【特集】10代アーティストのリアル ~Teenage Dream~
「社会に出てもまともに働ける自信がなかった」 Ado、“陰な自分”と向き合い夢を掴んだ行動力
YouTubeやニコニコ動画、TikTokといったプラットフォームから、次世代を担う新鋭アーティストが日々登場する昨今。そんな中、2020年に彗星の如く登場したのが、18歳(2021年10月19日現在)の歌い手 Adoだ。ビジュアルはイラスト、素性もほとんど明かさない謎の存在でありながら、ボカロP syudouによるメジャーデビュー曲「うっせぇわ」で社会現象を起こした。
2017年、中学2年生の時に“歌ってみた”動画を初めてアップし、そのまま10代で輝かしい成功を手にしたAdo。従来のアーティスト像にとらわれない活動形態での成功は、今を生きる若者にとっては大きな希望にもなっただろう。デビュー前は「ニートになるかもしれない」と考えていたAdoが、どのようにして夢を掴んだのか。同年代に伝えたい、自分のやりたいこと、好きなことを貫く行動力の大切さについて教えてもらった。(編集部)
小学6年生で抱いた歌い手への憧れ
――Adoさんは中学2年生のときに初めて“歌ってみた”動画を投稿されたそうですね。
Ado:はい。小学6年生くらいのときから歌い手にすごく憧れていたので、できることならすぐにでも始めたい気持ちはあったんですよ。ただ、周囲には動画投稿をしている人はいなかったし、パソコンの知識に関してもたくさんのカタカナ言葉をどうにか理解しながら独学でやっていたので、気づいたら中学2年生になってしまっていたっていう。悪戦苦闘している間も歌い手になりたいという気持ちはまったく変わらなかったので、初投稿できたときは本当にうれしかったですね。
――インターネット上に自らの歌を投稿することに関して躊躇もまったくなく?
Ado:まったくなかったです。コメントなんかで叩かれたらどうしようとか、そういった不安も一切なかったですね。私は歌い手さんとかボカロPさんの動画を観ることが本当に大好きで、常にワクワクする感情をもらっていたんです。気持ちが落ち込んだときも、ネット上のそういった世界に触れれば元気になっていたし。だから自分が投稿することに関してもまったくハードルはなかったです。
――元々、歌うこと自体は好きだったんですか?
Ado:どうでしょうね。家でちょこっと歌ったりすることはありましたけど、あまり人前に出るタイプでもなかったし、友達とカラオケに行くことはあっても、そこまで本格的に歌うわけではなかったです。「歌うことが大好きです!」って感じではなかったかもしれません。そう考えると歌い手の活動を始めて、今こんなことになってるっていうのは、自分としてもちょっとビックリな感覚はあります(笑)。
――歌い手として活動を始めた当初、目標や将来へのビジョンはありました?
Ado:いろいろ妄想はしてました。例えば『ニコニコ超会議』や『ニコニコ超パーティー』に出てみたいとか、有名な歌い手さんとお話してみたいとか、ネットの番組にゲストとして呼ばれたいとか(笑)。ライブしたいっていう思いもありましたね。声だけでたくさんの人を楽しませ、魅了する歌い手さんの活動は、私にはものすごくキラキラして見えていて。だから、そういった人たちと同じような人になりたいっていう思いがあったんだと思います。
――匿名性の高い歌い手というスタイルを選んだのも、ご自身にとってなじみ深かったからですか?
Ado:そもそも私は勉強も運動も苦手で、自分自身に何の取り柄もないと思っているところがあって。何に対しても自信がないし、クラスの中で特別人気者でもおもしろい人でもなかったから、それが積み重なることでけっこう大きなコンプレックスになっていたんです。本当に陰の陰の陰の人間というか(笑)。だから顔出しをして活動をするのは絶対ムリだなと最初から思っていたんですよ。でも、歌い手の人たちは顔も本名も明かさないし、どこに住んで何をしているかもわからないけど、ネット上ではしっかり活動ができていて、たくさんの人に評価されていたりもするわけで。そのこと自体が私にはキラキラして見えたし、同時にここならば自分にも何かができるかもしれないと思えたんですよね。
――自分に自信が持てないけど、誰かに自分のことを認めて欲しい、自分という存在を見つけて欲しいという思いは持っていたんでしょうね。
Ado:はい。そういう気持ちはあったと思います。自分には何もないと思っていたけど、私にもできることがあるんだって自分自身のために証明したかったというか。
――活動を始めてみての反応はいかがでしたか?
Ado:ボカロが好きな友人たちはみんな応援してくれていましたね。今も仲良くしているんですけど、そういったみんなが見守ってくれていることが、ひとつのモチベーションになっているところはあります。毎回、動画を上げるときには緊張するんですけど、「おー、知らない人たちが私の歌を聴いてくれている!」っていう喜びの方が大きかったです。とは言え、当初はYouTubeに上げた動画の再生回数が24回とかで、「100回行ったらパラダイスだ!」みたいな感じでしたけどね(笑)。