DEAN FUJIOKA、観客と過ごすひとつの空間で重視したライブ感 『Musical Transmute』ツアーを振り返る
俳優業のみならず、TVドラマ主題歌など話題の楽曲を多数手がけるミュージシャンとしても人気を集めるDEAN FUJIOKA。2021年9月から始まった最新ツアー『DEAN FUJIOKA “Musical Transmute” Tour 2021』が12月26日の大阪公演でフィナーレを迎えた。ここでは昨年12月19日にLINE CUBE SHIBUYAで行われた東京公演2日目をレポートしたい。
今回のツアーは、2019年の『DEAN FUJIOKA 1st Asia Tour 2019 “Born To Make History”』以来となる約2年ぶりのツアー。もともと2020年にも全国ツアーを予定していたものの、コロナ禍の影響で中止となり、2020年は配信限定のライブ『DEAN FUJIOKA Live Streaming 2020 “Plan B”』を開催。映画やMVの魅力とライブを融合させたかのような、作り込んだ映像表現に焦点が当てられていたことも記憶に新しい。
その『Streaming 2020 "Plan B"』が映像作品としてのクオリティを突き詰めることで、オンラインならではの体験を重視したものだとしたら、今回のツアーはその試みを経た上で、もう一度観客とひとつの空間で音楽を楽しむ「ライブ」に焦点が当てられている。セットは照明などにこだわりながらも基本的にはシンプルで、自身とバンドのパフォーマンス自体を際立たせるものになっている。また、この公演ではもうひとつ大きなテーマが表現されている。それが12月にリリースしたばかりの最新アルバム『Transmute』に繋がる世界観。同作には新曲に加えて過去にリリースしてきた楽曲のリアレンジバージョンなども収録されており、全編を通して変わりゆく日常/常識の中で「絶えず“変異”していくこと」「ひとつの可能性に閉じこもることなく、もうひとつの選択肢を用意しておくこと」の大切さが表現されている。今回の公演自体も中盤に披露された「Plan B」を分岐点にして、バンドの演奏を重視した前半と、演劇を加えたシアトリカルな演出を強めた後半に分かれており、ライブの中でテーマが変異していく。
まずは、ステージ中央で円形に集まったDEAN FUJIOKAとバンドメンバーが登場。音楽活動の原点である「My Dimension」(2013年)をアップデートした最新アルバム収録曲「Neo Dimension」からライブがスタート。スパニッシュギターを加えた新アレンジで、アーティスト・DEAN FUJIOKAの音楽性を広げていくような演奏が心地いい。
ワブルベースをバンドの生演奏で表現した「Take Over」、グラスを片手にグルーヴに乗って歌う洒脱な「Shelly」、手拍子で観客を巻き込んで盛り上げた「Made In JPN」など、楽曲ごとに多彩な楽曲を披露。もともと彼の音楽から感じられた幅広い音楽性が自然に溶け合って、境目なくブレンドされているような雰囲気が印象的だ。以降も都会のゲットーのような映像をバックに披露した「Searching For The Ghost」、これまでのライブより横ノリのグルーヴを活かしたファンクテイストな「Follow Me」などを経て、「Sayonara」では歌詞に連動して海や砂浜の映像が流れ、間奏で照明が日差しから夕日に変化。そして2016年の初アルバム『Cycle』収録曲「Sweet Talk」をリアレンジした「One Last Sweet Talk」では、同じく夕日を受けながらAOR風のグルーヴを披露。そこからシームレスにビートが変わって「Sakura」に繋げると、続いて原曲と大幅に異なるニューウェイブ/エレポップ風アレンジの「Midnight Messenger - mabanua REMIX」でバンド全員でジャンプ。「Go The Distance - JP Ver.」で前半を終えた。改めて振り返っても、ここまでは過去の公演と比べても、演奏自体の魅力を伝えるライブ感が重視されているように見えた。