origami PRODUCTIONS 対馬芳昭氏が音楽シーンに起こしたアクション 楽曲無償提供、ドネーションを通じた思いを聞く

origami対馬氏、音楽シーンへのアクション

 新型コロナウイルス感染拡大防止のための自粛要請を受けたイベントの中止や延期が相次ぎ、いまだ収束の見通しが立たない状況で模索し続けるエンタメ業界。無観客で行ったライブ映像の配信を中心に様々な動きが生まれている。

 各所で試行錯誤の取り組みが広がる中、Ovall(Shingo Suzuki、mabanua、関口シンゴ)やKan Sano、Michael Kanekoらを擁するレーベル/マネジメント・origami PRODUCTIONSは3月30日、ライブができず収益が当面見込めないアーティストに楽曲を無償提供する「origami Home Sessions」を立ち上げた。

 その企画の内容は、origami PRODUCTIONS所属アーティストたちが提供するインストトラックやアカペラのデータを使って自由にコラボソングを制作することができるというもの。完成した楽曲はインターネットやSNSにアップしたり、リリースすることも可能。そして、楽曲の収益は全てリリースしたアーティストに提供するのだという。「origami Home Sessions」の発表後、プレイヤーやシンガー、ラッパー、またインディーズで活動するアーティストから高野寛といったベテランのアーティストまで数多くの音楽関係者が反応し、1週間ですでに多くのコラボソングが生み出されている。

 都内で週末の外出自粛要請が発表された3月末から4月にかけ、これまでより一層家で過ごす時間が増えた人は多いだろう。ずっと家にいると気が滅入ってしまいそうになってしまうが、筆者はこの企画の広がりをSNSで見ながら、目の前で新しい音楽が生まれていく楽しさ、音楽の可能性を感じさせてもらった。

 今回、origami PRODUCTIONSのCEOである対馬芳昭氏に電話で話を聞くことができ、「origami Home Sessions」への思いなどを話してもらった。その中でも「絶対に音楽は必要なものです」と力強く語るその言葉がとても印象的だった。(編集部)

「僕にとっての音楽や商売は、アーティストがいないと成立しない」

ーー「origami Home Sessions」での無料楽曲提供という試みが生まれた経緯を教えてください。

対馬芳昭(以下、対馬):(コロナウイルスが流行し始めた)最初は、ライブができない状態に対しても「何でダメなの?」と疑問に思っていましたが、ライブハウスが「3密」という場所にあたることや色んな状況が見えていく中で「今ライブハウスでライブはできないんだ」と強く認識するようになり、今となっては音楽業界も「家にいて、一刻も早い収束を待つことが最善だ」という共通項を持つようになりました。その中で僕たちも「家で何ができるか?」を模索し始めました。origami PRODUCTIONSのアーティストたちは、楽曲制作やプロデュース作業、ライブ出演の準備で自宅での作業をすることも多く、言ってしまえば“テレワーク”的な動きが元々多かったんです。事態がいつどうなるか分からない中でもっとも深刻な状況なのは楽曲制作サイドよりもライブを主体に活動している人たち。(ライブの)サポートミュージシャンやPA、照明などのスタッフは今どうしようもなくなってきていて、origami PRODUCTIONSもいずれお仕事がどうなっていくかはわかりませんが、「今すぐに補償が必要かどうか」を現時点で考えると僕たちは急務ではないな、と。じゃあ、僕たちから何か手助けになることができないかとアイデアを考えた中の一つが「origami Home Sessions」でした。

ーー自粛要請を受けて以降、無観客ライブやライブ映像の配信など音楽リスナーに向けた様々なコンテンツが生まれている中、今回の試みにはどのような思いが?

対馬:origami PRODUCTIONSのアーティストも、ライブが当然中止や延期になったのですが、そうなると会場の費用やサポートミュージシャンに対する補償をどうするのか、各所色んな調整が必要でした。たとえば、origami所属のアーティストがライブをするときにもサポートしてくれるプレイヤーたちがいる。僕らとしては本当に今すぐお金が必要で家賃が払えなくなったりするミュージシャンがいるのを放っておけないですし、全額ではないですが一人ずつに対して補填をしたんです。ミュージシャンは楽器を商売道具として何よりも大事にしていると思いますが、プレイヤーではない僕にとっての“商売道具”はアーティストであり、彼らがいないと成り立たないんですよね。今回のことがあって、強くそのことを再認識したんです。なので、origamiのアーティストが無償で楽曲提供することによって、誰かの商売が成り立つのであれば、楽曲を手放せるかどうかが一つの試練というか、今試されていることなんじゃないかなと思ったんです。

ーー企画発表後、反応したアーティストやリスナーによってすごい勢いで拡散されていましたが、反響を受けていかがですか?

対馬:まさに僕たちが思っていたことが起きているなと思いました。面白かったのは、スピード感を大事にしてデモ状態でもSNSに上げるアーティストもたくさんいたというのがインターネットらしいなと思いました。アーティストの中には新人もいれば、高野寛さんのような大先輩も反応してくれたりして。

 そういう意味でいうと、アーティストによってじっくり曲を作ったり、作ったらすぐにアップするスピード重視の人もいて、どうやってリスナーを楽しませるかということだったり、自分の制作スタイルを世の中に発表できるような場にもなったんじゃないかと思います。「この人はこういう風に作っていくんだ」という普段の動きも見えてくるし、おそらく1カ月じっくり寝かせて曲を作る人も今後いるだろうから、ファンの人たちも長期間で楽しんでくれるといいなと思います。音楽ってこういう風に出来上がっていくんだと楽しんでもらえるので、クリエイターもアーティストもリスナーも皆家にいて、アットホームな楽しみ方が長期にわたってできるこの企画は、今の状況の中で全ての条件をクリアしている“遊び”だし、それがお金にも結びついてくれるといいなと思います。

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