桑田佳祐、音楽で“楽しさや勇気”を届けた進化続けるパフォーマンス 「BIG MOUTH, NO GUTS!!」ファイナル公演

桑田佳祐「BIG MOUTH, NO GUTS!!」レポ

 桑田佳祐の全国ツアー『桑田佳祐 LIVE TOUR 2021「BIG MOUTH, NO GUTS!!」supported by SOMPOグループ』のファイナル公演が2021年12月31日、横浜アリーナで開催された。4年ぶりの新作EP『ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し』を引っ提げ、9月18、19日の宮城・セキスイハイムスーパーアリーナを皮切りに全国10カ所20公演で行われた今回のツアー。カウントダウンライブとなったこの日のライブで桑田は、日本を代表するポップ歌手としての強い存在感、そして、“音楽によって、少しでもみなさんを元気にしたい”という真摯な姿勢を改めて見せてくれた。

 2021年、桑田佳祐は精力的な活動を繰り広げた。まず3月7日に無観客配信ライブ『静かな春の戯れ 〜Live in Blue Note Tokyo〜』を開催。去年の春は、新型コロナウイルスが再拡大し、日本中が不安に包まれていた時期。そんな状況のなかで桑田は、「世の中がどんな状況だとしても、できることといえば引き続き『音楽を皆様に届けること』これに尽きます」という思いとともに、シックで奥深い“大人のポップス”を届けてくれた。

 そして9月15日には、初のEP『ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し』(通称“ごはんEP”)がリリースされた。ソロ名義としては2017年のフルアルバム『がらくた』以来、約4年ぶりとなる本作には、「Soulコブラツイスト〜魂の悶絶」「さすらいのRIDER」「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」「金目鯛の煮つけ」「炎の聖歌隊 [Choir(クワイア)]」「鬼灯(ほおずき)」を収録。60〜70年代の古き良き洋楽をベースにしながら、全世代のリスナーに届くポップスに結びつけたような本作は、ソロアーティストとしての桑田佳祐の原点回帰であると同時に、日本のポップミュージックの本来の在り方を改めて実感できる作品。人生の機微を描き、日々を生きる元気を与えてくれる歌詞を含めて、2021年の音楽シーンを象徴する1作と言えるだろう。この作品は数多くの音楽ランキングで首位を獲得。幅広い年齢層のリスナーに支持され、その存在感・影響力の強さを改めて証明した。

 9月からスタートした全国ツアー『LIVE TOUR 2021「BIG MOUTH, NO GUTS!!」』と並行して、地上波の音楽番組にも数多く出演。『SONGS』(9月16日/NHK総合)、『ベストアーティスト2021』(11月17日/日本テレビ系)、『FNS歌謡祭』(12月8日/フジテレビ系)、『CDTVライブ!ライブ!』(12月20日/TBS系)、『ミュージックステーションウルトラSUPER LIVE 2021』(12月24日/テレビ朝日系)などで“ごはんEP”の収録曲をお茶の間に届け、そのたびに大きな反響を呼び起こした。

 例年以上に桑田佳祐の歌を体感できる機会が多かった2021年。12月31日の横浜アリーナ公演は、“これぞ桑田佳祐!”と快哉を挙げたくなる素晴らしいステージだった。

 桑田とバンドメンバーがステージに登場すると、満員の会場からは割れんばかりの拍手が巻き起こる。“マスク着用、声出し禁止”の有観客ライブにおいて今やおなじみの光景だが、“2021年の最後を桑田佳祐の音楽で締めくくりたい”という思いが込められたこの夜の拍手は格別。桑田のギターと歌から「それ行けベイビー!!」でライブが始まると、今度はビシッと揃ったハンドクラップが鳴り響き、心地よい一体感が生まれる。〈今年もありがとネ/いろいろあったよネ〉と観客への感謝を込めた歌詞も心に残った。

 ライブの軸を担っていたのはやはり、“ごはんEP”の楽曲だった。

 〈我が良き友よ、おかえり/見えないジョッキで乾杯だ〉と観客との再会を祝福する「炎の聖歌隊 [Choir(クワイア)]」では来場者に配布された“ナマケモノライト(腕時計型ライト)”がオレンジ色に光り、会場全体に灯がともる。この楽曲がもたらした祝福のシーンはゴスペルそのものだ。

 温かい日常を映し出すアニメーションとともに披露された「金目鯛の煮つけ」では、何気ない日々のなかにある幸せを丁寧に紡ぎ出し、〈悲しみを迎えに行くのは止めたよ〉というフレーズを手渡す。「こんな私でも、流れ者のような生き方に憧れることがあるんです」という言葉に導かれた「さすらいのRIDER」では、ソウルミュージック経由の奥深いバンドグルーヴに乗せ、ハードボイルドな悲哀をたたえた男の気持ちを描き出した。さらに「鬼灯(ほおずき)」では、ソロデビュー直後のポール・マッカートニーにも通じるサウンドのなかで、戦争によって運命を左右された若者たちの情景を描いた歌詞を映し出す。根底にあるのは、ルーツミュージックを背景にした深い音楽性と、真摯なメッセージ性と心地よいフロウを共存させた歌。今回のツアーを経て、楽曲のポテンシャルがさらに引き上げていたことも印象に残った。

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