ONE OK ROCK Taka、清水翔太が立ち上げた[ re: ] project 「もう一度」が紡ぐ、ジャンルを超えた“同世代”の結束
では、ロックとR&Bという異なるジャンルを代表するTakaと清水翔太が、どのようにして音楽観と想いを一つにすることができたのだろうか。
清水翔太は、2012年にカバーアルバム『MELODY』で、桑田佳祐の「白い恋人達」や德永英明の「レイニーブルー」などをカバーしており、R&Bだけにこだわらず美しいメロディを善しとしてきた。
またONE OK ROCKは、激しくエモーショナルなロックナンバーで知られるが、スケールの大きなバラードも非常に人気が高い。特に「Wherever you are」は、やさしくメロウなメロディと包み込むような温かさを持った歌声で、ライブではファンが灯すスマホの明かりが会場を埋め尽くす感動のシーンが印象的だ。
[ re: ] projectの「もう一度」の語りかけるようなメロディとピアノのサウンドは、どこか清水の「花束のかわりにメロディーを」を想起させ、ONE OK ROCKの「Wherever you are」に通じるやさしさと胸の奥の熱い炎を感じさせるなど、曲の端々から2人の持ち味と感性を感じ取ることができる。「もう一度」の動画には作詞作曲などのクレジット表記はないが、聴く人の胸に響く曲を届けるためならジャンルは関係ないという2人の思いが伝わってくる。
また、なぜ2人は「同じ世代」(Takaは1988年4月生まれ、32歳。清水は1989年2月生まれ、31歳)にこだわったのだろうか。平成と共に年齢を重ねてきた彼ら以降の世代は、概ねインターネットが当たり前にある生活環境で育った「デジタルネイティブ世代」とも呼ばれている。インターネットに蓄積されたあらゆる音楽を固定概念なく享受することに躊躇のない世代だからこそ、ロック、R&B、J-POPなどジャンルを越えたアーティストが、一つの曲に取り組むことができたのかもしれない。
同世代による結束の固さは、誰でも実感したことがあるはず。その個々が持つ能力が高ければ高いほど、生み出されるパワーは絶大なものになる。コロナ禍で生まれた「もう一度」というこの曲には、世界中に勇気を届けられるだけのパワーが秘められている。
■榑林 史章
「山椒は小粒でピリリと辛い」がモットー。大東文化大卒後、ミュージック・リサーチ、THE BEST☆HIT編集を経て音楽ライターに。演歌からジャズ/クラシック、ロック、J-POP、アニソン/ボカロまでオールジャンルに対応し、これまでに5,000本近くのアーティストのインタビューを担当。主な執筆媒体はCDジャーナル、MusicVoice、リアルサウンド、music UP’s、アニメディア、B.L.T. VOICE GIRLS他、広告媒体等。2013年からは7年間、日本工学院ミュージックカレッジで非常勤講師を務めた経験も。