Kan Sanoによる連載『Kan Sano Talks About Pop Music』第1回(後編) The Beatles、J-POPに与えた影響

Kan Sanoによる連載開始

The Beatles「Let It Be」に通ずる「花束を君に」の伴奏スタイル

 「Let It Be」では、右手で和音を押さえながら左手はベース音を刻んでるんです。こういう伴奏スタイルって定番中の定番で、合唱曲でもよく用いられてるんですけど、僕はThe Beatlesで覚えたんですよね。宇多田ヒカルさんの「花束を君に」でも同じスタイルで演奏されてます。

Let It Be (Remastered 2009)
宇多田ヒカル - 花束を君に

 右手だけだと4分音符しかないんですけど、左手の親指を音の間に入れることによって、グルーヴをもっと出すことができます。スティーヴィー・ワンダーとかになってくると、これが16分音符でリズムを刻んでたりして、そうするとノリがもっと変わってきますね。

絢香「アポロ」で用いられた録音方法

 ダブリングというボーカルの録音方法があって、これはおそらくThe Beatlesが最初にやったものだと思います。要は同じことを2回歌って重ねるんですよね。完全に同じように歌っているので、パッと聴いた感じはわからないですし、一般の方は気づいていない場合もあるんですが、重ねることで声が太くなるのでよりキャッチーになったり、パワフルな印象を与えます。

 ポップスでもよく使われてる録音で、僕も絢香さんの「アポロ」(ポルノグラフィティカバー)をプロデュースした際にこの手法を使いました。元々綺香さんって、ハモリでは声を重ねることはあるんですけど、ダブリングは基本しない人なんですよ。なので、絢香さんの楽曲の中ではちょっと珍しい録音の仕方になってます。僕の楽曲でもこの手法はよく使っていて、3本とか4本とかもっと重ねたりしてますね。

 当時ジョン(・レノン)は自分の声があまり好きじゃなかったらしくて。声を重ねることで質感が変わるのを楽しんでいたようです。ただ、彼はせっかちなので、The Beatlesの曲をよく聴いてみるとちょっとズレてたりするんですよね(笑)。だから重ねていることがよくわかると思います。かなりマニアックな話ですが。

The BeatlesがJ-POPに与えた影響

 The Beatlesの影響はあまりにも大きすぎますよね。だから、「これはThe Beatlesの影響なんだ」って言えなくなりつつあると思うんです。The Beatlesの影響を受けたミュージシャンがたくさん出てきて、さらにその人たちの影響を受けたミュージシャンも出てきてるので。それぞれ辿っていくと、全部The Beatlesに辿りつくみたいな。そういうパターンが多いんじゃないかなと思います。僕は10代のころにその大元を聴けたのですごくラッキーでした。

バックナンバー

Kan Sanoによる新連載『Kan Sano Talks About Pop Music』スタート 第1回目はThe Beatlesを解説(前編)

■リリース情報
「Natsume」
4月28日(水)
レーベル:origami PRODUCTIONS
形態:配信+ストリーミング
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