Lucky Kilimanjaro、WurtS、にしな……リアルサウンド編集部が選ぶ、2022年さらなる活躍を期待したいアーティスト

 「ドライフラワー」がロングヒットした優里やチャート常連組となったYOASOBI、年末には藤井風『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)の初出場も大きな話題を呼んだ2021年の音楽シーン。2022年はどんなアーティストたちが活躍するのだろうか。リアルサウンドでは、今年期待のアーティストを編集部スタッフがご紹介。ソロアーティストからバンドまで13組の特徴やおすすめ作品を挙げた。気になるアーティストや作品があればぜひライブにも足を運んでいただきたい。今年もたくさんの素晴らしい音楽が生まれ、出会える機会に恵まれることを願っている。(編集部)

■Lucky Kilimanjaro

Lucky Kilimanjaro「楽園」Official Music Video

 ラッキリの愛称で親しまれる6人組バンド・Lucky Kilimanjaro。彼らのダンスミュージックは驚くほど生活の中によく馴染む。サウンドの心地よさから言葉に耳を傾けていくと、歌われている内容も飾らない私たちの日常だ。しかし、独り言のような、あるいは語りかけるようなフランクな言葉の中に〈元気な人は誰かに分けてね 疲れた人はたまに休んでね〉(「光はわたしのなか」)、〈健康が一番おしゃれ〉(「Superfine Morning Routing」)、〈今日だけの今日を生きるよ〉(「FRESH」)など真理をつくフレーズがふと現れ、心に余韻を残していく。これこそがラッキリの音楽を楽しさにとどめない深みであり、彼らの音楽に強く惹かれる部分なのだと思う。作詞を手がけるボーカル・熊木幸丸の思想や、ワードセンス、ハウスから民謡まであらゆるダンスミュージックを昇華するバンドの作曲・編曲力は、DISH//「SAUNA SONG」や東京女子流「kissはあげない」など楽曲提供でも定評あり。昨年のアルバム『DAILY BOP』はラッキリ入門盤としても相応しい1枚。すでに音楽ファンの間では注目を集める彼らだが、2022年はさらに多くの人を踊らせる予感がしている。(久蔵)

■WurtS

WurtS – 分かってないよ (Music Video)

 1980年代〜2000年代を席巻したサウンドを床に並べ、「研究者×音楽家」を自称する編集感覚で繋ぎ合わせ、リスナーの絶妙なツボをついてくる。それがWurtSの音楽だ。さらに面白いのは、その接着剤としてエレキギターが多用されていること。ロックというフォーマットに様々な要素が取り込まれていったバンド全盛期とは異なり、ヒップホップもファンクもJ-POPもナチュラルに昇華した上で、あくまでオルタナティブロック寄りなソングライティングを選択しているところはいかにも現代的。だが、WurtS最大の魅力は、ギターの気持ち良さを存分に感じさせる秀逸なメロディラインにこそあり、リズミカルな歌唱と言葉選びも、その個性を引き立てる。時にSuchmosのような、音楽好きで無邪気な表情を覗かせてくれるところも痛快だ。昨年12月リリースの1stアルバム『ワンス・アポン・ア・リバイバル』は、あくまでWurtSの一側面に過ぎないのだろう。彼の多彩な引き出しに眠る音、そして引き出しを開けるタイミングも含めて、楽しみに待ちたい。(信太)

■にしな

debbie / にしな【Music Video】

 早くからYouTube上で一部の音楽リスナーより注目を集めていた“にしな”。2021年4月にリリースした1stアルバム『odds and ends』、その後配信された4曲(そのどれもがドラマや映画主題歌といったタイアップ曲)と、これまで発表してきた楽曲全てが“このメロディと言葉はこの声でなければならない”と思わせるほどの存在感を放っている。彼女がどのような思いで音楽を生み出しているかはインタビュー(※)を読んで欲しいが、その冷たくも温かみを帯びた声をはじめ、日常と非日常を自由に行き来するリリック、アンプラグドでも損なわれない楽曲そのものの解像度の高さなど、YouTubeが出自にあるにしろいずれ表舞台に出るべき人であったことには変わりない。4月には東阪でホール公演が控えており、今後さらに大きなステージへと歩を進めていくに違いない。(小田)

※:https://realsound.jp/2021/08/post-833394.html

■家主

家主”NFP”(Official Music Video)

 能ある鷹は爪を隠しているものだ。抜群の才能を持つ者が、必ずしもその腕前をひけらしたがるわけではない。筆者にとって、ギタリスト・田中ヤコブ率いる家主はそんなバンド筆頭なのだが、まさに今、時代がその存在を発見しようとしている。KIRINJI的な言葉のユーモア、カーネーションの情けなさが爆発したような叫び、人間椅子の激しくも美しいアンサンブル……それらをとびきり瑞々しいメロディとジャンクな好奇心で一気に接続。さらに、豪快に弾きまくるエレキギターのサウンドが、勝ちに行けない人生や、普通を謳歌する難しさ、眼前の出来事を眺めることしかできない無情を、部屋の片隅から外に連れ出してくれる。トレンドと逆行する無骨なロックサウンドでありながら、本質は現代特有の生きづらさを昇華した生粋のポップミュージック。バズることではなく、人知れず届くことによって最大の効力を発揮する家主の音楽は、逆説的に数多の人の心を射抜く段階にまできた。田中ヤコブのソロ作も含め、2022年に聴き逃すこと勿れ。(信太)

