EMPiREが提示する、一歩進んだ“ダンスミュージック”と“歌モノ” 最新EPから新しい価値観=SUPER COOLを徹底解説
4月よりスタートするはずだった全国ツアー『SUPER FEELiNG GOOD TOUR』は新型コロナウイルスの影響により延期、そして最終的には中止となってしまった。思うようにライブ活動ができない中でのリリースとなった今作。グループ最大規模であるファイナルのZepp Tokyo公演を含んだこのツアーが行われていれば、また違った形になっていたのだろうか。そんな疑問をavexの制作チームに投げたところ、2017年のグループの立ち上げからEMPiREの制作を担当してきたavexの篠崎純也氏より丁寧な回答を頂いた。前作リリース時の記事(参照:EMPiREが創り上げた独自性とライブの強さ avex制作スタッフの証言と共に2ndアルバムを紐解く)と同様、ここからは篠崎氏の話を元に、より深く本作を掘り下げていこう。
「これまでより1歩進んだ“ダンスミュージック”と“歌モノ”を提示する」
「『SUPER FEELiNG GOOD TOUR』はZepp Tokyo含め全公演が完売したこともあり、EMPiREが明確に次のステップに進むツアーと認識していたので、このツアーを最大限に盛り上げることを考えていました。当初の計画ではツアー初日に、ツアーと同名タイトルの「SUPER FEELiNG GOOD」をサプライズ披露→デジタルリリースとYouTube公開、ツアーを進めながらポイントでセットリストに新曲を順次追加、ファイナルのZeppと同日の6月10日にこの『SUPER COOL EP』をリリースする予定でした」
EMPiREは、“アルバムを提げたツアー”という一般的な手法を取らず、新曲発表とツアーを絶妙に絡めていく斬新なリリースパターンを得意としている。今作でもそうした青写真が描かれていたようだ。しかしながら、情勢的にそうしたわけにはいかぬままのリリースとなってしまった。予期せぬ事態に陥ったわけだが、作品のテーマやコンセプトに影響はあったのだろうか。
「前作『the GREAT JOURNEY ALBUM』で目指したEMPiREなりのダンスミュージックやライブでの強さを進化させること、そしてメンバーの歌唱力や表現力、作詞力が成長したことにより、これまでより1歩進んだ“ダンスミュージック”と“歌モノ”を提示するというテーマが最初からありました。そこは変更していません。ただ、延期になってもツアーは実施できると思っていたので、発売日や新曲の公開タイミングだけ後ろにスライドしました」
多幸感を放つロックと大きな成長を見せたボーカル
EMPiREの楽曲はエレクトロサウンドが軸となっているが、要所要所に入ってくるバンドサウンドがフックとなっている。割合は多くないが、ロックナンバーも作品やライブにおける起爆剤となっており、EMPiREを構成する大きな要素だ。今作では、「Clumsy」がそれにあたる。しかし、ロック色の強いWACKの中で、BiSHやBiSとは明らかに違う、EMPiREならではのロックの解釈があると思うのだが、どうだろう。
「EMPiREの基軸はあくまでダンスチューンで、ロックを取り入れる場合、例えばBiSHのように感情のすべてを裸でぶつけてくるような方法論ではなく、今作の「Clumsy」、過去曲でいえば「S.O.S」のような多幸感を放つようなロックを作りたいと思って取り組んでいます。松隈(ケンタ/SCRAMBLES、EMPiREサウンドプロデューサー)さんとは、ロック調の曲でも鍵盤やシンセ、キラキラしたループなどを入れていく話をすることが多いです。「This is EMPiRE SOUNDS」や前作のリードトラック「Have it my way」などはロック要素を取り入れたダンスミュージック、という認識です」
さらに音楽性をみれば、跳ねたピアノとギターが躍動するドライな「I have to go」、ドリームポップやフォークトロニカといったウェットなポストロック「ORDiNARY」といった、これまでになかったバンドサウンドをプッシュしたナンバーが印象的である。こうした音楽性の拡げ方は意図的なものなのだろうか? それともメンバー、グループの成長に触発されたものなのだろうか?
