桑田佳祐がエンタメ界、日本に届ける明るい兆し 「Soulコブラツイスト~魂の悶絶」に表れたポップスターとしての真骨頂

桑田佳祐「Soulコブラツイスト〜魂の悶絶」

 軽快にハジけるビート、切なさと解放感を併せ持ったメロディ、幸せを求め続ける人間の業を軽やかに描いた歌詞。桑田佳祐の新曲「Soulコブラツイスト〜魂の悶絶」は、“これぞ桑田佳祐! これぞ日本のポップス!”と快哉を叫びたくなる圧倒的な名曲である。

 最初に聴こえてくるのは派手なホーンセクション、切れ味のいいギターのカッティング、流麗なストリングスが共鳴するイントロ。ソウルミュージックのノリを注入したリズム、管楽器、弦楽器を交えた華やかなアレンジの基盤になっているのは間違いなく、モータウンのサウンドだ。The Supremes、The Jackson 5など60〜70年代にかけて世界を席巻したモータウン・レコーズの音楽は、日本の大衆音楽にも多大な影響を与えた。もちろん桑田も例外ではなく、ソロデビュー曲「悲しい気持ち (JUST A MAN IN LOVE)」(1987年)をはじめ、モータウンのテイストを取り入れた名曲を持っている。「Soulコブラツイスト〜魂の悶絶」は桑田がもっとも得意とするスタイルの一つであり、日本の歌謡のベーシックな形であると言っていいだろう。

 歌詞の主人公は、〈死ぬほど好きなあなた〉にフラれても、どうしても諦めきれず、思うようにはいかない人生のなかでこんがらがる男。〈何故イケナイ人に恋しちゃうんだろう?〉とクヨクヨ考えながら、〈まるでコブラツイストを喰らったみたいに〉苦しみまくる様子を情けなく感じつつも、なぜか愛らしさと親しみを覚えてしまう。コブラツイストとはもちろん、桑田が敬愛してやまないアントニオ猪木の得意技。相手の身体に巻き付き、相手が動けば動くほど悶絶するようなダメージを与える技だが、“コブラツイスト”と思い通りにいかない“恋愛(人生)”を掛け合わせ、ポップスに仕立てるセンスは見事としか言いようがない。また、日本語の歌詞を英語的なノリを乗せるボーカルも、まさに桑田節。たとえば〈幸せになれるワケはないのに〉の後半部分を“ワッキャナイノニ”と発音しグルーヴさせる部分などは、下半身がフワッとするような快楽がある。

 もう一つ強調しておきたいのが、音像の生々しさだ。桑田佳祐の音楽を支える気の置けないミュージシャンたちの技術と独創性、そして、“自分たちの手でみなさんを楽しませる曲を生み出す”という気概。生楽器の響きを活かし、ライブ感のある演奏を軸にしたサウンドからも、日本の大衆音楽のベーシックをもう一度示しておきたいという意思が伝わってくるようだ。

 “モータウン系のサウンド×叙情的なメロディ×情けなくも親しみやすい歌詞”という黄金比を用いたこの曲には、桑田のポップセンスがこれまでもかと注ぎ込まれている。桑田がこのタイミングで「Soulコブラツイスト〜魂の悶絶」をリリースしたのは、シリアスで気落ちするような出来事ばかりが続く状況をふまえ、少しでも楽しい気持ちになってほしいという真っ直ぐな思いによるものではないだろうか。あれこれ考えている場合じゃない、とにかく盛り上がれる曲を届けたいーー「Soulコブラツイスト〜魂の悶絶」は、日本の人々を楽しませ続けてきたポップスター・桑田佳祐の真骨頂だと言い切りたい。

 「Soulコブラツイスト〜魂の悶絶」のほか、「さすらいのRIDER」「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」「金目鯛の煮つけ」「炎の聖歌隊[Choir](クワイア)」「鬼灯(ほおずき)」を含む新作EP『ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼きfeat.梅干し』は9月15日リリース。桑田本来の大衆性、優れたポップセンスが全開になった本作は、彼の新たな代表作であると同時に、日本のポップミュージックの魅力を改めて実感できる作品になるはずだ。

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