RADWIMPS、2つの新曲「賜物」「命題」に秘められた問い 既存のフォーマットを更新し続ける挑戦的な姿勢

デビュー20周年を迎えるRADWIMPSがついに本格的に動き出す——。
2005年11月23日にシングル『25コ目の染色体』でメジャーデビューしたRADWIMPSは、今年2月5日に新体制のビジュアルを公開し、20周年特設サイトをオープン。アニバーサリー企画の一環として、既発アルバム11作品のドルビーアトモスによる空間オーディオ配信がApple Musicでスタート。さらに既発アルバム5作品(『×と〇と罪と』『絶体絶命』『アルトコロニーの定理』『RADWIMPS 4 〜おかずのごはん〜』『RADWIMPS 3 〜無人島に持っていき忘れた一枚〜』)のアナログ盤が、5月から毎月1作ずつ5カ月連続でリリースされる。
そして3月31日、待望の新曲が公開された。NHK連続テレビ小説『あんぱん』主題歌「賜物」、そして、『news zero』(日本テレビ系)新テーマ曲「命題」。この日だけで2曲の新曲が世に放たれたというわけだ。本稿ではオンエアされた2曲を紐解きながら、20周年のRADWIMPSの動向を探ってみたいと思う。
「賜物」は、「生きるとは?」という本質的な問いと、斬新な音楽的トライが共存したカラフルなポップソングだ。
『あんぱん』は、『アンパンマン』を生み出した漫画家・やなせたかしと、その妻・暢(のぶ)をモデルにした通算112作目の朝ドラ。朝田のぶ役は今田美桜、柳井嵩役は北村匠海が務め、“あんぱん”を中心とした愛と勇気の物語が描かれる。
物語の舞台は、昭和初期の高知県の町。商事会社に勤める父・結太郎(加瀬亮)を駅に迎えに行ったのぶ(永瀬ゆずな/幼少期)は、高知についたばかりの嵩(木村優来/幼少期)とぶつかってしまう。嵩は父親を亡くし、母親の登美子(松嶋菜々子)とともに医師の伯父・寛(竹野内豊)の家に身を寄せることに……というのが『あんぱん』の冒頭のストーリーだ。
このドラマを彩る「賜物」は、華やかなストリングスを取り入れたバンドサウンドで幕を開ける。煌びやかで鋭利なギター、心地よいファンクネスを放つベース、タイトな推進力をたたえたドラムが響き合う中で、野田洋次郎(Vo/Gt/Pf)は〈涙に用なんてないっていうのに やたらと縁がある人生〉というラインから歌を紡ぎ始める。
まず印象的なのは、こちら側の想像を気持ちよく超えていく楽曲の構成。言葉を詰め込んだラップパート、大らかに広がるサビのメロディ、神聖さと切なさが滲むオチサビなどが次々と繰り出され、リスナーの「こうなるだろうな」というイメージを鮮やかに覆していくのだ。次に何が起こるかわからない構成は、まるで人生そのもののよう。それはもちろん、『あんぱん』における、のぶと嵩の行く末と密接に重なっているはずだ。
生まれながらに与えられた環境や属性に対する想い、“命はいつか終わる”という圧倒的な事実を感じさせながら〈今日も超絶G難度人生を/生きていこう いざ〉と聴き手に呼びかけるリリックも、『あんぱん』のストーリーに寄り添いながら「生きるとは?」という本質的なテーマと結びついている。楽曲に込められた情報量の多さ、スピード感やサウンドメイクはいずれも“朝ドラの主題歌らしさ”から逸脱しているが、その奔放なトライアル自体が「賜物」の魅力なのだと思う。