BREIMEN、初の恵比寿リキッドルームで見せた“音楽で遊び続ける”スタンス

BREIMENの“音楽で遊び続ける”スタンス

 高木祥太(Vo/Ba)が盛んに「何のリリースもないライブなんだけど」と繰り返していて気付いた。あの世界のポピュラーナンバー「猫ふんじゃった」から意表を突く展開を見せる「CATWALK」と、この日のライブタイトルである「ANTAGATADOKOSA」の由来である新曲も、童謡モチーフの「あんたがたどこさ」をインクルードしているのに、それを謳うことはないのだと。普通、少しは当該ライブでフィーチャーしてもおかしくないこの新局面も、音楽で遊ぶ達人 BREIMENにとっては”最近の俺たち“でしかないのかもしれない。

BREIMEN
 それ以上に、初の恵比寿リキッドルームがソールドアウトしたことの方が感慨深かったようで、ドラムとキーボードは一段高い台の上、背後にはバンドロゴのくねった“I”の巨大なオブジェ。どちらも照明を仕込む豪華さだが、明かりが消えると案外、D.I.Y.感があるのも愛らしい。「春の海」など新年らしいBGMがSF映画のサントラめいた曲に変わり、クラップを誘うビートが加わると、メンバーが登場。いきなり新曲「あんたがたどこさ」を投下。メロディこそ違えどあの童謡をモチーフにした歌詞は大げさに言えば分断を嫌い、かつ自分は自分の楽しみ方をすればいいーーそんな投げかけに聞こえた。そんな歌がTalking Headsの「Once In a Lifetime」ばりの太いベースラインとアフロリズムに乗り、スペーシーかつ怒涛の展開を聴かせるのだから、冒頭から圧倒されてしまう。

 高木が一言「あけおめ!」と挨拶した後はアルバム『TITY』から「IWBYL」。ジョージ林(Sax/Fl/MPC)はMPC、サックスと忙しい。サトウカツシロ(Gt)のギターはファンクチューンの中にあっても歪み系のフレーズで終始やんちゃぶりを見せる。AORフレーバーすらある「棒人間」や、脱力感と日常感が心地よい「満員電ス」の”kirk franklinバージョン”を届け、フロアはいい感じに揺れている。ヴァースのラップが小気味よく、生ベースにシンセベースもプラスしているためか足元から重低音が駆け上がって五臓六腑を揺らす「ODORANAI」。どの楽器もリズム楽器的なフレーズで構築されていることがライブを見ると、より理解できた。同じゴールを目指して横一列で走るのではなく、抜き差しはありつつも全員が主役級の対戦型ゲームといった趣きと言えば分かってもらえるだろうか。音楽だから、もちろんメンバーを倒すのが目的ではないけれど、アンサンブルが成立すること前提で「そう出るなら、こっちはこう出る」といった、フィジカルの強さとスキルの高さが尋常じゃない。

 〈あーーーーーーーー〉の音が同期で流される中、「utage」の歌い出しに身構えるフロア。誰もがそのタイミングを待っているのが楽しいが、高木は2度タイミングを外し、フロアが和む。歌始まりのアイデアや、ヴァースでのSo Kanno(Dr)の意図的にモタるビート感など五感がやんわり刺激されつつ、続いてはいけだゆうた(Key)が「猫ふんじゃった」のフレーズを弾いて始まる「CATWALK」。サトウのワウカッティングも猫の鳴き声っぽい。

 「リキッドで一つ到達ってつもりでもないけど」と高木が言えば、「リキッドでワンマンつったらYahoo!ニュース載るでしょ」とサトウがボケる。この後もゆるいMCが続いたが、少なくともツッコミもボケも担当するサトウがいないと永遠に終わらないのは確かだ。

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