Def Tech、デビュー20年目の現在地 大人になった“今”こそ響く「Child in me」が問いかけるメッセージ

Def Tech、デビュー20年目の現在地

 2025年、Def Techはデビュー20周年のアニバーサリーイヤーを迎えている。ヒップホップやレゲエ、ダンスミュージック界隈でこれだけ長い間、しかも第一線で活動し続けているデュオは非常に希少、というか他にあまり見当たらない。近年はリリースも活発で、毎年開催される全国ツアーの会場は様々な年代のファンで常にいっぱいだ。祝福とリスペクトの声に包まれた、現在進行形の素晴らしいGLORY DAYS――。

 振り返れば、ターニングポイントはいくつかあった。2001年に結成、2005年に1stアルバム『Def Tech』をリリース。CMソングに起用された「My Way」に引き上げられる形で引っ張られて累計280万枚を超えるメガヒットを記録し、同年の『第56回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)にも出場した。急激な環境の変化とメンバー間のすれ違いが原因で、2007年に一度は解散を発表するものの2010年に再結成。その後は自身らのペースで活動を続けるが、2020年に出演したYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』で歌った「My Way」が5,200万再生を超え、海外からの大きな反応も含めて新たなリスナーを獲得して現在に至る。なんと様々な感情の起伏に彩られた、ドラマチックな20周年イヤーだろうか。

Def Tech - My Way / THE FIRST TAKE

 先日、とある場所でShenとMicroに話を聞く機会があったのだが、デビュー当初のエピソードが特に印象的だった。デビュー前は「クラブで1日4回のステージを1週間続けてやった」こと、Shenは英語、Microは日本語しか話すことができず「コミュニケーションを取るのも大変だった」こと、先輩ラッパーたちの乱暴な言葉使いに違和感を覚えて「僕らの時代からステージで敬語でみんなに呼びかける習慣を始めた」こと、「My Way」の英語のサビを批判されて「こんな音楽売れないよ」と言われ続けたこと……時代は変わった。いや、“Def Techが変えた”。

 すでにオフィシャルホームページで告知されている通り、アニバーサリーを盛り上げる企画は次々とぶち上げられている。その一環として3月に開催されたのが、『Def Tech “Double Up” Tour 2025』。“2つの波が重なり合うことによって起こる想像以上のブレイクをオーディエンスに感じてほしい”というテーマのもと、全国4カ所の会場に4組の豪華アーティスト、MINMI、Crystal Kay、C&K、HYを招いて繰り広げた対バン形式のスペシャルツアーだ。

Def Tech - “Double Up” Tour 2025 Zepp Haneda(TOKYO) Special Guest:HY After Movie

 3月28日、Zepp Haneda(TOKYO)で開催されたツアーファイナルを見たが、音楽の持つパワーはもちろん、会場内に溢れるハッピーなバイブスがなんたって素晴らしかった。まずHYが持ち前の明るさとコミュニケーション力で観客を沸かせ、初期曲「ホワイトビーチ」から昨年リリースの「恋をして」まで、代表曲連発で会場を温める。その後に登場したDef Techも気合い満点、「Power in da Musiq」「Catch The Wave」などお馴染みのチューンから近年の「FANTASY」、そしてもちろん「My Way」と、20年のキャリアをコンパクトにまとめたセットリストで盛り上げる。アンコールは、HYとDef Techの6人で「Irie Got ~ありがとうの詩~」。2組のアーティストと観客が生み出すビッグウェーブに、心地よく乗せられた2時間半だった。

Def Tech(撮影=umihayato)

 その、ツアーファイナルの東京公演で初披露したのが、同日リリースの新曲「Child in me」だ。初めて聴く曲なのにフロアの全員の手が上がる、ポップでダンスでファンクなハッピーグルーヴ。DJとMPCのフィンガードラム、2本のエレクトリックギターが作るアッパーなサウンドに乗ってハジけまくるShenとMicro。近年の成熟したサウンドメイクや強いメッセージ性とは異なる性格の、まるで初期曲を思わせるほどにフレッシュで爽快な夏向きダンスチューンだ。

Def Tech - Child in me【Official Music Video】

 あらためて音源で聴き直そう。シャキッと爽やかなギターリフをイントロに、ファンキーに流れてゆく心地よいビート。ファーストヴァースはMicroが語りかけるように軽快に飛ばし、サビはShenとMicroの絶妙のハーモニー、セカンドヴァースはShenが透明感ある美声を聴かせる。ミドルパートにはラガマフィンなラップをぶち込んで盛り上げ、再びキャッチーなサビを繰り返してフィナーレへ。元々この曲、ShenのウクレレとMicroのアコースティックギターによる弾き語りを軸に、沖縄での制作合宿を経て、歌詞とメロディを何度も練り直して完成に至ったらしい。20周年の幕開けにふさわしい、聴く者すべてを踊らせるマジカルパワー溢れる曲。ShenとMicroが出演者と撮影クルーの一人二役をコミカルに演じる、カラフルなミュージックビデオも実に楽しい。

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