フリッパーズ・ギター『CAMERA TALK』から30年 日本の音楽シーンに影響与えた再構築の手法
実際、あいみょん、松尾レミ(GLIM SPANKY)、PORIN(Awesome City Club)など、“フリッパーズ・ギター好き”を公言しているアーティトは現代も後を絶たない。これらのアーティストに共通しているのは、自らのルーツを形作ってる音楽に対するリスペクトと理解の深さ、そして、それを今の時代とリンクした表現に導くセンスと技術だ。それは音楽性だけではなく、ファッション性やアートワークなどにも自身の価値観、美意識を反映させるという、フリッパーズ・ギターが90年代の初めに示したことだ。
個人的には、いまをときめくOfficial髭男dism、King Gnu、米津玄師などの音楽にも、フリッパーズ・ギターが示した手法の影が感じられる。様々な音楽に対する知識を高めながら、それらを再構築することで、新しいポップミュージックとして提示するーー90年代以降の日本の音楽はそうやって発展してきたのであり、その起点にあるのはまちがいなくフリッパーズ・ギターなのだと思う。
ともあれ、若い時によく聴いていたという40〜50代の人も、名前は知っているけれど、聴いたことがないという若いリスナーも、ぜひ今一度『CAMERA TALK』を聴いてみてほしい。洒脱で洗練されたサウンド、創造性に溢れた歌詞。当時、20代になったばかりの(!)、小沢、小山田の才気から生まれた音楽は、今もまったく新鮮さを失っていない。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。