SUPER★DRAGON、『NEO CYBER CITY』にみなぎる“音楽の力” グループの魅力もネクストフェーズへ

スパドラ『NEO CYBER CITY』レポ

 鬱屈とした感情を切り裂くかのように響くハードでヘヴィーなミクスチャーロック「Untouchable MAX」からスタート。そうして拓けた地平を表現するかのようにステージ全体を使って、ロックとEDMの破壊力が融合した「LRL -Left Right Left-」とそこにサイケデリックな中毒性が乗ってくる「La Vida Loca」で、覚悟の舞いを踊る。今回のコンセプトという意味でも、存在自体がアンセミックなSUPER★DRAGONらしさをもってコロナ禍を経たファンとの再会を祝う意味でも、このうえない幕開けだ。

 続いては物語中の彼らの姿勢そのもののような“当たり前にはびこる価値観”を疑うフューチャリスティックなロック「BLACK BOX」へ。そこからバウンシーなトロピカルハウス「My Playlist」から、9人が意見を出しあって作っていったという今のSUPER★DRAGONが提案するダンスミュージック「Burning in the nights」、レイドバックしたソウル「Distance」への流れで緊張と緩和を表現する。そしてオリエンタルなフレーズとベースミュージック/トラップ以降のビート、切れ味抜群のラップが炸裂する攻撃的な「Set It Off」、K-POPにも通ずるダンスナンバー「SAMURAI」など、持ち前の多彩なグルーブと映像を絡めた中盤のストイックかつユーモラスな流れは、戦いに出る前のパーティーのよう。カメラ隊がステージに上がり、客席全体をモニターに映しだしたときの、マスクをしていてもわかる多くの笑顔が印象的だった。いよいよライブは終盤へ。一気にモードが切り替わり廃棄されたクローンの逆襲が始まる。

 恐怖を克服し覚醒していくかのように、ダークサイドからのインダストリアルなトラックが鳴り響き、黄色いロングジャケットをまとったメンバーが登場。さらに自らを鼓舞するように、グループ名を曲のタイトルに冠した「SUPER★DRAGON」を放ち、そこからはLimp Bizkitへのオマージュを感じる「Mada’ Mada’」、さらにギアを上げ「BADASS」、「SWEET DEVIL」と、数あるダンス&ボーカルグループのなかでもSUPER★DRAGONの右に出る者はいないと断言してもいいミクスチャーロック一本で突き進む。物語の結末は先に記した通りだが、コロナの感染拡大防止のため声を出せなくても伝わってくる観客の熱気とともに、それでも信じた道を突き進むことの大切さを感じた。

 そしてアンコールでは体調不良から復帰した田中洸希も加わり、一転してリラックスムードに。“余裕をもって”と言うと語弊があるが、それぞれがSUPER★DRAGONのメンバーであることをただ楽しみながら踊っているような姿が微笑ましかった。MCではあらためてこの日までの道のりを振り返る。本編に参加できなかった田中は、やり場のない悔しい日々を乗り越えてきたであろう。そのうえでの清々しい振る舞いが印象的だった。

 ボーカリストとして、グループの精神的支柱としてカルチャーや自らの存在価値と向き合ってきた古川毅の存在感は絶対的と言っていいだろう。ダンスの中核を担いつつ、最年長ながらいじられ役を買って出るムードメイカー的な側面もある、志村玲於のキャラクターにはこの日何度も痺れた瞬間があった。

 ますますエモーショナル味を増したラップが光っていたジャン海渡は、そのフロウを聴けばわかる時代もジャンルも超えたインプットをもって、今後はさらにグループの音楽性を引っ張っていく存在になるだろう。マイクを持つフロントマンの一人としての成長著しい、最年少・松村和哉の腰の据わったラップは、確実にグループの表現力を一段階上に押し上げていた。

 色気がさらに増していた池田彪馬の声は、ダンスミュージックやミクスチャーロックといったグルーブ重視の曲が多いなかでメロディアスな魅力もしっかり担保し、ポップな強度を高めるうえで肝となる存在。この日の進行上もっとも大切な役割、人間と繋がっている黒幕役を見事に演じた飯島楓は、持ち前のフィジカルを駆使したダンスもひときわ輝いていた。

 音楽、ダンスに対してはもちろん、鉄道マニアで車掌のモノマネを披露するなど、伊藤壮吾の自身が熱中するものへのピュアネスが、グループを支えてきた部分は大きいだろう。MCや筆者が昨年『Burn It Black e.p.』のリリースにともない、メンバー全員にインタビューした際も独特の緩さで場を和ませていた柴崎楽だが、彼のダンスを観て実は誰よりも熱く優しい正義の魂を内包しているのではないかと思った。

古川 毅
ジャン 海渡
志村 玲於
飯島 颯
池田 彪馬
伊藤 壮吾
松村 和哉
柴崎 楽
田中 洸希
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古川 毅
ジャン 海渡
志村 玲於
飯島 颯
池田 彪馬
伊藤 壮吾
松村 和哉
柴崎 楽
田中 洸希
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 結成から5年以上の月日とコロナ禍という逆境に見舞われ試行錯誤した配信ライブを経て、9人それぞれの個性も、グループとしての魅力もネクストフェーズに入ったことを、コンセプチュアルなステージを通してファンの目の前で証明したSUPER★DRAGON。「NEO CYBER CITY -ネオサイバーシティ-」という物語に続きがあるのだとすれば、それはこの先の彼らの活動そのものなのではないだろうか。本当の意味で廃棄(消費)されることのないアップデートとは何なのか。世の中には素晴らしい音楽がたくさんあって、彼らを既存のポップミュージックに対するアンチテーゼと位置付けるつもりはないが、その答えの一つを求めながらこれからも追いかけていきたい。

SUPER★DRAGON オフィシャルサイト

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