桑田佳祐として、音楽人としての姿勢示した全国ツアー『BIG MOUTH, NO GUTS!!』 再会果たした感動の初日公演

サザンオールスターズ 公式Twitterより

 9月15日にソロとして4年ぶりの新作となるEP『ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し』(以下“ごはんEP”)をリリースした桑田佳祐。9月27日付オリコン週間アルバムランキング、デジタルアルバムランキングで初登場1位を獲得、さまざまな音楽チャートで首位を席巻し、すでに20冠超えを達成しているというニュースも記憶に新しい。そんな大ヒット作を引っ提げた全国ツアー『桑田佳祐 LIVE TOUR 2021「BIG MOUTH, NO GUTS!!」supported by SOMPOグループ』が、9月18日宮城県・セキスイハイムスーパーアリーナ公演からスタートした。新型コロナウイルスにより一変した、この2021年に開催される桑田佳祐のライブは、サザンオールスターズ含め3回の無観客配信ライブ以降初の有観客ライブであり、筆者は、その瞬間をこの目で見るべく自力でなんとかチケットを購入。関係各所の許可を得て、レポートすることになった。

 桑田佳祐の全国ツアーは『LIVE TOUR 2017「がらくた」』以来4年ぶり。コロナ対策が徹底された会場では歓声はないが、SEに合わせて大きな手拍子が鳴り響くなど、開演前から「いよいよ桑田さんのツアーがはじまる!」という高揚感と興奮が会場全体を包み込んでいた。

 キャリアを代表する代表曲、ヒット曲を網羅したセットリストも最高だったが、なかでも際立っていたのは“ごはんEP”の収録曲だった。ライブで演奏することを念頭に置いて制作されたであろう楽曲たちが全国各地で生み出す感動はまちがいなく、今回のツアーの大きなポイントだ。また、「みなさんのエネルギーを感じられて、嬉しく思います。デビューして43年になりますが、みなさん、関係者、スタッフへの恩返しの旅だと思っています」「いろいろご不便もおかけしますけど、楽しんでまいりたいと思います!」という桑田の言葉にも胸を打たれた。

 「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」は大きなハイライトの一つだった。きらびやかなシンセのイントロが鳴った瞬間、会場からは手拍子が巻き起こり、自然な一体感が出現。大らかなスケール感を備えたメロディ、力強い光を感じさせるバンドサウンドは、アリーナクラスの会場でこそ映えるのだと強く実感させられた。〈世の中は今日この瞬間(とき)も/悲しみの声がする/次の世代に/何を渡そうか?!/今この時代(とき)を生きて〉に象徴される真摯なメッセージ性にも改めて感じ入るものがあった。もともとは東京オリンピックが開催される2020年の社会全体を盛り上げるべく発足した、民放共同企画「一緒にやろう」のテーマソングとして作られた楽曲だが、発表から1年半以上が経った今、楽曲が持つ意味合いも変わったように思う。ただ単に、表舞台に立つ者たちを応援するのではなく、社会のなかで必死に生きる全ての人の悲しみも喜びも受け止め、背中を押すような、この時代を象徴するアンセムとしての役割を担っていると確信した。思わず目頭が熱くなった瞬間だった。

 “ごはんEP”の楽曲はこのツアーで初披露となるわけだが、演奏は初日の時点で完全に仕上がっていた。バンドメンバーは斎藤誠(Gt)、中重雄(Gt)、角田俊介(Ba)、片山敦夫(Key)、深町栄(Key)、鶴谷智生(Dr)、TIGER(Cho)、田中雪子(Cho)。言わずと知れた凄腕のミュージシャンたちだが、高い演奏力はもちろん、緊張感とリラックスが程よく混ざった雰囲気も心地いい。ときどきメンバーをイジりながら、桑田自身も久々のステージを楽しんでいるようだった。ラジオ番組『桑田佳祐のやさしい夜遊び』(TOKYO FM)で、「私もそろそろ、“ごはんEP”を含めて選曲しながら、私自身の身体で鳴らすタイミングがほしい」と語っていたが、桑田佳祐の真骨頂はやはり、ステージの上でこそ表現されるのだと思う。

 桑田とバンドメンバーの熱演、熱唱に応え、手を鳴らし、掲げ、身体を揺らしながら楽しんでいるオーディエンスの姿も印象的だった。この日のライブは、新型コロナウイルスの感染対策で入場者を、自治体が取り決めたガイドラインに沿って5000人に限定。すべて電子チケットのみの取り扱い、ソーシャルディスタンスを確保した座席配置、公演中の歓声禁止、マスク着用などが徹底されていた。そんななかでも桑田は、手拍子によるコール&レスポンスや、過去のライブの歓声をサンプリングして使った“アリーナ!”“スタンドー!”のやり取り、ダンサーを交えたパフォーマンスなどを取り入れ、コロナ禍においてもこれまでと変わらないエンターテインメント性に溢れたステージを体現。どんな状況であっても、出来る限りお客さんを楽しませたいという思いが伝わるステージングもまた、ポップ歌手・桑田佳祐の魅力であると再認識させられた。

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