“アジアの真珠” NuNew、日本デビューに大反響 タイが生んだグローバルスター、音楽活動の歩み
アーティストとファンダムの蜜月。それはK-POPの世界でクローズアップされがちだが、ここ数年は他の国でも同じような関係を見る機会が多く、最近は東南アジア、特にタイのポップスシーンに顕著な例が出ている印象がある。なかでも男性シンガーで俳優のNuNew(ヌニュー)は、国内外のファンの熱心な応援を受けて順調にステップアップしてきたスターとして知られており、ワールドワイドな活躍が期待できる逸材ゆえに日本のリスナーも是非チェックしてほしいと思う。
“アジアの真珠”、“国民の息子”と呼ばれる彼は、2001年7月25日、バンコク生まれの23歳。中国語の通訳・翻訳家を目指して勉強していた大学時代に、先輩からの誘いで芸能界へ。俳優デビューにして初主演作となったテレビドラマ『Cutie Pie』(2022年)での演技が評判を呼び、いきなり大きなスポットライトを浴びる存在になった。
天は二物を与えずということわざがあるが、彼の場合は当てはまらない。前述のドラマで見せたナチュラルな演技をはじめ、性格の良さがにじみでたキュートで甘いルックス、さらに楽器の演奏や歌唱でも独自の魅力を発揮してしまうのだから驚きである。
それもそのはず、芸能事務所に所属したばかりの頃は、音楽の道へ進もうとしていたらしく、『Cutie Pie』でドラムに熱中する大学生を演じ、主題歌も担当したのも、こうした彼の得意な部分を加えれば作品の魅力が増すと制作サイドが判断したためだろう。
同ドラマで披露した歌声はかなり注目を集めたらしく、NuNewは2023年7月、待望の歌手デビューを果たす。記念すべき第1弾シングルのタイトルは「Anything」。穏やかなメロディラインと、聴き手を包み込むような温かさを感じさせるボーカルとの相乗効果により、オンリーワンのオーラを放つこの美しいバラードは、たちまち主要ヒットチャートのトップに。当然のごとく、同年のアワードでも数々の賞を手に入れている。
以降もソロ名義のシングルはすべてチャートの1位に輝いているが、特筆すべきは歌手としての急速な成長ぶりだ。2ndシングル「Eh!」(2023年12月)では、爽快感のあるサウンドをバックに美しいファルセットと軽やかなシンギングラップを響かせ、3作目のシングル「Unforgettable」(2024年5月)ではエキゾチックなサウンドへの挑戦と愁いを帯びた歌声で“表現者”の気概を示す。
アーティスティックな面も併せ持つシンガー=NuNewが誕生した背景には、これまでに吸収してきた音楽の幅広さがあるだろう。過去にディズニー映画の主題歌や海外のヒットソング、ZONE「secret base~君がくれたもの~」、藤井 風「死ぬのがいいわ」といったJ-POPの人気曲を数多くカバーしているが、それらを自分のものにしていく過程で身に付けた様々な表現技法が、プロの世界で役に立ったと推測する。