「おジャ魔女カーニバル!!」が今なお愛され続ける理由とは? 緻密な楽曲分析、J-POP/アニソンシーンの流行などから考察
「電波ソング」との共通項
ざっくりと「おジャ魔女カーニバル!!」の音楽的特徴を確認してみたが、まとめると「やたら早口で」「ハイテンションな」「テクノっぽいサウンド感の」「目まぐるしく展開する」楽曲、ということになる。“テクノっぽい”の部分は意見が分かれるところだとは思うが、一応ここではそうなのだということにしておいてもらえると幸いだ。
これらの特徴の組み合わせから、「それって電波ソングのことでは?」と思い当たる諸氏も多いことだろう。ちょうど2000年ごろから局所的に盛り上がりを見せた「電波ソング」と呼ばれる一連の楽曲群と「おジャ魔女カーニバル!!」には、多くの点で一致が見られる。とはいえ電波ソングの最大の特徴は「電波な歌詞」にあるため、必ずしも完全に一致するとまでは言えないものの、〈どっきりどっきりDON DON!!〉や〈ピリカピリララ〉といったラインが部分的に“電波的”であるという解釈も不可能ではない。
電波ソングの金字塔的楽曲と言われる「巫女みこナース・愛のテーマ」が発表されたのは2003年、アニメソングシーンに一大旋風を巻き起こした電波ソング「もってけ!セーラーふく」の登場が2007年のことで、アイドルシーンに電波ソングを持ち込んでブレイクを果たすことになるでんぱ組.incのメジャーデビューが2010年だ。1999年リリースの「おジャ魔女カーニバル!!」がそれらの源流(の一部)に当たると見ても、年代的には差し支えなさそうに思える。
R&B全盛だったJ-POPシーン
おそらく1999年当時であっても、電波ソングムーブメントの震源地であるPCゲーム界隈ではこの系統の楽曲がすでに珍しくなかった可能性はある。しかしメインストリームにおいては、ほとんどその傾向は見られず、アニソンシーンにおいても同様だ。
まず楽曲の持つスピード感がまるで違う。当時のJ-POPシーンはR&B全盛で、1998年デビューの宇多田ヒカルを筆頭に、安室奈美恵やDREAMS COME TRUE、小柳ゆきなど、ヒットチャートの多くをBPM90〜110程度のダンスビートが支配していた。
また、ロック勢にもスローテンポ系のヒット曲が目立った。GLAY「Winter,again」や椎名林檎「ここでキスして。」などはBPM90〜110程度。Hysteric Blue「春~spring~」や郷ひろみ「GOLDFINGER'99」といったBPM170〜180あたりのヒット曲も存在するが、これらはいずれも8ビート曲となっている。強引に16ビート換算するならBPM90程度に相当するため、BPM148の「おジャ魔女カーニバル!!」が持つスピード感に到底及ばないことは明白だ。
唯一の例外がプッチモニ「ちょこっとLOVE」だと言えるかもしれない。BPM165前後の8ビート曲ながら、シンセハイハットが16分を刻んでいたり、歌メロにも16分リズムが(ごくまれにだが)登場したりと、「おジャ魔女カーニバル!!」との類似点がいくつか見られる。しかし逆に言えば、当時のJ-POPシーンに電波ソング的要素を匂わせるものというと、これを含むハロー!プロジェクト界隈の何曲か程度が限界ということも言えそうだ。