YOASOBI「夜に駆ける」から考える、全編英語詞リリースの意義 BTSやSexy Zoneも……楽曲の魅力を広く届ける手段に

 今年の3月頃、英語圏でとある動画を掲載したツイートが数万リツイート、10万以上のいいねという反響を巻き起こした。また、同ツイートはアメリカ発のSNS・Redditにも引用され、同じく1万以上のUpvoteを記録している。それはいわゆるジョーク系の投稿で、本文にはこのように書かれていた。

「アニメのオープニング : (鬱と自殺について歌う)
日本語が分からない友達と自分 : 」

 そして動画には楽曲に合わせてノリノリでキレのあるダンスを楽しむ少年たちの姿が映し出されており、つまりこの投稿は「本当は暗いテーマを扱っている楽曲にも関わらず、それを知らずに無邪気に明るく楽しむ人々」の滑稽さを面白がっているというわけだ。

 そこで流れていたのがYOASOBIの「夜に駆ける」である。

 言わずもがな日本国内では2020年を代表する最大のヒット曲となった同楽曲だが、その勢いは海外にも届いており、リリースから間もなくSpotifyのグローバルバイラルチャートで上位にランクインし(※1)、TikTokで同楽曲を使う人も多く存在していた。つまり、前述の投稿で揶揄されていたような状況が本当に起きていたのである。YouTubeのコメント欄には今も日本語以外のコメントも多く寄せられており、「夜に駆ける」はすでに海外でもある程度受け入れられているというわけだ(余談だが、楽曲自体は少なくとも現時点ではアニメのオープニングテーマとしては使われていない。だが、曲調やMV、あるいはMAD動画などを経てアニソンとして解釈されて広まっているようである)。

YOASOBI「Into The Night」

 このような背景を踏まえると、7月2日に同楽曲の英語版である「Into The Night」がリリースされたのは、極めて自然な流れだと言えるだろう。海外でヒットするポテンシャルを持ったアーティスト/楽曲が、言語という壁を越えるために現地の言葉に合わせる、いわゆるローカライズ戦略というのは決して珍しいものではなく、2004年には宇多田ヒカルが全英語詞の『Exodus(エキソドス)』をUtada名義で発表して全米デビューを実現しており、イギリスのレコード会社であるInsanity Recordsとの契約を持つSEKAI NO OWARIはEnd of the World名義で英語詞の曲をメインに海外活動を続けている。最近では米津玄師がFoorin team Eによる「パプリカ」の英語バージョンを発表したり、Sexy Zoneが全英語詞の「RIGHT NEXT TO YOU」をリリースするなど、今も多くのアーティストが海外展開を見据えて全英語詞の楽曲を発表している。また、多くのK-POPアーティストが日本で活動する際に日本語曲をリリースしているが、これも根本的には同じ考え方に基づいていると言えるだろう。

Sexy Zone「RIGHT NEXT TO YOU」(YouTube ver.)

 このようなローカライズ戦略において最も絶大な成功を収めたのは、やはり「Dynamite」で全米チャート1位という偉業を成し遂げたBTSということになるのだろう。以前より強固なファンベースを構築してきた彼らが、アメリカのメインストリームに本気で攻め込むための勝負曲としてリリースされた同楽曲は見事に「新たなボーイバンドによる魅力的なポップソング」として受け入れられたのだ。

BTS (방탄소년단) ‘Dynamite’ Official MV



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