アニメソングの女王 堀江美都子が語る、アニソンが伝え続ける“夢と希望と愛”「今みたいな状況のときに必要になってくる」

アニメソングの女王 堀江美都子が語る、アニソンが伝え続ける“夢と希望と愛”「今みたいな状況のときに必要になってくる」

 “アニメソングの女王”の異名を持つ堀江美都子が、2020年にデビュー50周年を迎えた。1969年のデビュー作『紅三四郎』以来、『キャンディ キャンディ』『ひみつのアッコちゃん』『ドラえもん』など、誰しもが一度は耳にしたことがあるアニソンの数々を歌唱。2月12日には、そんなキャリアを50曲で総括するベストアルバム『One Girl BEST』とカバーアルバム『One Voice』を発売。カバーアルバムでは、RADWIMPSやBUMP OF CHICKENといった近年のアニソンをカバーする意欲作となっている。

 現在は歌手・声優活動に加え、自身でボーカルスクールを主宰し、講師として教鞭を振るう堀江美都子。今もなお歌手としての探究心を持ち続け、後進たちに偉大な背中を見せ続ける彼女が語った、時代を超えて愛されるアニソンの普遍性とは。(編集部)

50年歌ってきたが、自分はシンガーとして未完成

ーー昨今いろいろ大変な情勢ですが、取材前にあらためて堀江さんのカバーアルバム『One Voice』と2枚組ベスト『One Girl BEST』を聴いていたら、とても元気づけられました。

堀江美都子(以下、堀江):それは嬉しいです。音楽を聴くことで、心や体が健やかに、穏やかになってくれたらと思います。

ーー時代はどんどん変わっていきますし、不安な時代になってしまった部分もありますが、堀江さんの歌うアニメソングは変わらないという印象があります。アニメソングの持つ役割についてどうお考えでしょうか?

堀江:歌っていろいろな役割があって、時代を反映した歌謡曲のようなものがあったり、ファッションのような曲もあったりします。その中でもアニメソング、特に創成期から2000年ぐらいのものについては、どれでもないんですよね。歌詞の普遍性も豊かな音楽性も、時代に流されないし、ファッションでもない。時代が変わっても色褪せないから、心の奥にずっと残るものだと私は思っています。だから、アニメソングはいつの時代にもあってほしいですね。

ーーでは、まず『One Voice』についておうかがいします。こちらはRADWIMPS「なんでもないや(movie ver.)」やランカ・リー=中島愛「星間飛行」など、主に2000年以降のアニメソングをカバーされていますが、これはどのようなコンセプトで選曲していったのでしょう?

堀江:アニメソングを50年歌ってきましたが、自分はシンガーとして未完成ですし、もっともっと進化したい、新しい曲に出会いたいという思いがあります。「今」を自分の中に取り込みたい。若いバンドやシンガーソングライターさんの曲を自分なりに解釈して、どういう形に仕上げていけるのか、それを研究したいと思ったんです。無謀と思われるような曲もあるかもしれませんが、メロディや音の詰まり具合に自分はどのように対応できるのだろうかと、そんなことを考えながらシンガーとして楽曲を選びました。

ーー先日、堀江さんが本作のプロデューサー・武部聡志さんのラジオに出演されたとき、今回のアルバムで「勉強したい」とおっしゃっていて驚きました。

堀江:私ね、学校のお勉強はあまり好きじゃなかったけど、歌はすごく好きだからどこまでも勉強したいの。新しい曲に出会うことも楽しいし、自分がどう歌うのかと考えるのも楽しい。宮大工さんは鉋(かんな)の刃先の0コンマ何ミリの違いが日々わかるそうですが、私もまったく同じで、日々変化していく自分の身体を使ってどこまで自分の理想にたどりつけるかを考えながら声を出しているんです。理想というのは、過去の自分ではなく、まだ出会っていない自分ですね。

ーー選曲はどのように行ったのでしょう?

堀江:カバーアルバムを作ろうと考えたとき、ディレクターさんが、私のことを知らない若い方にも、今までのファンの方にも一番聴いてもらいやすい形を考えて、「アニメソング」と「アニメ映画の主題歌・劇中歌」に絞っていこうと方針を立ててくれました。それでもかなりの数があったので悩みましたが、できれば21世紀の曲にしたいと思い、こういう形になりました。

ーー2000年代以降のアニメソングを実際に歌ってみて、これまでのアニメソングとの変化をどのように感じましたか?