■BREIMEN

BREIMEN「CATWALK」Official Music Video

 高木祥太(Vo/Ba)を中心に結成されたバンド・BREIMEN。Nulbarichのメンバーでもあるサトウカツシロ(Gt)、Mega Shinnosukeのサポートを務めるいけだゆうた(Key)など、音楽ファンであればどこかで彼らを見かけたことがあるかもしれない。母体となるBREIMENも1stアルバム『TITY』に続き、昨年5月にリリースした2ndアルバム『Play time isn’t over』で心地良い音楽を奏でており、2022年はさらに大きなフィールドへと踏み出していく予感がしている。アルバムに続いて配信された「CATWALK」も冒頭のジョージ林によるサックスの音色とキャッチーなメロディから引き込まれる1曲に。モノクロで制作された、洒脱な短編映画風MVも楽曲の雰囲気にぴったりマッチしている。「赤裸々」では〈知ってホトケになるのも それもまた人生か〉といった達観した歌詞も見られ、単なるグッドミュージックに留まらないのもポイント(過去にはより遊び心のある曲も)。高木祥太の実体験に基づいている言葉でありながら、生々しくなりすぎないのは柔らかい歌声のためだろう。2022年は、大衆に広く受け入れられるヒット曲が生まれるかもしれない。(村上)

■DIALOGUE+

【DIALOGUE+】「おもいでしりとり」Music Video Full ver.【4th Single】

 DIALOGUE+は、次世代声優育成ゲーム「CUE!」から生まれた8人組声優アーティストユニットで、音楽プロデュースはUNISON SQUARE GARDENの田淵智也が担当している。1stアルバム『DIALOGUE+1』は、田中秀和や睦月周平をはじめ、フジファブリックや大胡田なつきなど、アニメやJ-POPシーンで活躍する多彩な作家/アーティストが参加。現代のポップス請負人と言える田淵のセンスが爆発する楽曲に、個性豊かな声質と抜歌唱力を持つ8名の歌声が合わさることで、DIALOGUE+流エンターテインメントが現時点ですでに確立されている印象だ。入門曲はJ-POPの王道感溢れる「おもいでしりとり」、ディスコファンク好きなら「プライベイト」、クセの強さを求めるなら「アイガッテ♡ランテ」や「20××MUEの光」をおすすめする。そして曲にハマったらぜひライブも足を運んでほしい。従来の声優ユニットのイメージとは一線を画す、こちらの想定をさらっと超えてくる熱く、激しいパフォーマンスに驚嘆してしまうはずだ。(泉)

■NEE

月曜日の歌 - NEE

 昨年9月にメジャーデビューを果たした4人組バンド NEE。退屈をガソリンに爆走するのはロックバンドのロマンみたいなものだが、NEEが歌うのは、何もないという退屈ではなく、「何もできない」ことによる退屈である。それは楽曲ごとに「不自由」にも「諦念」にも変換され、もがくこともできずに呆然と立ち尽くすような歌がズラリと並ぶ。「不革命前夜」を聴いても、革命は起きない上、そもそも期待もしていない。不完全で未完成。ゆえに無敵で狂気的。あっけらかんと真実を突きつける歌詞には、綺麗事や嘘にまみれた世の中に中指を立てる、強い意志も宿っていると言えよう。RADWIMPSやクリープハイプのDNAを感じるのも腑に落ちつつ、ボカロPとしても活動しているくぅ(Vo/Gt)の大胆なソングライティングはまだまだ底が知れない。サイケデリックで中毒性の高いギター、骨太なリズム隊の演奏も機能して、16曲入りとボリューム満点な1stアルバム『NEE』も全く聴き飽きなかった。傷つきながら生きる孤独な命について歌う最新曲「月曜日の歌」も必聴。(信太)

■きゃない

きゃない – イヌ【Official Music Video】

 ライブやYouTube、SNSなど、アーティストは今たくさんの方法で楽曲を伝えることができる。2019年からソロシンガーとしての活動を始めたきゃないは、2021年3月にTikTokに投稿した動画が200万回以上再生され、話題となった。それ以前からきゃないは、地元の大阪・天王寺を軸に路上ライブを行い、TikTokでのバズ以降は路上に100人以上ものファンを集めるようになる。TikTokで話題になった動画は、オリジナル楽曲「イヌ」の路上ライブのものだったが、その要因は、〈他の誰かと寝ても暖かいけど 気持ちよくは無かったわ 今年も蝉が鳴いて 二人でいた頃が淡くなる〉という強い共感性を持つ歌詞だったかもしれないし、メロディの良さだったのかもしれない。ただ、昨年12月23日に行われたワンマンライブを観て、“伝えられる力”を持ったアーティストだからだと思った。MCのうまさだけではなく、声の強さや愛嬌、ポジティブなこともネガティブなこともまっすぐ話す姿にそう思ったのだ。きゃないは、最初に挙げたどんな方法でも思いを伝えられる力を持ったアーティストで、この先今のファン層を超えた幅広い世代にどう響いていくか、とても興味深い。まずは今年4月の大阪と東京でのツアーを観てほしい。(高木)



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