DEAN FUJIOKA、観客と過ごすひとつの空間で重視したライブ感 『Musical Transmute』ツアーを振り返る
その後、一旦ステージが暗転してからバンドのインストゥルメンタル演奏が始まると、DEANが真っ白な衣装に着替えて登場し、ライブの折り返しとなる「Plan B」へ。ここではバックに灼熱の火の玉が映し出され、ステージ上の演出にも演劇的な雰囲気が加わっていく。絶望を表現するように倒れ込むと、失意の中ピアノに向かって「Echo」の弾き語りがスタート。激しい感情を表現するドロップパートでバンドの演奏が一気に加わり、ピアノの上に立って照明を一身に受けると、多重録音のエレクトロニックなクワイア「Accidental Poet」や「Legacy」を経て、最新アルバム収録「Sukima」を披露。「Missing Piece」やバンドのインスト演奏を挟み、「Runaway」ではカラフルな照明の中で観客の手拍子が大きく響いていった。
終盤には「これは俺たちの物語、わかるだろ?」と伝えた「Spin The Planet」で会場が一体となって指を回すジェスチャーで盛り上がり、これまでの歩みを振り返るように思い出の写真がスクリーンに映し出される中、2017年にリリースされた思い出の楽曲「Permanent Vacation」へ。楽曲の最後には、DEANが手持ちカメラを持ってリアルタイムでバンドや客席を撮影し、映像がスクリーンに映し出されるなど、会場の一体感がさらに増していった。
本編最後は自身の代表曲のひとつであるTVアニメ『ユーリ!!! on ICE』(テレビ朝日系)のオープニングテーマをアップデートした、最新アルバム収録曲「History Maker 2021」を披露。冒頭と同じようにメンバー全員が円形に集まり、挨拶してライブを終えた。エンドロールを挟んだアンコールでは、DEANがひとりでステージに登場し、ギターの弾き語りで「My Dimension」を披露。1曲目で演奏した「Neo Dimension」と対になるような構成で、最新アルバム/ライブのテーマ「変異」を表現し、「今度はもっとでっかい物語で会おうぜ!」と観客に語りかけてすべてのパフォーマンスを終えた。
『Transmute』の楽曲を中心にしながらも、同時に彼自身の音楽活動の歴史を辿るようでもあったライブ全体の流れは、2013年から約8年の間に広がったDEAN FUJIOKAの音楽そのものの魅力を伝えるような趣もあった。彼のこれからの音楽活動がどのように進化していくのか、ますます楽しみになる一夜だった。