION (in 2022)」は結成初期から演奏されているライブ定番曲ながら、アルバムに収録されるのはこれが初のため必聴だ。同じくライブで育った「愛の導火線 (in 2022)」は、2016年リリースの2ndアルバム『召し上がれのガトリング』からのリテイク。全楽器一斉にレコーディングしたとのことで(※1)ライブさながらの熱量と自由度を感じさせるテイクになっているし、バンドの演奏に高まったのか、北村はボーカルの語尾を自由に揺らしたりアウトロで力強いフェイクを披露したりしていて、バンド内部の相互作用のようなものも垣間見える。ロックバンド・DISH//の姿が最もダイレクトに反映された曲と言って差し支えないだろう。

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