「そのどちらもに起因すると思います。前回の記事でもお話しさせて頂いた「EMPiREの独自性」はメンバー、チームとしてずっと共有されている指針で、「ORDiNARY」はドラマチックにエモーショナルに歌い上げるのではなく、静かで優しく包まれるような楽曲を目指して制作されました。「I have to go」は、1stアルバム『THE EMPiRE STRiKES START!!』に収録されている「Don’t tell me why」や「TOKYO MOONLiGHT」のような横ノリのグルーヴの楽曲で、EMPiREの初期からの武器だと思います。WACKにはあまりないラブソングコンセプトで作られたMAHOの歌詞と、SCRAMBLESとしては音数が少なく、1つ1つの楽器やメンバーの歌が良く聴こえてくる空気感がチーム内でもとても人気の高い曲です。作曲のSCRAMBLES・宮﨑吾郎さんは今ライブで使用しているSEや、「SUCCESS STORY」のトラックデザインなども担当してくださっています」
「I have to go」「ORDiNARY」は対照的な方向性であり、ボーカルグループとしての新たな側面を見せてくれた。篠崎氏の言う「これまでより1歩進んだ“歌モノ”」はこの2曲にとどまらず、全曲を通して充分に感じられる。それは冒頭で述べたように、グループに対する自負と各メンバーの自信が歌に如実に現れているからだ。
MAHOの、滑舌はゆるいのに耳にスッと言葉が届く豊潤で奥ゆかしい歌声。普通に考えればクセの強いスタイルであるのに愛くるしさを感じてしまう、魅力的な声だ。その表現力はここに来てさらなる飛躍を見せるほどに青天井である。MAYUの歌はより鋭く、YU-Kiは安定感と表情が増え、NOWは格段に声量が増した。MiDORiKOはよく通る発声になり、すっかりイケメンキャラを確立したMiKiNA EMPiREのハンサムボーカルの存在感は増すばかり。各メンバーのボーカル力は明らかに上がっている。
「メンバーの歌に関して、今作で大きな成長が見せられたと思います。これは、MiKiNAの低音ハモやMAHOのブレッシーな歌い方など、よりメンバーの魅力を引き出すように計算された松隈さんのディレクションと、NOWが加入して現体制になった昨年の活動や前回のツアー『EMPiRE’S GREAT ESCAPE TOUR』を通してメンバーが手に入れた自信が大きいと思っています」
EMPiREが掲げる新しい価値観
アルバムと同様に大きなファクターを占めているのが<初回生産限定盤>と<DVD盤>に収めらている『EMPiRE’S GREAT PARTY EXCEPTiON -SUPER COOL EGP-』だ。この『EMPiRE’S GREAT PARTY』(以下“EGP”)とは、昨年より通常のライブとは別枠で開催されているクラブイベントである。Vol.0は東京・渋谷WOMB、Vol.1は大阪・梅田のOWL OSAKAで行われた。VJとライティング、音響システムを駆使したクラブならではの演出を盛り込んだこのEGPは、EMPiREというグループを象徴するような存在である。今作に収録されているのは、このイベントの無観客EGPだ。全15曲、60分強のボリュームは見所も多く、最新鋭のEMPiREを体感できる内容になっている。ライブビデオともMVとも違うテイストで、ひとつの作品といっていいだろう。
東京で行われたEGP、そして本映像を観て、個人的には「EMPiREは“魅せていく”グループである」という主張を受け取った。「歌がうまい、ダンスがうまい、ライブパフォーマンスがすごい」といったありきたりのものではなく、グループとしてのトータルビジュアルイメージを強く打ち出していく、いわば、シルエットや立ち姿だけで魅了していくような、そんな説得力を強く感じるのだ。
「楽曲、ダンス、ライブパフォーマンスや演出を含め、トータルでEMPiREらしいエンターテインメントを届けられる、そんなグループを目指しています。EMPiREの振付に横イチのフォーメーションが多いことも、立ち姿で魅せるような狙いがあるのです」
『EMPiRE'S GREAT PARTY』は、本来であれば今春のツアーの合間にも開催していく予定だったという。映像の中でMAYUはEGPについて「新しい価値観」という表現を用いている。通常のライブとは異なる魅力を持ったこの『EGP』で、EMPiREはグループのさらなる独自性と新たな価値観を打ち立てようとしている。
日本のアイドルグループは、“Cute”や“Pretty”では表現できない“Kawaii”を海外に発信した。韓国のガールズグループは近年、既存の欧米スタイルである“Sexy”とは異なる新機軸、“女性が憧れる女性=Girl Crush(ガールクラッシュ)”を打ち立てた。EMPiREがいま打ち立てようとする独自性と価値観、それこそがまさに“SUPER COOL”なのだろう。
■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログ/Twitter
■配信情報
EMPiRE
『SUPER COOL EP』
7月24日(金)EP全曲先行配信
配信リンク
■リリース情報
EMPiRE
『SUPER COOL EP』
8月5日(水)発売
CD購入はこちら
<形態>
【初回生産限定盤】BOX仕様 / PHOTOBOOK CASSETTE TAPE + Blu-ray Disc
¥9,091(+税)
【DVD盤】CD+DVD
¥4,500(+税)
【CD盤】
¥2,000(+税)
<収録内容>
<カセットテープ> ※初回生産限定盤のみ収録
-SUPER COOL EP
SiDE-A
01 This is EMPiRE SOUNDS
02 SUPER FEELiNG GOOD
03 Clumsy
04 I don't cry anymore
SiDE-B
05 I have to go
06 Can you hear me?
07 ORDiNARY
<Blu-ray>
EMPiRE'S GREAT PARTY EXCEPTiON -SUPER COOL EGP-
01 This is EMPiRE SOUNDS
02 SUPER FEELiNG GOOD
03 WE ARE THE WORLD
04 RiGHT NOW
05 Clumsy
06 S.O.S
07 Don’t tell me why
08 maybe blue
09 I don't cry anymore
10 I have to go
11 Have it my way
12 SO i YA
13 Can you hear me?
14 ORDiNARY
15 FOR EXAMPLE??
"the GREAT JOURNEY ALBUM" LiVE
01 Have it my way
02 WE ARE THE WORLD
03 A journey
04 きっと君と
05 NEW WORLD
06 曲がりくねった道の
07 I have a chance!!
Music Video
This is EMPiRE SOUNDS
Making Movie
<DVD>
EMPiRE'S GREAT PARTY EXCEPTiON -SUPER COOL EGP-
<CD>
-SUPER COOL EP
01 This is EMPiRE SOUNDS
02 SUPER FEELiNG GOOD
03 Clumsy
04 I don't cry anymore
05 I have to go
06 Can you hear me?
07 ORDiNARY
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