Ado、類まれなる歌声がJ-POPシーンで成し遂げた偉業 柴那典が考える『狂言』の意義深さ
Adoが1stアルバム『狂言』をリリースした。アルバムは、デビュー曲「うっせぇわ」など全14曲のオリジナル曲を収録した一枚。まず注目すべきは参加アーティスト陣だろう。アルバム発売に先駆けて公開されたクロスフェード動画も、クリエイターの名前を大きくフィーチャーした内容になっている。
「うっせぇわ」のsyudou、「レディメイド」のすりぃ、「踊」のGiga・TeddyLoid・DECO*27、「ギラギラ」のてにをは、「夜のピエロ」のbiz、「会いたくて」のみゆはん・みきとP、「阿修羅ちゃん」のNeruの既発曲に加え、アルバム収録の新曲でも、くじら、Kanaria、柊キライ、煮ル果実、jon-YAKITORY、伊根が楽曲を提供。さらにドラマ『ドクターホワイト』主題歌の「心という名の不可解」は、まふまふが作詞作曲と編曲を担当。非常に豪華な陣容だ。
ここから読み取れるポイントは、Adoという歌い手が、いわば今のネットカルチャーのハブのような存在になってきている、ということだろう。その歌声が持つ強力な個性がボカロPたちのクリエイティビティを引き出し、バラバラの作り手たちが集った全14曲にも不思議な統一感を与えている。
そしてもう一つ言えることは、Adoという歌い手が、決して1曲だけの話題性に終わるような存在ではなかった、ということだ。
2021年、「うっせぇわ」が社会現象的なヒットになったことで、Adoという名前は一気に世に知れ渡ることになった。作詞家・いしわたり淳治が『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)の人気企画「売れっ子音楽プロデューサーが選ぶ年間マイベスト10曲」で語ったように、「2021ユーキャン新語・流行語大賞」トップテン入りを果たしたこの曲は「プロのミュージシャンが作る音楽から流行語が生まれた」久しぶりの例になった。
ただ、あまりにセンセーショナルに世を席巻するということは、その反面、ブームとして消費されてしまうということも意味する。ブレイク当初にはそういう危惧を勝手に感じたりもしていたのだが、その心配は杞憂だったと言える。
というのも、「うっせぇわ」以降に様々な楽曲が発表されていく中で、話題性や現象というよりも、歌声の自在な表現力という歌い手としての本質的な部分にAdoの魅力があるということが広く伝わっていったからだ。昨年にリリースされた「ギラギラ」や「踊」や「阿修羅ちゃん」などがヒットチャートを席巻したことは、その証左と言える。