EMPiREが提示する、一歩進んだ“ダンスミュージック”と“歌モノ” 最新EPから新しい価値観=SUPER COOLを徹底解説

EMPiREが提示する、一歩進んだ“ダンスミュージック”と“歌モノ” 最新EPから新しい価値観=SUPER COOLを徹底解説

 EMPiREが8月5日にリリースする『SUPER COOL EP』は精悍で貫禄と余裕に満ち溢れた、まさにそのタイトルが表す通りの“SUPER COOL”な作品だ。さらなる音楽性の広がりを見せているものの、これまで以上に統一感と芯の通ったものを感じられるのは、より強固になったグループに対する自負と各メンバーの自信が歌に表れているからだろう。昨年末、インフルエンザに伏したMAYU EMPiRE不在の『EMPiRE’S GREAT ESCAPE TOUR』ツアーファイナル、そこからのリベンジへの駆け上がり方は圧巻だった(参照:EMPiREが6人で果たした“リベンジ” MAYU EMPiREの歌声轟いた念願のZepp DiverCity公演レポ )。あのときに大きく感じた可能性と強さは、このアルバムにしっかりと落とし込まれている。

EMPiRE / This is EMPiRE SOUNDS [OFFiCiAL ViDEO]

 唸るブラスサウンドとディストーションギターが荒々しく放出される音の波に乗せ、「これぞEMPiREサウンド」と声高らかに歌う、ド派手なオープニングナンバー「This is EMPiRE SOUNDS」で本作は幕を開ける。これまでもグループ名の入った楽曲は要所要所で作られてきたわけだが、〈今は待つだけ きっかけが欲しいのです〉(「EMPiRE is COMiNG」2018年)〈完全にオリジナル作りたい〉「EMPiRE originals」2018年)と、もがいていた彼女たちが〈今見せましょう〉〈ぶちかましましょう〉と誇らしげに歌っているのだから感慨深い。続く「SUPER FEELiNG GOOD」は無国籍感漂うEMPiREニューウェーヴの真骨頂。どこかつかみどころのないメロディが、刻まれるビートの中をすり抜けていく浮遊感。ドロップの図太いリズムの間を自由闊達に行き来する合いの手がこの楽曲の一筋縄でいかない様を色濃くしている。〈Oh yeah〉〈Itʼs FiNE〉とぬるっと滑らかに潜り抜けるMAHO EMPiREとNOW EMPiRE、妖しく艶めかしく動くMAYU EMPiREとYU-Ki EMPiRE、各々のキャラクターの対比も聴きどころだ。

EMPiRE / SUPER FEELiNG GOOD [EMPiRE’S GREAT PARTY EXCEPTiON -SUPER COOL EGP-]

 「Clumsy」はライブで盛り上がる光景が目に浮かぶアッパーなロックチューン。MAHOとMiDORiKO EMPiREの共作詞だが、〈どうでもいいや どうにかなるさ〉のなだらかな語感が印象的なサビと、〈とりま〉〈嘔吐〉という突飛な言葉選びが飛び出す平歌を聴けば、それをどちらが担当したのかすぐにわかるほど、個性のあらわれた詞が絶妙なコントラストを生み出している。加えて、メロディとリズム、符割りと言葉の置き方が特徴的な曲でもあり、ノリの良いバンドアンサンブルのテンポ感ともに歯切れ良い言葉のアクセントが小気味よく響く。それでいて熱くなり過ぎずにどこか落ちつきのあるボーカルスタイルからは毅然とした強さが漲っている。間奏とアウトロで伸びやかな声に重なっていく素っ頓狂なリングモジュレーターの掛かったギターがアーシーな雰囲気を醸し出し、強烈にこの楽曲の存在感を色濃く印象付ける。

 メンバーの個性がよくあらわれている作詞曲といえば、MAYUとMAHO、それぞれが手掛けた「I don’t cry anymore」と「I have to go」は大きな聴きどころ。2曲ともに女性ならではの心持ちを表している歌だが、まったく違う感性で書かれており、両楽曲の異なる方向性と合わせて今作の多面性を象徴する部分である。「I don’t cry anymore」の作曲者oniとMAYUのタッグは過去にも「ERASER HEAD」「maybe blue」といった曲で、内向的な気持ちとダークサウンドによる抜群の相性を見せながら変化球を投げてきた。しかし、この「I don’t cry anymore」ではやり場のない気持ちと慟哭性のあるメロディがストレートに胸を抉ってくる。

EMPiRE / I have to go [LYRiC ViDEO]

 片や「I have to go」は打って変わって、ハネたリズムが印象的なガーリーポップ。ピアノとワウギターの絡みによる軽快なバンドサウンドに乗せて、MAHOのはにかんだような歌声がそうであるように、次々と転がっていくボーカリゼーションが心地よい。MAHOによる女の子らしい恋心を綴った歌詞は飾っていない言葉であるのに、なんだかとても綺麗な響きがするから不思議だ。そんな彼女の作家性も相まって、これまでにない耳馴染みの曲調を導き出している。

 MAYUの作詞曲がもう1曲。「Can you hear me?」は〈こんな僕でも たまに希望の歌 口ずさむんだ〉という、ボジティブに前へ進んでいく楽曲である。一人称〈僕〉と〈行かなきゃ〉というワードの組み合わせはWACKの伝統といっていいだろう。そして、歌い出しの刹那メロディといい、起伏の大きい音使いといい、昨今リバイバルしている’90s avexサウンド、どこか“平成の歌姫”を想起するのは的外れではないはず。WACKとavexの融合、それがEMPiREなのだから。

 ラストナンバー「ORDiNARY」はひんやりとした空気がまとわりついてくるサイケデリア。MAHOの甘い歌い出しから継がれていくそれぞれの歌声の面差しに、得も言われぬ恍惚感を覚える。ゆっくりとはためくオーロラのようなメロディとその空にシュプールを描いていくようなギターのトレモロがこの夢幻な世界を作り上げる。水中に沈んでいくようなギターソロも昂然としていて、現代音楽のオーケストラ風なポストロックアプローチが身体中に染み渡っていく。静寂の中で轟音が覚醒していく様がなんとも美しい曲だ。そんな侘び寂びを効かせたトラックとは裏腹に、あえて抑揚をなくしたようなボーカルはあたたかく優しくて包み込んでくれるように思えて、どこか感情が読み取れないような冷たさをも感じてしまう。MVとあわせてみれば、ラストを歌い締めるYU-Kiのこちらをすべてを見透かしたような表情にゾクッとしながら、この『SUPER COOL EP』は静かに幕を降ろす。

EMPiRE / ORDiNARY [OFFiCiAL ViDEO]

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