星野源が『おげんさんといっしょ』で挑み続ける文化の継承 第4弾放送から感じた“豊かさ”の意味

星野源『おげんさんといっしょ』が作る“豊かさ”

 「始まったときはどうなることやらと思ったけれども、4年も続いてるわよ」
「『お父さんになってください』って言われたときには何を言ってるんだろうって思ったけど」

 そんなおげんさん(星野源)とお父さん(高畑充希)のまったりとしたトークで始まった『おげんさんといっしょ』(NHK総合)の第4弾。「Twittrend」によると今回も放送中、Twitterの世界トレンド1位に輝くほど、大きな反響だった。

 「会えたね!」とお父さんが喜び「同じスタジオでやれるのが嬉しい」とおげんさんが言うように、今年はコロナ禍により、5月にパペットを使いリモートで収録された『おげんさんと(ほぼ)いっしょ』以来の放送となった。

 1曲目に披露されたのは「ばらばら」。おげんさんの家の欄間額にずっとタイトルが掲げられていたもので満を持して歌われたものだが、その歌詞は今聴くとまた意味合いが変わってきてより響くものになっている。まさに今こそ歌われるべき曲になっていた。曲名表示のテロップ代わりに欄間額の文字をそのまま使うのも気の利いた演出だった。

 〈世界は ひとつじゃない/ああ そのまま ばらばらのまま/世界は ひとつになれない/そのまま どこかにいこう〉と歌っている中で明かされる2階建てに“増築”された家。もちろんソーシャルディスタンスのための措置だ。そこに長女の隆子(藤井隆)、次男(三浦大知)、そしてバンドメンバーの息子たちがいる。それぞれの場所でばらばらにいるしかない。けれど、心を重ねてひとつになることができる。それを端的に象徴したようなセットだった。

 “末っ子”のカースケに「孫が生まれた」というほっこりする報告を挟みつつ、メンバー紹介を丁寧にするおげんさん。この部分を欠かさないのはこの番組ならではだろう。いかに音楽と、それを奏でるメンバーを大事にしているかがわかる。

 そしておげんさんは「日々のリハーサルのときに生まれることがある。そんなリハーサルをやるみたいな番組を作りたいと。ユルくて、リラックスして、緊張しなくてすむ音楽番組を作ろうと思って」と番組コンセプトを改めて説明。「音楽だけを浮かび上がらせる」そういう発信の仕方をしたい、と語る。

 2曲目を歌ったのはお父さんこと高畑充希。ニューヨーク、ロンドン、そして再びニューヨークと好きすぎて3回も通ったミュージカル『ウェイトレス』の劇中歌「She Used To Be Mine」だ。緊張して「お父さんは寝れないよ」と語っていた高畑充希だが、彼女が歌い出すと空気は一変。その歌声はあまりに美しく、圧倒的な表現力と相まって、鳥肌立ちまくりだった。

 歌い終わると「喉がカラカラ」だというお父さんと家族を引き連れ、おげんさん一家はちょっと広くなった「スナック豊豊」に。そこで待っていたのはもちろん豊豊さん(松重豊)だ。いつものようにディープな音楽談義をたっぷり時間をかけて行う一同。ゆったりとした時間が流れる中、豊豊が「猫村さんのうた」を歌う。もちろんテレビ東京で松重が主演した『きょうの猫村さん』の主題歌だ。作詞したU-zhaanもスナックのバーテンダーとして登場し、タブラを演奏。その場でチューニングするのを見せるのもまたこの番組らしい。

 さらに星野源の「アイデア」を三浦大知がカバー。狭い2階の部屋で踊り歌い、そのまま1階に。舞台を最大限広く立体的に使う圧巻のステージを見せつけた。弾き語りパートでは星野と三浦による“ギター漫才”も。その後、隆子がここぞとばかりに後方で髪を振り乱して踊っている。ひたすら楽しく心が踊るシーンが続く。

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