「おジャ魔女カーニバル!!」が今なお愛され続ける理由とは? 緻密な楽曲分析、J-POP/アニソンシーンの流行などから考察

アニソンとしての潮流

 ではアニソンシーンではどうだろうか。1999年当時のJ-POPが「ダンスビート全盛」だったとすれば、同時期のアニソンは「タイアップ全盛」だったと言える。アニメシーンと関係ないところで活躍する人気アーティストが主題歌などを手がけるケースが非常に多く、アニメ作品の世界観を直接的に歌う“アニメっぽい”楽曲よりも、担当アーティストの個性や音楽性を重視した楽曲が喜ばれていた傾向にある。L'Arc〜en〜CielやGLAY、SHAZNAといった、いわゆるヴィジュアル系とカテゴライズされたバンドが多く起用されていたほか、イギリスのレジェンド級メタルギタリスト・ジョン・サイクス(ex. Thin Lizzy、Whitesnake、Blue Murder)の楽曲なども使用されていた。

 タイアップ以外では、「メタル系アレンジの歌謡メロ曲」「AOR的サウンドのダンスビート曲」が2大勢力として目立っていた印象があるが、これはかなり大づかみな印象論に過ぎない。アニソンというジャンルの特性上、トレンドから外れたところで我が道を行く系の楽曲も決して少なくないからだ。

 「おジャ魔女カーニバル!!」も、当時の流れとはあまり関係ないところにいた楽曲ということになるだろう。アニソン史的に見た場合は、1982年の『Dr.スランプ アラレちゃん』(フジテレビ系)主題歌「ワイワイワールド」や1993年の『クレヨンしんちゃん』(テレビ朝日系)主題歌「オラはにんきもの」などから連なる文脈上にある“正統”なアニソンの一種であることは間違いないと思うが、シリアス/クール路線が主体だった1999年当時のアニソンシーンにおいては、むしろ“亜流”に近かった。

 「子供向けアニメに絞れば、(『おジャ魔女カーニバル!!』と)もう少し似た系統の楽曲もあったのでは?」という疑念も生じそうだが、たとえば『ポケットモンスター』(テレビ東京系)ではAORテイストの「めざせポケモンマスター」が使われていたし、『デジモンアドベンチャー』(フジテレビ系)ではハードロックテイストの「Butter-Fly」が人気を博した。つまり、“ひたすら明るく楽しいハッピーソング”と呼べるもの自体が極端に少なかったのである。

Butter-Fly / 和田光司 【Animelo Summer Live 2014 -ONENESS- Day 1】

 以上のようなことから、「おジャ魔女カーニバル!!」は当時の日本の音楽シーンにおいては比較的異質なタイプの楽曲であったと言える。流行り廃りとは無関係に、『おジャ魔女どれみ』という作品の魅力を表現することだけを純粋に追求した結果であろうし、だからこそ時代の変化にも埋もれず、今なお愛され続けるだけの強度を持った楽曲であり得ているのだろう。そのDNAは前述した「もってけ!セーラーふく」などに脈々と受け継がれ、のちの「侵略ノススメ☆」(2010年)や「ようこそジャパリパークへ」(2017年)といった数々の名曲群にも直接/間接を問わず遺伝し、しっかりと息づいている。

■ナカニシキュウ
ライター/カメラマン/ギタリスト/作曲家。2007年よりポップカルチャーのニュースサイト「ナタリー」でデザイナー兼カメラマンとして約10年間勤務したのち、フリーランスに。座右の銘は「そのうちなんとかなるだろう」。

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