2024年国内音楽チャート解剖 よりジャンルレスに進化していくシーンの傾向とヒット曲のトレンドを考察
さまざまなヒット曲が生まれ、音楽シーンを賑わせた2024年。今回は各サブスクリプションサービス等での年間邦楽チャートから2024年のヒット曲を改めて振り返りつつ、2025年にどのような楽曲がトレンドとなるのか、予測してみたい。
まず、2024年最大のヒット曲といえば、Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」だろう。同曲はBillboard Japan、Spotify、Apple Music、YouTube、LINE MUSICの年間国内チャートで軒並み1位を獲得。Spotifyでは国内楽曲として史上最速で3億回再生を達成したほか、Billboard Japanが集計する日本の市場以外の国や地域で聴かれている日本の楽曲をランキング化した『Global Japan Songs Excl. Japan』の年間ランキングでも首位に輝いた。
DJ松永の予測不能なトラックとR-指定が繰り広げる圧倒的なラップ、そして呪文のような〈Bling-Bang-Bang, Bling-Bang-Bang, Bling-Bang-BangBorn…〉のリフレインが中毒性を高める本作。ヒットの背景にはそんな楽曲の魅力はもちろん、アニメ『マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編』(TOKYO MXほか)のOPテーマに起用されたことや、TikTok等でのダンス動画の拡散があった。これは、国内外においてアニメとのコラボMVのサビの部分でキャラクターが踊るダンスを真似る者が続出したもので、その勢いは海外にも波及。世界的ヒットに繋がった。国境を越えた楽曲と言えば、前年のYOASOBI「アイドル」も記憶に新しいが、これで2年連続でアニメタイアップの楽曲がチャートを席巻したことになる。また、2022年のBillboard Japanチャートでは、Aimerの「残響散歌」が首位を獲得。各サブスクリプションサービスでも5位前後にランクインしている。Creepy Nutsは、昨年10月にリリースした「オトノケ」も好調。今年も伸びていけば、2025年のランキングに登場する可能性は十分にある。
楽曲のヒットを含め、アーティストとしても大ブレイクを果たしたのがMrs. GREEN APPLEだった。YouTubeを除くいずれのチャートにおいても「ライラック」「ケセラセラ」「青と夏」など複数曲がランクイン。Billboard Japan、LINE MUSICでは年間アーティストランキングで1位、Spotifyでは2年連続で国内で最も聴かれたアーティストとなった。特徴的なのは、先に挙げた楽曲のうち、「ライラック」以外は2024年以前に発表された楽曲であること。4月から怒涛の5カ月連続リリースを行ったこともあって、それに関連したメディアへの露出も多かったことが新規のファンを呼び込み、こういった結果に繋がったのだろう。2025年は彼らのデビュー10周年のアニバーサリーイヤーでもあり、さらなる活躍が期待される。
一方で、ニューカマーの登場にもスポットが当たった。Billboard Japan、Apple Music、YouTubeで2位にランクインした「晩餐歌」は、TikTokを中心に弾き語り動画を発信しているシンガーソングライター・tuki.が自身初のデジタルシングルとして2023年にリリースした楽曲。制作当時15歳だったという彼女だが、年齢を感じさせない楽曲の完成度と歌声に支持が集まり、Billboard Japanでは1年間52週にわたってトップ25位以内を守り続けた。
そんなtuki.とランキングを争ったのが、Omoinotakeの「幾億光年」。ドラマ『Eye Love You』(TBS系)の主題歌に起用されたことをきっかけにヒット。LINE MUSICの月間ランキングでは8カ月にわたりトップ10入りを果たした。ドラマタイアップはヒット曲の定石であり、これをきっかけに国民的バンドに成長したケースも少なくないため、今後の動向も大いに気になるところ。両者とも年末の『第75回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に出場し、躍進の1年を締め括った。