『Kan Sano Talks About Pop Music』
Kan Sanoによる連載『Kan Sano Talks About Pop Music』第1回(後編) The Beatles、J-POPに与えた影響
ソロアーティストとして話題作をリリースする一方で、国内外の様々な作品のプロデュースや演奏にも参加してきたKan Sano。絢香、Uru、CHARAといったアーティストの作品に携わるなど、2010年代以降のJ-POPシーンのキーパーソンの一人だ。
リアルサウンドでは、Kan Sanoによる新連載『Kan Sano Talks About Pop Music』をスタート。彼のルーツとなったアーティストを取り上げていき、そのアーティストの魅力や、現在の音楽シーンに与えた影響を解説してもらう。第1回目は、Kan Sanoが初めて洋楽を聴くきっかけになったThe Beatlesをピックアップ。後編となる今回は、The Beatlesが後世のミュージシャンに与えた影響について語ってもらった(前編はこちら)。
なお本連載は動画でも公開中。動画ではKan Sano自身による実演を交えながら、The Beatlesの魅力を解説していく。
J-POPシーンでも多用 The Beatlesのコード進行
「A Day in the Life」×Kan Sano「みらいのことば」
The Beatlesの「A Day in the Life」では、<Ⅰ→Ⅶ→Ⅵ→Ⅴ→Ⅳ→Ⅲ→Ⅱ>というIの和音からスケール(音階)が下がっていくコード進行があるんですけど、これもよくJ-POPで使われていて、例えばMr.Childrenの「終わりなき旅」とか。僕の曲でいえば「みらいのことば」で使ってます。切なさがある進行なのでバラード調の楽曲で使われます。
「Carry that weight」×Perfume「不自然なガール」
「Carry that weight」では、コード進行上「Am」にするところを「A」にして一時的に転調させるフレーズがあるんです。アウトロで使われてるんですけど、#が入ることで違うキーに行ったように思わせる不思議なコードなんですよね。Perfumeの「不自然なガール」でもサビで#が入ってて、雰囲気が変わります。こういうちょっとしたところにポイントがあるんです。
The Beatlesの影響であるかは定かではないんですけど、中田ヤスタカさんは随所にこういったコード進行を用いています。メロディとコードを抜き出してみると、中田ヤスタカさんの楽曲ならではの切なさが見えてきたりしますね。
「Strawberry Fields Forever」×Official髭男dism「Laughter」
The Beatles「Strawberry Fields Forever」では、イントロで<I→V/→VII→bVII→VI→IIm>というコード進行が使われてるんです。これもⅠから下がっていく進行ですね。Official髭男dism「Laughter」のサビでも同じコードが使われています。今回は「Laughter」を挙げましたが、他にもこのコードはJ-POPシーンでたくさん使われてると思います。
ヒゲダンは、メロディとコードの作り方が細かいんですよね。The Beatlesっぽさもあれば、Steely Danの要素も感じられます。Steely Danってテンションノートのような複雑なコード進行が多いんですけど、ヒゲダンはそれをJ-POPとして成立させた使い方ができているんですよね。使い方を工夫することで、不思議なコードでもいいスパイスになります。