DISH//、コニファーフォレストワンマンで伝えた“一人じゃない”というメッセージ 新曲「沈丁花」も披露
この日つけていた右手小指の指輪について、北村匠海(Vo/Gt)は「大智(泉大智/Dr)からもらったこの指輪をつけた日は成功するというジンクスが自分の中にある」と言っていたが、DISH//の新たなジンクスに“コニファーフォレストでのDISH//はいいライブをする”というのが仲間入りしそうだ。
10月17日に開催された『DISH// SUMMER AMUSEMENT ’21 -森羅万象-』は、DISH//にとって2年ぶり2回目の富士急ハイランド・コニファーフォレストでのワンマンだった。1回目の開催は2019年8月。同公演は、ライブの内容と“開演と同時に止んだ雨が終盤でまた降り始める”という自然によるドラマティックな演出が相まって、伝説の夜として語り継がれるものになった。この環境によって引き出される何かについて、北村は今年のライブで「僕らがこうやって集まって、大自然の中で音楽をやって、一つになって……ライブってやっぱり特別なんですよ」と言い表していた。ライブによって得られる感覚がこの会場ではより強まるイメージだろうか。
そんな手応えがあったからか、この会場でのライブは2020年にも予定していたが、新型コロナウイルスによる感染症の拡大により、無観客配信ライブに変更に。また、2021年は当初8月開催予定だったが、一度延期となった。つまり、メンバーにとっても観客にとっても、そして会場に来られなかったファンにとっても待望のライブだったということ。8月開催を想定して選ばれた夏の曲(「イエ~ィ!!☆夏休み」「I'm FISH//」「Seagull」)もあえてそのまま演奏したのはメンバーの意向らしく、“叶わなかった願いを回収しにいく”という意味合いも込められていたことだろう。
言うなれば、長い夜が明けたことを喜び合うような日だった。想いの強さは演奏に表れていて、開演早々バンドの力強さを感じる。1曲目の「星をつかむ者達へ」はヒップホップナンバーで、打ち込みによる原曲に対して、ライブでは生演奏で届けられた。4人のマイクリレーだけではなく、間奏なども聴き応え抜群。バンドが放つダイナミズムに惹きつけられる。この2年間でDISH//に何があったか。「猫」のヒットももちろん欠かせないトピックだが、楽曲制作において、バンドとしてやりたいこと、自分たちの作りたいものをしっかり形にできるようになった――というのが最も大きな変化ではないだろうか。今、DISH//の音楽には4人の血がしっかりと通っている。彼らがインタビューなどでしばしば語っているその実感は、バンドのグルーヴにも反映されている。
そんなバンドサウンドに軸足を置きつつ、ロックンロールサイドを印象づけた冒頭ブロック、最後の夏を楽しむようにはっちゃけた夏曲ブロック、音数を減らしたアレンジで楽曲本来の魅力を際立たせたバラードブロック……と幅広く展開。“AMUSEMENT”と名に付くライブタイトルにふさわしく、バラエティ豊かな演奏で私たちを楽しませてくれた。いいライブができている実感がメンバーにもあるらしく、橘柊生(DJ/Key)は「今日はとても楽しいし、とても気持ちいいね」と心境を語る。そしてバンドのテンションが高いと、その演奏に興奮させられる形で観客のテンションも上がっていくもの。矢部昌暉(Cho/Gt)の「拍手どれだけ大きくできるかやってみようよ」という呼びかけに応えた観客の拍手は相当大きく、矢部が思わず笑ってしまうほどだった。
「This Wonderful World」で後半戦が開幕してからもバンドの勢いは止まらない。北村は時に膝をつきながら歌っていて、後のMCによると「倒れる寸前までいった」そうだ。ようやく実現したライブに懸ける想いの強さ。ステージに全部置いていこうという気概。それらがこの日を特別なものにさせているのは分かる。しかし、そこまで振り絞れるのはどうしてか。おそらく、MCで語られた「地球ってすごく大きいから、世界中の全員とは会えないじゃないですか。そんな中で、今日、こうしてみんなで集まれたのは“たまたま”じゃない。想いのキャッチボールの上で集まることができた。こんなに美しいことってないなあと思うんです」という想いが4人を駆り立てているのだろう。