コラボ企画『組曲』特集インタビュー
花譜が大森靖子コラボ曲に重ねた“自分自身”の姿 両者に聞く、「イマジナリーフレンド」制作秘話
バーチャルシンガー 花譜が、デビュー3周年企画としてリアルアーティストとのコラボシリーズ『組曲』をスタート。第一弾のGLIM SPANKY「鏡よ鏡」に続き、大森靖子による第二弾楽曲「イマジナリーフレンド」を11月17日にリリースした。
もともと大森靖子のファンであり、自身のYouTubeチャンネルにてカバー曲をアップしていた花譜。作詞作曲:大森靖子、編曲:大久保薫による「イマジナリーフレンド」は、疾走感のあるメロディと切なさを感じる歌詞が、花譜の多彩な歌声によって表現された一曲に仕上がっている。
リアルサウンドでは、大森靖子と花譜へのメールインタビューを企画。自身も参加するアイドルグループ ZOCのプロデュースや他アーティストへの楽曲提供も多数行ってきた大森靖が語る、花譜の歌声の魅力や楽曲制作エピソード。そして4年目を歩む花譜には、デビューから現在までを振り返りつつ、歌手としての成長やコラボ企画『組曲』への手応えなどを聞いた。(編集部)
【『組曲』特集】花譜、ジャンルレスなコラボが生む“バーチャル×リアル“を越境した音楽
花譜「“対相手”をとても意識するようになった」
ーーデビュー3周年企画としてコラボシリーズ『組曲』がスタートしました。花譜さんにとってアーティストとして活動してきたこの3年は、どんな期間だったと振り返りますか?
花譜:半分くらいずっと他人事のようだった歌以外の色んなことを、最近になってようやく、手に取ってまじまじと見られるようになった気がします。色んなことが目まぐるしく進んでいっていて、いつだって置いてかれたくない!!! という気持ちです。今や活動を始めて3年で、たくさん歌を聴いていただけていて、たくさんの想いをもらったり、たくさんの方に関わっていただいて話を聞いてもらったり、してもらったりするようになって、“対相手”をとても意識するようになったと思います。活動でも、生活でも。
自分が「良い!!」と思うように歌う!! というのは変わらないのですが、どうしたら届くかなとか、聴いてくれる人をイメージするようになったし、喋る時にも、前は言葉をまとめきれなくてどうしよう!!ってなった時、「まあいいや!!! ちょっと今のなしで!! やっぱなんでもないです!!」という感じで、途中なのに喋るのを諦めることがめちゃくちゃあったんですけど、活動をはじめて、話の細部まで聞いてくれてたりとか覚えてくれてる方とかいて、私の口から話すことを待ってくれる人がいることが、本当に嬉しくて、だから自分でちゃんと伝えたいし、適当に済ませたくないな、と思えるようになりました。
ーーこの3年のキャリアの中で、特に印象に残っている出来事、アーティストとしてのターニングポイントになったような出来事があれば、理由と共に教えてください。
花譜:ファーストワンマンライブの『不可解』です。
初めてその時、私の歌を聴いてくれている人達が生きている姿を見ることが出来たんです。YouTubeやTwitterでくれるコメントは読んでいて、なんとなくいるんだろうな〜ということはわかったのですが、その人たちがどんな人だとかも、自分の想像でしかなくて、ずっとそこにはもやがかかったまま迎えたライブだったのですが、その、実際動いている姿を見て、うわーここまで何(なに)で来たんですか〜、、とか、今日は日帰りですか〜、、とか、今日の服はどうやって選んだんですか〜、、とか、想像の域になかったその人たちの生活の詳細についての質問がたくさん頭に浮かんできて(聞けないですけどね!!)そのときに、本当にいるんだ!!! と初めて実感できました。
だから先程もお話ししたように、常に対する相手がいるんだぞ、ということを意識するようになったと思います。
ーーバーチャルアーティスト 花譜(アバター)とリアルに存在する自分自身(人間)、その二つの存在を両立しながら生活しているかと思います。この3年間の中で、例えば第三者から観た花譜像とご自身でギャップを感じるなど、リアルとバーチャルの狭間で葛藤した経験や迷いが生じたことはありますか?
