SixTONES、「マスカラ」に見た常田大希の狙い グループの新たな魅力見出す“切ないラブソング”を紐解く

 歌詞で印象的だったのは、サビ冒頭の〈強くなれたならば 素直になれるかな(優しくなれるかな)〉。“強い=我慢できる、丈夫である”ではなく、“強い=素直、優しい”と定義づけたところに常田らしさを感じた。例えば、King Gnuの「白日」に〈いつものように笑ってたんだ/分かり合えると思ってたんだ/曖昧なサインを見落として/途方もない間違い探し〉とあるように、常田の歌詞には人間の脆さ、儚さを前提としたものが多い。さらに言うと、“だからこそ生き抜け”と伝えるのが彼の音楽であり、そのため、失恋ソングにあたる「マスカラ」にも〈悲しみの雨を 丸々飲み干したら 出かけようか/出会った二人のまま〉とある。主人公は無理して吹っ切れる必要がないし、ずっと膝を抱えているわけでもない。“心に穴が空いたまま進む”という選択、そこに至る繊細な感情がこの曲では描かれている。

 要するに、ボーカリストとしての技量にしても、歌もダンスもそれ以外も引っくるめたトータルの表現力にしても、「マスカラ」がSixTONESに求めているものは多い。だからこそ、場数を踏み、さらに曲を自分たちのものとしたとき、SixTONESは新たな魅力を獲得することができるはずだ。そして、熱くなりすぎてうっかり忘れるところだったが、今回披露されたのはあくまで曲の一部だ。常田の「フル尺かなりかっけーから」発言(本人のInstagramストーリーより)に期待が高まる。

※1:『SWITCH』 Vol.39 No.2 特集「常田大希 破壊と創造」より

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

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