EMPiREが6人で果たした“リベンジ” MAYU EMPiREの歌声轟いた念願のZepp DiverCity公演レポ

EMPiREが6人で果たした“リベンジ”

「此れが最初、Wowーーーー」

 「EMPiRE originals」間奏前のMAYU EMPiREのロングトーン。魂の叫びにも聴こえるこの声を耳にするたびに、いつもより長く、太く響いているように感じてきた。Zepp DiverCity(Tokyo)に響き渡った声は、いつもより真っ直ぐで明朗で鮮明に聴こえた。マイクにしがみつき蹲み込んだMAYUはどんな想いだったのだろうか。己の居場所、存在価値をしっかりと確かめている、その悦びを噛み締めている……客席側からはそんな風にも見えた。

 振り返れば、昨年12月19日のZepp DiverCity。MAYUが居ない5人のEMPiREのステージで、ここのパートを請け負ったのはMAHO EMPiREだった。「今日、ここは私が……」歌い出す前、高らかにあげた右手はそう宣言しているように見えたし、ステージに立つことができなかったMAYUの想いと、フロアを埋め尽くしたエージェント(=EMPiREファンの呼称)の力を受け止めているようにも思えた。そうして、天井を突き抜けるほどに渾身のロングトーンを響かせると、すべての力を出し切ったように項垂れた。

 インフルエンザに伏したMAYU不在の『EMPiRE’S GREAT ESCAPE TOUR』ツアーファイナルは不思議なライブだった。完成型とはいえないライブを、今日にしかできないライブとして、ステージの5人もフロアのエージェントも、皆が足りないところを補い合い、ひとつの幸せな空間を作り上げていく様に興奮を覚えた。そういうライブだった。

 そして迎えた2020年1月5日。ツアーファイナルのリベンジ公演である『EMPiRE’S GREAT REVENGE LiVE』は、翌日から仕事始めの人も多いであろう中、まさに“現実逃避”の夜になった。

 けたたましく打ち鳴らされるデジタルビート。高くそびえ立つ6面のLEDパネル。放たれる無数のレーザー。眼前に広がる光景は昨年12月に見たものとまったく同じ。ただ、ひとつだけ違ったのは、下手から颯爽とステージに現れたシルエットが5人ではなく、6人だった。

〈いつも思うんだ ズルいことばかりで嫌でしょう〉

 優しいエレクトロの調べにのせて、MAYUの滑らかな歌声でライブは幕開ける。「WE ARE THE WORLD」だ。6人が茶目っ気たっぷりにそれぞれの〈えへへ〉をキメると、どこか安堵にも似た歓声が沸きあがる。当たり前にステージに立つ6人の風姿が、いつにも増して愛おしく思えた。

 鮮やかな緑髪をなびかせながら、MiDORiKO EMPiREの切り裂くような「五月雨かませぇぇぇ!!」が咆哮する「Buttocks beat! beat!」から、ワイルドなのにエレガントなEMPiREのグルーヴが炸裂する「RiGHT NOW」。間奏のギターのフィードバックに斬り込んでくるMAHOのサビ入りは、空気諸共に時間を一瞬止めているようで、毎回ゾクゾクする。湧き上がる昂揚、我が身燃ゆる炎さえも「デッドバディ」によって、胸の高鳴りへと変わっていく。

 「ERASER HEAD」「NEVER ENDiNG」の妖美な色彩もEMPiREの大きな魅力。まどろむようなYU-Ki EMPiREの歌声と、クールな表情で惹きつけていくMiKiNA EMPiRE。うわずったように突き抜けていくNOW EMPiREの歌声は心地良く、飄々としながらもしっかりと言葉を刻み込んでいくMiDORiKOが揺さぶりをかけてくる。「FOR EXAMPLE??」のすべてを飲み込むような大きなうねりとダイナミズム、「NEW WORLD」の滑稽さと峻厳さが生み出す複雑な歪み、……EMPiREが容赦なく放つテクスチャの飽和は異常だ。

 ライブの大きなハイライトとなったのは「きっと君と」からのセクションである。

 話が前後するが、12月のツアーファイナルも、同じく「WE ARE THE WORLD」で始まった。出だしのMAYUのパートを担当したNOWだった。しかし、第一声の違和感は誰の耳にも明らかだった。NOWの枯れてしまった歌声は、急遽5人で迎えることになった過密な準備を物語っているようであった。

 MAYUの不参加が決定したのはライブ前日のことだ。その夜、横浜で行われたインストアイベントに足を運んだときは、NOWの不調は見受けられなかった。ライブ当日も開場前の昼から特典会があるスケジュールの中で、おそらくイベント終了後の夜中から当日朝までの限られた間に、歌割りとフォーメーションの変更を行っていたのだろう。しかしながら、NOWは喉の不調をものともせず健気な表情でキレの良いダンスを見せていたし、5人が全身全霊のパフォーマンスで挑んでいたのは間違いない。だが、全体的にどこか余裕がなく不安定なところがあったことは否めなかったし、対するエージェントもいまいち乗り切れずにいたように思えた。演者と観客、お互い探り合いの中、着火点を見失ったままライブが進んでいた。

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