Lucky Kilimanjaroが業界内外で愛される3つの理由 日常に根差したダンスミュージックの快楽性
全国ツアー『Lucky Kilimanjaro presents. TOUR "21 Dancers"』の11月25日Zepp DiverCity公演もソールドアウトし、12月10日には新木場STUDIO COASTでの追加公演を控えるLucky Kilimanjaro。鮮烈なフルアルバム『DAILY BOP』のリリースに留まらず、「踊りの合図」や「楽園」といったキラーチューンも立て続けにリリースされ、振り返れば、2021年はラッキリの音楽に生活の細部が彩られた1年だった。
2014年にボーカルでコンポーザーの熊木幸丸を中心に同大学のサークル仲間同士で結成され、2015年に1stミニアルバム『FULLCOLOR』をリリース、2018年にEP『HUG』にてメジャーデビュー――結成されてから現在までの7年間、作品を重ねるごとにその音楽性と歌詞世界をより深く、より広く、変化させながら、一貫して「ダンス」と「生活」を接続することを目論み続けてきたLucky Kilimanjaro。日常の中にひょいっと音楽の喜びと新鮮な視点を投げ入れるような彼らのポップセンスは、近年、様々な著名人からも注目を集めている。
例えば、蔦谷好位置やヒャダインといったヒットメイカーたちがラッキリ好きを公言していたり、あるいは『ONE PIECE』の作者である漫画家・尾田栄一郎が今年9月にSpotifyに公開したお気に入り曲のプレイリストに「踊りの合図」が入っていたり……振り返れば2019年には、桑田佳祐が自身のラジオ番組『桑田佳祐の優しい夜遊び』にて「HOUSE」を2019年の邦楽ベストシングルランキングで4位に選出していたことも記憶に新しい。ちなみに「HOUSE」は本誌の記事でSUPER★DRAGON・古川毅も「歌詞に影響を受けた曲」として紹介していた。Hey! Say! JUMPの「ときめきは嘘じゃない」やDISH//の「SAUNA SONG」といった熊木幸丸による他アーティストへの楽曲提供も、近年いかにラッキリのソングライティングセンスが大きな注目を集めてきたかを物語っている。
日常に寄り添うダンスミュージック
何故、今、ラッキリは愛されるのか。その理由を考えてみれば、この6人組が掲げ続けている「世界中の毎日をおどらせる」というキャッチフレーズが、その問いのひとつの答えといえるかもしれない。大切なのは、ダンスミュージックであること、そして、それが刹那的な陶酔のためのものではなく、日々の連続性と繫がったものとして提示されること。日常と非日常を断絶するためではなく、むしろ私たちが生きる毎日に重なる新たなレイヤーとして提示されるダンスミュージック――それが、ラッキリが試み、奏でてきた音楽の形だ。
例えば、先にも名前を挙げた2019年の「HOUSE」は、そんな彼らの世界観が、コンセプトとして最もダイレクトに形になった瞬間の1曲と言える。〈退勤→速攻帰宅 ためてた漫画にひたる SpotifyからLK NETFLIXでこもる 時計の針が12 まだまだ終わらないぜ 家にいるなら何次会でもOK〉ーーそんなふうにインドア派社会人の生活を写実的に描写しながら、「ハウス(家)」と「ハウス(ミュージック)」をかけたユーモラスで楽しい1曲。こうした彼らの「写実的な生活描写とダンスミュージックの快楽性を融合させる」という路線は、その後、アルバム『!magination』収録の「350ml Galaxy」や、『DAILY BOP』収録の「ペペロンチーノ」や「雨が降るなら踊ればいいじゃない」などによりしなやかな筆致で引き継がれ、今なお拡張されている。特にコロナ禍以降、クラブやフェスなどで人が集まって踊るという行為が難しくなってしまった期間にもラッキリのダンスミュージックが求められたのは、彼らの生み出す詩情とグルーヴが、生活と密接にリンクし、繰り返す日常に寄り添い、そして現実をより豊かな眼差しで眺め、生きるために響いてからだったのではないかと思う。