花譜:私の歌以外の言葉が誰かにとっては邪魔なものでもあるんだって思わされることがあったりして、自分の言葉で話したり書いたりするのがすごく億劫なったことはありました! 全てを肯定してもらえたら嬉しいけどそういうわけにもいかないのはしょうがないことで、自分以外から見た私が自分と違うこと、しかも人それぞれにその「花譜像」みたいなものがあることが面白いと思うことの方が多いですが、自分で言うのはおかしいですが私は花譜のことが好きだから、私が喋るせいで誰かが花譜を嫌いになることがあり得るのが本当に嫌でした。でもやっぱり私の言葉を待ってくれる人がいてくれたことが大きくて、みんなにとっては私がこの言葉を考えたか考えていないかなんてどうでもいいかもしれないし、区別のつかない些細なことかもしれないけど、自分は私の中で作った私でありたいしやっぱりそれを知ってほしい! ちゃんと私も存在したい!! と思って、今は伝えたいことがあったら、出来るだけ伝えようと思っています。
ーープロデューサーのPIEDPIPERさんをはじめ、カンザキイオリさんらクリエイター、そして観測者の方々など、花譜さんの歌声に魅了されてきた人は多いかと思います。ご自身としては歌声や声質について率直にどう思っていますか?
花譜:自分で歌い終わってすぐは、「いいじゃんいいじゃん!!!!」となるのですが、少し時間が経ってから聴くとめちゃくちゃ恥ずかしくて、「何でこれで良いと思った!!?消えるか!!?」となります。一周回って三年とか五年前とかの歌を聴くと「ああ〜若いね〜」だけでいいんですけど、1、2年前の歌は途中で「下手くそ!!!」 と叫ばずにいられないことがめちゃくちゃあります。でも「成長してるってことだ!!」と、ポジティブに捉えています。だから、歌ってる声はその時々で好きです。喋ってる声と喋り方はずっと嫌です。
ーー3年前と現在で自分の声や、歌そのものに対する印象も変わっていますか?
花譜:音楽を聴くときに「この曲歌いたいから覚える!!!! 聴こう!!!」という感じが前はめちゃくちゃ強くて、歌うために聴くみたいな感じだったんですけど、今というか2年くらい前から普通に聴きたいから聴くようになりました。声はめちゃくちゃ変わったと思います!!!
あと昔は心のままに何もわからず歌っていたのですが、ボイトレに行かせてもらってから体のどこをどうすればどんな音が出るとか、ちょっとずつ教えてもらってわかってきて、この次どうしよう!を、感覚だけじゃなくて確証をもって考えることができるようになってきたと思います!!
ーーシンガーとしての表現やスキルを日々高めている最中かと思いますが、ご自身の中での今後の課題やより磨きたい部分があれば教えてください。
花譜:英語の曲を上手く歌えるようになりたいです!!! あとラップ!! リズム感を鍛えたいです。
ーーコラボ企画『組曲』は、様々なアーティストとのコラボによって、ボーカル面において今までとは違ったアプローチ/表現も求められるかと思います。この企画を通して、シンガーとしての新しい発見や成長を感じることはありますか?
花譜:大きく出すと力んで声が震えちゃうことが多くて、それを克服してどっちにも自分の意思でできるようにしたいってずっと思っていたんですけど、どんどんそれができてきていると思います。そしてコラボしてくださった方々は私が以前から曲を聴かせていただいていた方々なので、無意識のうちに、歌い方のニュアンスを真似したがりになる…!! と練習しているときに気がつきました。組曲で提供していただいた楽曲たちを頭で再生するときに一番この歌い方が最高だ!! と思うのが、やっぱりコラボしてくださった方の声でした。
だからそれを歌い終わる頃には自分の歌声で再生出来るようにするぞ!!! と思い、自分の歌の癖と、真似したいところをどうやって織り混ぜていくのが良いかを模索しながら作っていきました。それがすごく楽しかったです。