『Kan Sano Talks About Pop Music』
Kan Sanoによる新連載『Kan Sano Talks About Pop Music』スタート 第1回目はThe Beatlesを解説(前編)
ソロアーティストとして話題作をリリースする一方で、国内外の様々な作品のプロデュースや演奏にも参加してきたKan Sano。絢香、Uru、CHARAといったアーティストの作品に携わるなど、2010年代以降のJ-POPシーンのキーパーソンの一人だ。
リアルサウンドでは、Kan Sanoによる新連載『Kan Sano Talks About Pop Music』がスタート。彼のルーツとなったアーティストを取り上げていき、そのアーティストの魅力や、現在の音楽シーンに与えた影響を解説してもらう。第1回目は、Kan Sanoが初めて洋楽を聴くきっかけになったThe Beatlesをピックアップ。前編ではThe Beatlesとの出会いや作品の魅力について、後編ではThe Beatlesが後世のミュージシャンに与えた影響について語ってもらった。
なお本連載は動画でも公開中。動画ではKan Sano自身による実演を交えながら、The Beatlesの魅力を解説していく。
The Beatlesを聴くきっかけとなった『Abbey Road』
The Beatlesは初めて洋楽を聴いたバンドでした。小学生の頃、Mr.ChildrenのようなJ-POPを聴き始めていたんですけど、親が「The Beatlesも聴いてみたら」って『Abbey Road』をプレゼントしてくれたんです。言葉もわからないですし、玄人向けなちょっと渋めなアルバムなので、かっこよさに気づくのには時間がかかりました。でも、今みたいにサブスクとかYouTubeで簡単に音楽を聴ける時代じゃなかったので、一枚CDをもらったらずっとそれを聴くって感じで、とにかくたくさん聴きましたね。そうしていくうちに耳が鍛えられた感じもします。子どもが聴いていても、ジョン・レノンとポール・マッカートニー、どっちがどっちの声なのか最初はよくわからないんですよ。でもずっと聴いてるうちに、違いがわかるようになってきたり。ジョンはちょっとしゃがれた声で拳があるな、とか。
『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』はアルバムの概念を変えた作品
『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』はライブ演奏というよりは、レコード芸術という感じがします。例えば「Good Morning Good Morning」だったら動物の鳴き声がいっぱい入っていたりとか、サウンドコラージュっぽいアプローチをしていたりとか。生のバンドで演奏しているだけじゃできない表現や色々な音が細かく入っていて。「レコーディング」っていうものを意識させてくれました。僕も色々な音を足してみたりして、ラジカセに録音してデモテープを作ったりしましたね。
この作品はThe Beatlesにとってアルバムを「一つの作品」として捉え始めた頃のアルバムなんです。歴史的な流れを見てみると、それ以前のアルバムの概念って「シングルの寄せ集め」みたいな感覚だったんですけど、The Beatlesが「アルバム全体で一つのものを表現する」ということをやり始めた。その一番象徴的な一枚だと思います。そのあと、プリンスとかマイケル・ジャクソンとか、いろんな人がアルバムをトータルで表現するっていう手法をやり始めていきました。僕自身も、アルバムの曲間が繋がっていたりとか、全体のサウンドカラーをあえて統一させたりしています。アルバムトータルで聴かせたいっていう気持ちが強くなったのは、The Beatlesの影響です。