堀江:まず、音楽全体が変化していますよね。BPMも速くなっていますし、歌詞の情報量も増えています。昔のアニメソングの歌詞はA4用紙1枚にフルコーラスが収まるのに、今は4枚ぐらい必要(笑)。これをどうやって歌うのか、歌詞のポイントを見つけるのが難しいんです。「何が言いたいんだろう?」「どこが一番言いたいんだろう?」って。昔のアニソンなら七五調でタイトルや主人公の名前が入っていたりするのでポイントもわかりましたが、今は違いますからね。

 人間は歌っていても筋肉は日々衰えていきますが、そんな中で出会ったことのないBPMの速さで、動かしたことのないほどの口の速さで歌詞を歌わなければいけない。筋肉との戦いもあるんです(笑)。そういうところに自分なりの醍醐味がありました。

ーー歌っていて一番の醍醐味を感じたのはどの曲でしょう?

堀江:まず、曲を選ぶときにそれぞれのアーティストのPVを見たのですが、「やりたい!」と思ったのはBUMP(BUMP OF CHICKEN「sailing day」)。私的にめちゃめちゃツボでした。「やりたい!」と言ったら、最初は武部さんにも「え?」って言われました(笑)。でも、私にはBUMPのようなバンドを率いてライブでガンガン歌っている自分の絵が見えていたんです。武部さんもストレートなロックのアレンジにしてくれまして。若いバンドのパワーで後ろからガーンと押してくれたらな、と。

ーー「星間飛行」も素敵な仕上がりでした。

堀江:これは80年代のニューミュージック風のアレンジがいいな、と思っていたんです。それなら、ユーミン(松任谷由実)をずっと手がけていた武部さんは得意中の得意ですし。すごく素敵な曲になったと思います。

ーー「キラッ」を堀江さんがどう歌うのかと注目していましたが……。

堀江:あれは歌詞なので、歌わなければいけないんですよね(笑)。でも、このアレンジでオリジナルの方のように「せーの、キラッ」と歌うわけにはいかない。だから、耳元で囁くような感じにイコライジングしていただきました。……ライブではどうするんでしょうね?(笑)。菅野よう子さんの曲を歌うのは初めてでしたが、学生(堀江さんは洗足学園音楽大学で声優アニメソングコースの教授を務めている)が歌っているのを聴いて、自分でもやってみたいと思ったんです。

 あと、自分で「やりたい!」と言ったのは「オー!リバル」(ポルノグラフィティ)。疾走感がいいんですよね。ただ、自分で歌う場合は疾走感よりも情熱的な感じでスパニッシュな雰囲気を強調したほうがいいな、と思いました。

(近年のアニソンは)王道の部分に戻りつつある

ーー曲ごとに違うかもしれませんが、どのようにポイントを掴んでいったのでしょう?

堀江:私はいつも歌詞を見て、共感する場所や好きな場所を探します。「この言葉が好き」とか「この表現が謎」とか。ポイントを置いて、そこに向かって歌うという感じですね。

 今の曲はとにかく16分音符が増えて、そこにすべて歌詞が入るようになりました。昔は2分音符に一つぐらいしか歌詞がなかったんですよ(笑)。メロディに隙間が多かったので、隙間を歌えば良かったの。音と音の間に想いを乗せる時間があった。

 でも、今の歌は隙間がないから、隙間が歌えない。隙間に想いを込められないから、想いを乗せちゃいけない、と自分の中で納得しました。想いを込めようと思うと歌えないのが今の歌なんです。一つの言葉をきれいに歌おうと思っても、無理にやろうとすると、うまく歌が流れないし、言葉もうまく伝わらないんです。

ーー堀江さんは他のインタビューで「隙間がなくても自分を落とし込んでいけば必ず隙間は見つかるはず」ともおっしゃっていました。

堀江:(ポンと手をたたいて)そう! どんなに歌詞が詰まっていても、自分が納得して消化していけば、そこに隙間の時間ができてくるんです。きっとオリジナルで歌われているみなさんはそういう状態だと思います。何度も歌っていくにつれ、自分なりの隙間ができてくると思います。そのとき、自分の歌として作れたと思うんじゃないかな。そこまで歌い込みたいですね。

ーーでは、2000年代以降のアニメソングが、それ以前のアニメソングと変わらない部分はどのようなことだと感じましたか?

堀江:この60年ぐらいの間に、アニメもアニメソングも変化してきました。ある時期は、作品から逸脱したアニメソングが増えたこともありました。でも、最近は王道の部分に戻りつつあると私は感じています。今回、選んだ曲もそうですが、要はアニメ作品のために作られている曲なんですよね。若いバンドやシンガーソングライターの方たちも、作品のために曲を作っているから、世界観がちゃんと共通している。これは私がずっと歌い続けてきたアニメソングと同じだと思います。

ーー確かにそうですね。RADWIMPSの野田洋次郎さんも新海誠監督と綿密に打ち合わせしながら曲を作っていることはよく知られています。

堀江:「ひまわりの約束」(秦基博)を聴いていても、のび太くんとドラえもんが見えてきますからね。小さな頃からアニメを観ていた今の若い人たちが、「いつかアニメに関わる曲を作りたい」と思ってくれること、とてもいい曲がたくさん出来ていることが、私はとても嬉しいし、誇らしいです。

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